ノンフィクション


 嫌われものほど美しい

ナタリー・アンジェ/草思社 

最近面白い本に巡り会わないので、ちょっと古いけど。('98発行)
タイトルの通り、一般に嫌われている動物(ゴキブリや蛇、サソリなど)を中心にして、生物達の意外性に富んだ生活を紹介している生物エッセイです。
性(ジェンダー)と性ホルモンの関係や、パラサイト(寄生虫)と進化の関係など、ミクロからマクロまで網羅した視点の広さには驚かされます。まぁ、こんな堅苦しい事言わなくても、純粋に面白いんだけどね(笑)
ゴキブリは実は愛情深いとか、一夫一婦制と思われてた鳥の1部は実は不倫しまくりだとか、レイプまがいの事を平気で行なうイルカとか、TVや雑誌で植え付けられたセンチメンタルなイメージしか持ってない方には本気でオススメ(笑)
確かに生物の営みは見ていて美しいし、癒されるものもあるけれど、それは決してショウウィンドウに飾られるようなものではないという事を思い出させてくれます。
後半にちょっと専門用語が多く出てくるので、ちょっと理解しづらいかもしれませんが、流れで読めるので気にならないです。この方の例えや比喩は分かりやすく、最高に面白いです。思わずにやっとすること請け合い(笑)

 火星の人類学者

オリヴァ−・サックス/早川書房 

ハヤカワ文庫。副題が「脳神経科医と7人の奇妙な患者」で、その通り脳神経科医である著者と、その患者達の症例の話です。ちなみにこの人、「レナードの朝」の原作者だそうです。あとがき読むまで知らんかった(笑)
内容は、脳神経科医である著者が出会った、自分の患者や紹介された興味深い症例の患者さん達のコトを症例ごとに7つのセンテンスに区切って紹介し、自分の見解を述べています。必ずしも患者側に立った見解ではないのですが、やわらかい句調で、大衆向けに分かりやすく書かれてます。
かなりショッキングな病状の方もいらっしゃるので(一般的には判らん。ただ、わし的にかなりショックを受けた)万人に絶対オススメ!とゆー本ではないのだが…。まあ、わしの薦める本はなべて万人向けではないのだろうからいいのか。と勝手に納得。
読んでみるとわかるんだけど、結構(そっちでは)有名な患者さんばかりなので、誰かしら必ず「ああ、あのひと」っていう患者さんのコトが出て来ます。
一番の有名人は「自閉症だった私」の作者のテンプル・グランディンさんですかね。彼女の話を読むと、多かれ少なかれ、かなりの割合いで自閉症と診断されないだけで、自閉症気味の人っているんだろうなあ〜と思う。かくいう自分もその一人だったりする。今はともかく、小さい頃そういう傾向があったなあ、と。こういう本を読みあさると「異常」と「正常」のボーダーラインは本気で曖昧なんだとしみじみ思えます。「程度」の問題なんだとね。

 肥満とダイエットの遺伝学

蒲原聖可/朝日新聞社 

別にわしが太りだしたとか、ダイエットを心掛けているとか、そーゆー訳ではありません。死ぬぞ、わしがそんな事したら(笑) 以前に科学雑誌で肥満遺伝子の特集をしていたのを読んだらば、なかなか興味深い内容だったので、関連書籍を買ってみた訳だ。それによると、アメリカの肥満率はまじでシャレにならないのだが、遺伝的には日本人のほうが肥満になりやすい体質なんだってさ。でも、基本的に肥満っつーのは遺伝3割、生活習慣7割くらいらしいんで、痩せ薬を作る事は理論的には可能だけども、あんまりアテにせんといてーな〜。とゆーコトだった。やはりな。
つまり、遺伝病で肥満になってしまったヒトは(理論上は)治せるけど、ダイエッターには効きづらいよ(多少は落とせる可能性はある)。という訳。
結構読みやすいので、ダイエッターの方はこういう方面からアプローチをかけてみるのもよろしいかと…(だってさー、女性誌のダイエット特集なんて、栄養士推薦!なんて書いてあっても、ロクなもん載ってないぜー。そりゃ…?ってのばっかり)。

 台湾論

小林よしのり/小学館 

漫画なんだけど、やっぱりココでしょ。「ゴーマニズム宣言」はとりあえず読んでました。別にファンでもなかったけど、結構面白い論客だなあー、という感じで。そんで、幻冬社の「戦争論」読んで。小林よしのりの見方が大分変わりましたね。たしかにプロパガンダ的な言動ですけど、かーなーり勉強になります。なりました。世界史の歯切れの悪さも納得できましたし。しかし、よしりんの言動にいちいち右往左往するのもどうかと思いますけど。某方々。彼の言質は教科書を読むように暗記するものではなく、自己を顧みるとっかかりを与えるものだとわしは思っています。描かれているものを鵜呑みにするのではなく(さらに揚げ足を取るような情けない事じゃなく)、そこで疑問に思った事はテメ−で調べる!みたいな。…んで、今回の「台湾論」。発売元は違いますが、位置的には「戦争論」の続編…とゆーか閑話休題的続編だと思います。
んで、何が言いたいのかとゆーと。
…皆いっぺんでいいからこの2冊は目を通せ!!
とゆーことです。

