<古き良き床屋>

はっと一息へ とっぷへ

その床屋は、おじいちゃん一人で経営されていた。
小学生の私のいきつけであった。
「ぼうや、どれくらいまで切る?」
「う〜んとね。ちょっと」
とかいってもこのおじいちゃんは、そういう調整は
できないのは知っていた。いつも同じ髪型、同じ長さに
なるのだ。
一人しかいないためお店が混みはじめると、心なしか
いつもは30分のカット時間が15分くらいに短縮されるのは
子供の目からみても明らかであった。
こういう時普段は饒舌なおじいちゃんが黙々と切りはじめて
いるのは、なんか私は好きだった。やっつけ仕事をここまで
律義にやってもいいかあ、と新鮮な気にもなったし(笑

こんなおじいちゃんの床屋であるが、私が、毎回楽しみにして
いたのはカットが終わって頭を洗う時イスを回転させるのだが、
普通の床屋だと半回転で終わるところを、このおじいちゃんは
力いっぱい何周もまわしてくれるのだ。実に意味の無し行動な
のだが(^^;
「今日は、何回まわしてくれるのかな」(どきどき)
「やったー今日は4回も回してもらちゃった。」とか
嬉しかった記憶があります。

今思うとなんでこれが楽しみだったのか良く分からない。
大人になるとわからなくなることって他にもあるよね?