『もう、ミラーワールドは必要無いんだ。』
見覚えのあろうコートを着た若い男が、身なりを整えたスーツ姿の男に話す。
『そんな筈があるか!あの世界は・・・俺達が作った・・・』
『黙れ!お前にはもう用は無い!このカードで全ての時を戻す!記憶も消し去る!』
二人は言い争っていた。一人の男の手には一枚のカード。
そしてもう一人は顔に汗を浮かべて怒鳴っていた。
『俺は断じて反対だ!・・・そうか。お前、妹の為とか言ってたなぁ・・・。
でも俺には全然関係無いんだ!いいか!お前の妹よりもこの研きゅ・・・』
ドガッ!
コートの男が殴りかかった。今にも殺しそうな様子だ。
『くっそ!暴力か。俺に位負けしてるな!お前。』
『何だと?』
『いいよ。タイムベントだか何だか知らないが勝手にやれ。 ・・・・・・・変身。』
カシャ・・・・・
≪ タイムベント ≫
第一話 事件と鏡と異世界と
ある街外れにボロボロになったアパートがある。
その3階が “ 真島探偵事務所 ” 。創業8年目の今も尚、商売繁盛を知らない。
『あ〜わかんねぇ!!!』
探偵事務所の責任者、真島が髪をクシャクシャにして叫んでいる。
その横でコーヒーをコトコトと音を鳴らして入れている、若い青年が真島に問いかけた。
『また変な事件でも任せられたんすか?いい加減一つぐらい解決したら・・・』
『う・・・うるせぇ!じゃァお前解決してみろ。できるのか?あ?』
青年の名前は仲島 猛。この探偵事務所で働いている22歳の見習い探偵だ。
そんな仲島には不満が積っていた。自分にも事件を任せて欲しいという願望が叶えられない事だ。
なので真島が『解決してみろ』と言った時は目が光って資料に喰いついた。
『行方不明になった男性は普通のサラリーマン。某ショッピングセンターのトイレに入った後、
身元が判らなくなった。しかしトイレの入り口には入った姿しか撮られていない。』
猛は事件の一部始終をまとめ口ずさんだ。そこに真島が話しかけた。
『考えたって判りゃしないぜ。新米よ。どう見たって犯人は尋常じゃねぇ。トイレに窓も無いんだろ?』
『・・・・・・・・よし。俺、現場に行って来ますわ。 じゃ!』
『お・・・・おい!』
真島の止めも聞かずドアを開けっぱなしにしながら、猛は駆け出していった。
『・・・・何だアイツ!?ヤル気満々じゃねぇか。』
猛は嬉しそうな顔でバイクにまたがる。自分の愛車を連れて事件を解決しに行くの事は初めてだ。
意気揚々と猛は町をバイクで駆け巡った。目的地の現場は7km先なので結構な時間がかかる。
急ぐ必要は無いはずだが、気持ちはかなり焦っていた。
〔 早く・・・早く現場に行きたい! 〕
しかし運悪く渋滞に巻き込まれる。探偵事務所から出て行って十分も経っていなかった。
『んだよ・・・・・!イキナリかよ。何かあったのか・・・?』
道の端っこの方で警備員らしき男が数人、車などを誘導していた。猛は男に尋ねる。
『何かあるんすか?今日。』
『いやね。そこの公園で売れっ子タレントのイベントか何かがあるらしいんだ。
売れているんだったらもっと交通設備のいい所でしろと思うけどね。坂下 丈二だっけ。』
警備員は親切に答えた。猛は礼を言った後、エンジンをうならし、車の間を駆け抜けていった。
『坂下 丈二か・・・!滅多に見れないけど今は解決の二文字しか無いんだよ!』
ブルルルル・・・・・・・・・・ン!!
―――――東北高校
『先生・・・!ここ分からないんです!教えてくださ〜い!先生! 先生! 』
女子生徒たちの群れからある男が出てくる。彼の名前は日向 隼人。理科担当の教師だ。
『すまん!今日は勘弁してくれ!先生急いでるんだ。今度たっぷり教えてやる。な?』
女子生徒から逃げるように駆け出した隼人。エレベーターに隠れ、生徒達から身を潜めた。
『ふゥ〜。いい加減生徒と教師の関係ぐらい判ってくれよな。子猫ちゃんたち。
俺にも教師以外の仕事ってもんがあるんだよ。』
そう言いながら、隼人は鏡の前に仁王立ちした。
鏡から銀色に輝いたベルトが飛び出して隼人の腰に装着される。
隼人は黒いカードデッキを鏡に向けた後、ベルトにデッキをセットし、叫んだ。
『・・・・・変身!』
キィィィィィィィィンッ!!