 キャッツ・マインド

B・フォーグル/八坂書房

副題が『猫の心と体の神秘を探る』。フォーグル博士は世界的に有名なカナダの獣医師さんです。猫や犬に関する本というのは山のように出てますが(なんでインコやオウムのは少ないんだ〜)、どの本もなべて愛好者に向けた『愛らしさ』を強調したものが多くて(この手の書籍は科学的とうたっていても、結局著者の自己満足に終始している書籍が多い)辟易していたのですが、これはそんなダメ本とは一線を画した作りになっています。フォーグル博士も猫や犬やオウムを飼っているので、比較対象として彼のペットたちも出て来ますが、むしろ微笑ましいくらい。内容は、いままで動物学者たちが避けるようにしていた"動物達に感情はあるのか"という疑問から始まり(動物を飼っている人たちには自明の理としたいところですが、科学的な裏づけがない以上いまだ未解明とされています)、猫の精神構造、本能と感情を生理学的、解剖学的に検証していきます。そんなコムズカシイ本嫌だわーという方には『ネコのカウンセリング』『猫の救急マニュアル』(犬のシリーズもあります)がおすすめ。犬好きでこういうコムズカシイ本のほうが良いという方は『ドッグズ・マインド』があります(すべて同社、同著です)。

 蟲実話(特集アスペクト48)

アスペクト

寄生虫の本です。コピーが『寄生虫、害虫との正しいつきあい方』で、そのまんまです(笑)なんたってアスペクトのムックですから、装丁がむちゃむちゃアングラちっくです。中身はちゃんと寄生虫学の第一人者にインタビューしてたりしますが…。寄生虫学大好き人間なわしは、この手の本(藤田紘一郎先生や亀井了先生の著作)は読み漁ったのですが、入門書としてはこれが一番説明的で親切な造りだと思います。ライターが寄生虫初心者のおかげではないかと。後半は害虫(ダニやゴキブリ、殺虫剤など)についてに話が移行しますが、やはりメインは寄生虫(笑)気持ち悪くてダメとゆーヒトも(できれば)読んでほしい1冊です。海外旅行やゲテモノ喰い、有機農法が流行りの日本だからこそ、皆に読んでもらいたいと思います。啓蒙書とまではいきませんが、知っておいて損はありません。むしろ得のほうが大きいぞ。いたずらに騒がれても困るが(笑)

 女の由来

エレイン・モーガン/どうぶつ社

これは文字通り、目からウロコが落ちましたね。みなさんも不思議に思ったことありませんか?人類の起源を習った時に、なんで人には動物のような体毛が無いのかって。学校の先生は二足歩行になって、森林からサバンナへ移行したと言ってます。では、なんで同じようにサバンナへ出ていった動物たちには体毛があって、ヒトにはないのだろう。もしかしたらサバンナへは出ていってないのかもって。実際に人類の直接の先祖の化石は未だどこからも出土していません("ミッシング・リンクー失われた環"と言われていますね)。そんな疑問に対するひとつの答えがこの本には書いてあります。いわゆる人類海上進化理論なのですが、いままでのどんな書物よりも、私のなかではしっくりくる理屈です。タイトル通り、(進化していく)女性の視点でみた書物なので、男性諸君には反感を覚える作りになっていると思いますが(著者も自分はフェミニストだと言ってはばかりませんし^^;)、そんな目をひとまず脇に置いて、純粋に科学の目で見てもらえば納得してもらえると思います。ひさびさに、わたしを唸らせてくれた書籍です。続編の『子宮の中のエイリアン』もオススメ!

 「人殺し」の心理学

D・グロズマン/原書房

タイトルどおり、人が人を殺すまでの心理的経緯をかなり科学的詳細に綴っています。アメリカの民族的、社会的背景もおりまぜつつ語られていきます。悪夢のベトナムに傾いた作りになっているので、流行りの犯罪心理学の本とはおもむきが少々異なりますが、その突端を掴むにはやぶさかでないと思います。図解が分かりやすく、この手の本が好きな人にはオススメ。

 奪われし未来

T・コルボーン他/翔泳社

御存じ、性化学ホルモンについて大反響を及ぼし、現在に警鐘を鳴らした第ニの"沈黙の春"本です。今流行の"ダイオキシン"に関する書物の中でかなり込み入った部分まで掘り下げつつ、かつ分かりやすく書かれているという点で、この本をランク入りさせました。そういう意味で、第ニの"沈黙の春"という評価は正しいとおもいます。そろそろ文庫が出るんじゃないかな?


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