おえミサト

書いた人:しおしお

 

注:この話は「逃げたシンジ」及び「追うアスカ」の外伝に当る話です。先に本作を読まれた方が分かりやすいです。

 

 

 

 私はシンジくんを捜しつづけた。

 もう一つ言うとアスカも捜していた。

 シンジくんは12年前……アスカは8年前私の前から居なくなった。

 そして、ついにたどり着いた……。

 

 広島県呉市にある市原酒店。ここにシンジくんとアスカは居るらしい……。

 

 酒店……。

 酒……。

 

 くっくっくっく……。

 酒だらけなのね。

 周りを見渡せばお酒がいっぱい……じゅるっ。

「シンジくーん。アスカー! 今オネーさんが会いに行くわ〜ん」

 葛城ミサト40代……お姉さんっつーよりもオバ(バキッ)痛い…。

 と、まあ市原酒店に脅威が迫っている事には変わり無いけどね。

 

 

 

 そのころ市原酒店では……。

「ほら、シンイチ。アケミの面倒しっかりみなさいよ」

 アスカが今年5歳になるシンイチに、3歳になる妹のアケミの面倒を見させる。

「は〜い。アケミ、遊びに行くぞ」

「うん」

 シンイチはアケミの手を握って外へ遊びにでた。

 アケミはシンイチと遊ぶ事が多いからなのか将来ブラコンにかかるのだが、それは別の話。

「仲、良いわね……」

 アスカはシンイチとアケミの様子を見てうらやましそうな表情を浮かべる。

「そうだね」

 シンジもそれに習うように二人の子供を見る。

「私達の子供の頃ってさ……。あれだったから、あの子達には幸せでいて欲しいわよね」

「うん…。そうだね」

 ドンッ

「イタッ」

 何かがぶつかる音と共にアケミの叫び声が店内に響く。

 その声に釣られるかのようにアスカは急いでお店の外へ飛び出す。

「アケミ!」

 アスカが飛び出すと、そこには尻餅をついているアケミと、泣きそうになっているアケミをあやしているシンイチの姿が目に入る。

 そして、アケミとぶつかったのであろうもう一人の人物が、アスカの目に入る。

「あ、おかーさん。このオバさんが物凄い勢いでぶつかってきたんだよ」

「え?」

 アスカがシンイチが指差した人物を見ると、そこには紫がかった黒髪をなびかせた中年女性が立っている。

「あの……。急いでいたのか知りませんが子供に向かってぶつかって何も無いのは道理に反してるんじゃないですか?」

 アスカはやんわりと、中年女性に注意をする。

「そうだよ。おばさん」

「お、おば……さん」

 シンイチが中年女性をオバさん呼ばわりした瞬間、中年女性はこめかみを引くつかせながら言葉を繰り返す。

「そんな事良いですから。小さな子供にぶつかって謝らない大人はどうかと思いますよ」

 アスカは少し腹が立ったのか中年女性を睨んだ。

 しかし、アスカは中年女性の顔を見て、ふと何かに気付く。

「あれ……?」

「まさか……。アスカ?」

 そう、その中年女性こそ齢40を越えた葛城ミサトである。

「アンタ誰?」

 感動に打ちひしがれているミサトを余所に、アスカはキョトンとした目でミサトを眺める。

「私よ。ワ・タ・シ! アンタの保護者兼家族兼上司の葛城ミサト!」

「……知らない」

「ウソよ! アタシは覚えているわよ! アンタに言われた言葉も全部!!」

「ああ、偽りの保護者の葛城ミサトね。今更なにしにきたの? 私はもうネルフとは関わりたくないんですけど」

「もう、ワタシはネルフじゃなくて国連の平和関連の仕事をしてるの!」

「ふーん。で、何でここに居るの?」

「広島で平和会議があったから、ここに来たの!」

「ふ〜ん。やっぱり仕事のついでか……ミサトらしいわね」

「ぐっ……」

 アスカにすっぱと言われ、反撃が出来なくなってしまう。

 

 

「それに私はミサトの事、保護者って認めてないんだからね。あ……」

「なに?」

「認めてあげても良いわよ」

「本当にアスカ優しい!」

 アスカの提案に、ミサトは喜びながら受け入れうr。

 ただ、アスカがニヤリとほくそえんだのは見えなかったらしいが……。

「ねえ、このオバさんと母さん知り合いなの?」

 アスカとミサトが話をしているのを見て、シンイチは二人は知り合いだと思いアスカに話しかける。

 アスカは膝を曲げて、目線をシンイチと合わせると微笑みながら話し始める。

「ええ、その昔、私とシンジの保護者だった人よ」

「へえ〜。そうなんだ」

「ええ、だから私達の親も同然なの」

 アスカの『親も同然』発言にミサトは、思いっきり感動する。

 だが、アスカの発言には続きがあった。

「だから、おばあさんって呼んであげてね」

「な!」

 アスカの発言にミサトは、ハンマーで殴られたような衝撃を受けた。

「わかった。こんにちわ、おばあちゃん」

「こんにちわ、おばあちゃん」

 シンイチが挨拶するのに合わせるようにアケミもニコッと微笑みながら挨拶する。

 ミサトはむかついているものの、アケミの純粋な笑顔に耐えられなくなってしまった。

「ああ、止めてそんな綺麗な笑顔で微笑まないで……」

 ミサトはアケミの微笑みから目をそむける。

 とりあえず、アスカはシンイチとアケミを遊びに行かせようと、話しかける。

「じゃあ、このおばあちゃんは私に用事があるから、二人とも遊んできなさい」

「はーい。ばいばい、おばあちゃん」

「じゃあね、おばあちゃん」

 シンイチとアケミの二人は、ミサトに挨拶をして遊びに出かけた。

 ミサトは、ばあさんと呼ばれた事がショックだったのかしゃがんでいじけていた。

 