光が飛び散った。鏡の前に立つのは隼人のもう一つの姿、「仮面ライダーガメル」だ。
『じゃ・・・・行くとしますか。』
隼人は鏡に飛び込んだ。すると、不思議な事に鏡の中へと吸い込まれていった。
―――――某ショッピングセンター
そのころ猛は、例の事件が会ったトイレに来ていた。
『・・・・・・・・ここであの事件があったのか。 絶対に解決してやる!』
キィィィィィィィィンッ!!
『!?』
トイレにある鏡から奇妙な音が鳴り出した。猛は鏡に近づく。
『・・・・・なんだ。この音。』
ふいに鏡を触った瞬間、中から怪物が飛び出してきた。怪物は猛を連れて鏡の中に戻る。
『うゥわァ!!!やめ!やめろォ!!!!!』
猛は必死に抵抗した。そこにある男が怪物に向かって飛び蹴りをして来た。
『フン!!』
怪物は遠くへと吹っ飛ばされた。猛を助けた男が言う。
『大丈夫か!?運の悪い男だ!名前は・・・!?』
『・・・・な・・・・仲島 猛。』
猛はしりもちをつきながら荒い息で男に答えた。
『そうか。俺は日向 隼人だ!事情は後で説明する。猛クン!隠れていろ!』
『ギ・・・・・ギギ・・・・・ギ』
立ち上がり、猛と隼人の元に来た怪人を向かえ打つ様に隼人は走り出す。
『オネンネしろォ!怪物め!』
隼人は叫び、ベルトのデッキから一枚のカードを取り出し、拳につけた
サポーターの様なものにそのカードを入れ込んだ。
≪ ストライクベント ≫
『うおりゃァ!!!!!』
隼人は叫びながら怪物に拳をねじり込む様にパンチする。
ドガァァァンッ!!
怪物は隼人の攻撃を受けてすごい音を立てて爆発した。もちろん怪物は粉々になって死んでいる。
『・・・・・猛クン!居るかい?』
隼人は爆発の中、傷つく事なく猛の元に歩いてきた。
『あ・・・・ここに居ます。』
猛は汗をかきながら隼人に返事した。隼人にあからさまに信頼をおいている様だ。
猛は今居る場所が急に気になって辺りを見回した。
『キョロキョロしたって何も分からないと思うよ。猛クン。ここは異世界なんだから。』
『異世界・・・・?』
『そう。話したらややこしくなるけどね。ここはミラーワールドって言って鏡の世界なんだ。
君もミラーモンスターに連れられて鏡の外から入って来ただろう?で、俺はライダーって言って・・・』
猛と隼人の間にある男が話しを割るように来た。男は隼人の方を向き話す。
『・・・一般の人間にこの世界の事を語るな。仮面ライダーガメル。・・・・しかし猛と言ったね。
君もライダーになるんだったら話は別だ。まだデッキは余っている。どうだ。なって見るかね?』
『ライダー・・・・それはなった方がいいんですか?は、隼人さん。隼人さんもライダーですよね・・・・?』
猛は男の話を聞き、隼人に問いかけた。
『う〜ん。いいって言うか、その人次第だよ。ライダーになって闘えば夢を叶えてくれるらしいんだ。
でも夢が無かったら別にならなくてもいいんじゃない?』
隼人は猛の質問に答えた。猛は言う。
『・・・夢。』
後から来た男もまた猛に言った。
『もし夢が無くってもライダーになればモンスターの犠牲者を守る事もできる。
君は正義感がある顔をしてる。僕にはわかる。ライダーになれば君は人を守り抜くだろう。』
『人を・・・・・守る・・・・・・・・・。』
猛の脳裏に過去の記憶が走馬灯の様に駆け巡った。
((((( 猛!!!逃げて!早く! )))))
((((( お母さん!!!!お父さん!お姉ちゃん! )))))
((((( 逃げろ!生きるんだ!早く!早く! )))))
猛は歯を食い縛って答えた。
『鏡の世界とか、怪物とかライダーとか・・・訳分からないけど俺は人を守る!』
『ック・・・・分かりました。どうぞ。これがライダーになる為のデッキです。
これから奇妙な音が鳴ったら、鏡の前で現れたベルトにそのデッキを入れてください。
そうすると変身して人を襲おうとした怪物を倒す事が出来ますよ。』
男はにやけた顔をして猛にカードデッキを渡した。
そのデッキは仮面ライダー狼牙になる為のものだった。
デッキを渡し終わると男は何処かに行った。隼人は猛のデッキを見つめながら言った。
『猛クン・・・・そろそろ。怪物が来るよ。覚悟は出来てる?』
『・・・・ハイ!』
キィィィィィィィィンッ!!
猛が潔く答えた直後に怪物が現れた。猛はベルトにデッキを入れた。
『・・・・・変身!』
光が猛を包んだ。
そして、猛は仮面ライダー狼牙へと変身を遂げた。
―――――― 続く