投稿大好き♪(新聞雑誌投稿掲載雑文集)

女の気持ち
「ごめんね」


昼食を終え、こたつでボンヤリしているうちにウトウトしてしまった。外は大雪で風も強く大荒れの天気。小学校1年の二男が雪まみれでビショビショになって帰ってきた。
学校から家まで片道45分の道のりを必死の思いで帰ってきたようだった。

部屋に入るやいなや、二男は私の方をにらみつけて泣き出した。メソメソと、ジメジメと。
自分が大変な思いをして厳寒の中を帰ってきたというのに、こたつでノンビリしている母の姿を見て、情けなく、腹立たしくなったのだろう

泣きじゃくるばかりで、何もしゃべらなかったが、私にはわかった。
母が迎えに来なかったことを悲しんでいるのに違いないのだ。お迎えという、単なるその行為よりも、自分のことを心配して来てくれたというその気持ちがうれしかった。そういう記憶が私にもある。なら、迎えに行ってやればよいものを。うかつだった眠ってしまった。

いや多少の雪や風にもへこられず、自分の力で帰って来るのは当たり前。そんなことで母をうらんでどうする、とも思ったが自己弁護のような気がして黙っていた。

二男は泣きながらこたつにもぐりこみ、そのまま眠ってしまった。

あれから二日たった。二男も私も、もうその話題にはふれようとしない。


2001 3

スリスリ
二男は甘えん坊。いつのまにか私のところに擦り寄ってきて、ほっぺたをスリスリします。
私が「いつまでスリスリしてくれるのかなあ?」と呟いらた「おじいさんになるまで」と二男。「その時はたぶんお母さんはお墓の中かなあ」と少ししんみりして言うと、しばらく考えてからにっこり笑って「大丈夫その時はお母さんのお墓にスリスリしに行くから」と言いました。
その光景を思い浮かべてしまい、おかしさ、うれしさ、切なさが見事にブレンドされた絶妙な心持ちになりました。

2000 7 16

お家へ帰ろう


ふと気がつくと、フロントガラスにへばりついているカエルを見つけた。
家の庭にいたカエルがうっかりくっついてきてしまったらしい。

かなり遠くまで来ていた。このままこんな所に放り出されると、このカエルはもう二度と生まれ育って慣れ親しんだ所には帰れないのだ。
うかつにもフロントガラスでぼんやりしていたカエルのせいだとはいえ、なんだか妙に切なくなった。
できることなら、このまま家に連れてかえってやりたいと思った。
そこにじっとしているんだよ。動かずにしっかりへばりついているんだよ。

やけに必死で、今来た道を惹き返し、家に向かってハンドルを握りしめている自分がいた。すごくけったいなことをしているのかもしれない、と思いながら、私は、ただただカエルといっしょに「お家へ帰ろう」としていた。
1999 9 21

女の気持ち
「ああ増やしたくない」

通りを歩いていたはずの足が突然止まり、ある看板の文字に目が釘づけになった。 「しみとり専門」 私の目にはその文字が輝いて見えたのだ。 どんな顔をして見ていたのだろうか? 「ハッ」と我にかえりバツの悪い思いをした。 その店は、しみとり専門のクリーニング屋さんだった。 こともあろうに私は「しみとり」の文字を見ただけで 「顔のしみとり」を連想したのだった。 それだけでなく、瞬間的にその店から出てきた 「顔にシミひとつない明るくクリアな素肌を取り戻した自分」 をイメージしてしまっていたのだ。 このごろシミとかシワがとても気になるようになった。 そんな自分がとても悲しく哀れに感じる。 歳をとってゆくごとになんともいえない「やりきれなさ」が重なるのだ。 老いてゆく自分を、どこかでものすごく拒絶するもう一人の自分がいるんだ。 自然の流れに従ってじょじょに老いてゆくありのままの姿を 認めたくない自分がいるんだ、と思う。 「なんてちっぽけで、偏狭で、哀れなヤツなんだろう」と自分自信がはがゆくも なさけなくもあるがどうしようもない。 でも、こんな私と同じような人がこの世にはたくさんいるのかもしれない、と、 「しわのばシート」のCMを見ながらふっと、思ったりもしている。
1998 11


「綱引き」

 幼稚園の運動会で、父兄参加の競技「綱引き」に出場した。 綱引きなんて久しぶり、小学校以来のことだった。 「パーン」とピストルが鳴り、綱引きが始まった。 両方から引っ張って、中央の赤いリボンが自分の陣地に入った方が勝ちとなる。 ぐぐっと強い力でもって行かれそうになるのを「負けるもんか」と こめかみの血管が切れそうになるほど歯をくいしばって必死に耐える。  相手が一瞬力をゆるめたすきに、それっとばかりい一気に引っ張る。 ひとりひとりのそういう心意気が勝利を導くのだと信じて。 予選を勝ちぬいて、いよいよ決勝まで進むことができた。なんか闘志のようなものがわいてきた。 こんな気持ちも久しぶりだった。  一回戦の時は、面識のなかった「誰かのお母さん」も決勝戦になると、しっかり共に闘う同志となっていた。  決勝戦開始。一心不乱。無我夢中でツナを引っ張った。  その結果見事優勝。  勝った瞬間、歓声を上げて思わず同志と抱き合って喜んだ。 「やった!やった!」「すごい!」「すごい!」 はた目には、オ―バーすぎてうつったかもしれないが、飛びあがってバンザイまで やってのけてしまった。 ふと冷めて我に返った時少し恥ずかしかった。 でも綱引きって楽しい。参加してよかった。



1997 10 10