「氷葬」
著者 諸田玲子
発行所 文藝春秋社(平成12度初版)
久しぶりに時代小説を読んだ。読むきっかけは、装丁がキレイだったから。
私のポリシーの中では、この‘装丁が気になって読むことを決めた’、これ全然OKだ。
で、最近の作家さんで私の心にぐっとくる時代小説が少いな・・・、と思っていた矢先だったので、
この作品は意外といつまでも私の心に残って呆然とした読後感がある。
「呆然とした」という表現を使ったが、なぜかというと、主人公がのっけから残酷な目に合うから。
武家の女であり、夫に尽くす貞淑な妻であり、幼子を持つ母である。
そんな普通の女性、芙佐が、江戸時代中期実際に起こった「明和事件」に巻き込まれていく。
私も、もちろん平凡な女の一人である。もしも、私が芙佐のような残酷な目にあい、
転落し、180度生活が変わってしまったら・・・。
そう考えると、呆然としてしまうのである。
けれどこの物語の救いは、芙佐の信念。強い心を持って、子供のために敵や自分を導く
正体不明の武士に立ち向かうところだと思う。
ラストあたりは、まるで映画を見ているような壮大な舞台の設定で、静かに静かに盛りあがっていた
物語が一気に最後で破裂し、本当のラストはまた静かなさざ波のように引いていく。
そういう感じの、よく練られた作品だと思う。
品のある、けれどエンターテイメントも忘れていない時代小説を読みたい方には、
とってもオススメの1冊です。
2002.9.20 (C)kotoko