 

 

「アスカ。どうしたの?」

「あ、シンジ……」

「え? あれがシンジくん?」

 市原酒店の奥から、シンジが声と共に姿を現す。

 ミサトは、シンジが逃げだした12年前のことを思い出す。

 ミサトが想像した以上にシンジは成長し、オドオドしたところが消え、落ち着き払っていた。

「この人……だれ? アスカの知り合い?」

「ちょ、ちょっとシンジくん。私のこと忘れちゃったの?」

「無理よ。もう10年以上会ってないんだから」

 慌てるミサトに対してアスカは落ちついて説明をした。

 シンジは、アスカと親しそうに話している40歳くらいのオバさんは誰なんだろうかと記憶の隅を突ついてみる。

「なんで? 親代わりの私の事、忘れちゃったの?」

「シンジと私の親は市原シンイチさんだけ。だからシンジは忘れちゃったんじゃないの? ほら7年も一緒に居る人の方が数ヶ月一緒に居た人よりねえ……」

「そ、そんなあ……」

 ミサトが泣き出しそうな顔になったとき、ようやくシンジはなにかを思い出した様子であった。

 シンジは左の手のひらを右手拳で叩き、声を上げる。

「ああ!」

「シンジくん。思い出してくれた?」

「保険のオバさん?」

 ミサトは思いっきりずっこけた。

「もう! 思い出してよ! 葛城ミサトよ!」

 ミサトはシンジが思い出すのを待つよりも自分から名乗ったほうが手っ取り早いと踏んだのか、感動の再会を諦めて名前を名乗った。

「葛城さん? えっと……」

 ミサトが名乗ったにも関わらずシンジは再び考え込んでしまった。

 

 

 そして、所要時間30秒を過ぎた頃、ようやく思い出した。

 

 

「ああ、葛城さん。お久し振りですね」

「ははは……。久し振りね……」

 結局シンジは感激するわけでもなく、普通に挨拶をする。

 ミサトは少し悲しくなり始めている。

 それに対し、アスカは冷静に言い放つ。

「やっぱりシンジに感動を求めるのが間違ってるのよ」

「うっさいわね。アスカ」

 

 

「で、何しに来たんですか? もう、ネルフには用事無いですけど」

「ネルフはもう辞めたの。今は国連の職員」

「あ、そうなんですか。で、何の用事ですか?」

「何の用事って、つれないわね〜。家族の私に何の連絡も無いなんて連れないじゃないのよ」

「家族って言っても……。僕にとっての家族はアスカと子供のシンイチとアケミ。そして父さんの市原シンイチだけです」

「そんなあ……。冷たいわよ。ほら……一緒に暮らしたじゃない」

「暮らしたと言っても監視しやすいから暮らしていたんでしょ」

「うっ……」

「それに、アスカのフォローをしなかった」

「ぐっ……」

「僕が人との接し方が判らないとき、何て言ってくれたんでしたっけ?」

「そ、それは……」

 シンジがミサトに対して、憎悪の感情を持つ事は無かった。

 それどころかネルフ時代の事を、忘れ様としたくらいである。

 しかし、アスカがネルフ時代の苦労をシンジに話したために、シンジの中にネルフに対して嫌悪感を見せるようになった。

 

「ねえ、シンジ。そのくらいにしてあげてよ。ミサトだってあの頃は余裕がなかったんだし……ね?」

 シンジに優しく語り掛けるアスカ。

 しかし、全てアスカの発言が元になっているとは、シンジもミサトも知らない。

「そうだね。アスカがそう言うんだったらそれで良いよ」

「ほっ……」

「じゃあ、葛城さん。奥に入ってください。アスカ、お茶を出してあげて」

「判ったわ」

 

「シンちゃん……。ミサトさんって呼んでくれないのね……」

 ミサトはいじけて見せるが、シンジの反応は薄い。

「葛城さんは葛城さんでしょ。それにアスカ以外の女性の名前を呼ぶのは苦手ですから」

「いやん。もう、シンジったらん♪」

 アスカはシンジの言葉にうれしくなり、首に手を回して笑顔を見せる。

「ゴメンね、アスカ。アスカ以外の女性と話して気分悪くなっただろ?」

「あん♪ 私は大丈夫よ。その分、夜になったらいっぱい愛してくれるもん♪」

「昼間もアスカの事、いっぱい愛してるから大丈夫だよ」

「シンジ……」

「アスカ……」

「うう……。そこまで言わなくても……」

 シンジとアスカの甘い世界にミサトは入りこむ隙間を見つける事が出来なかった。

 

 そして、感動の再会なんてまともにあるわけも無く。

 やけになったミサトは売り物の酒を飲みまくり、結局シンジ達に迷惑をかける。

 

 寄る年波に勝てないミサトは少しばかりよろけていた。

 

 

 そして翌日の朝、別れの時。

 お店の前でミサトを見送るために、家族みんなで見送る。

「久し振りに会えて楽しかったわ」

 ミサトは嬉しそうに話すものの、シンジとアスカはそんなに嬉しいという反応を見せない。

 しかし、シンイチとアケミは嬉しそうに叫んだ。

「ばいばい〜い。おばあちゃん!! またね〜」

「ぬが!」

「おばあちゃん。またね〜」

 商店街中に響き渡るような声で、アケミは叫んだ。

 

 

 めでたく、再会を果たしたミサトは40歳を越えても独身のまま、おばあちゃんとなったとさ。

 メデタシ、メデタシ。

 

 

<おしまい>

 

 あとがき

 自分的には楽しんだので、OK(笑)
 あとは、楽しんでいただければ…。


(2001年4月13日『あっくんの書斎』にて公開)
(2011年3月20日:再掲載)

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