第一章、絵本とその月の特徴
一、誕生から二ヶ月まで−母と子のつながり−
まだ物が見えない、聴覚も未発達である新生児に、どうして絵本のことが問題にされるのでしょうか。疑問を持たれる方も多いことでしょう。
この時期は<排泄><食欲><睡眠>などの基本的な生理的欲求が単に満たされるだけでなく、自己コントロールできるような生活のリズムを早く獲得できるように導いてやること、物音一つにしても不安な気持ちでいる赤ちゃんに環境を整えてやることが大切でしょう。その過程の中で、これから人間として成長していく上での必要な、印象・感情・感覚などが母親のやさしい行為を通して育てられていきます。ですから、母と子の触れ合いや伝え合いが大事にされなければなりません。このことが、絵本を取り上げる上で重要な意味を持ってきます。決して、絵本そのものを直接に与えることではないのです。
一方、<泣く>という活動も大切にしたいものです。なぜなら泣くということは新生児にとっては唯一の自己主張であり、欲求の表現であるからです。その時に母親が、どうその子と接するかによって子どもは、一つ一つのことに意味づけをしていきます。いずれは言葉の獲得へとつながっていくでしょう。
長女(典子)の場合には、お乳が欲しい時は全身を震わせるようにして泣くこと、お乳を飲む時は目を見開いて一生懸命「すう」(『生きることだ』)という意味づけに努めました。欲求が満たされたあとは、ゆっくりとした気分にひたらせ、休養としての眠りに入っていけるように気を配りました。オムツ一つ取り替えるにしても、常に典子に声をかけてあげました。ここで留意すべきことは、あたり前のことですが声をかけるだけでなく、オムツを取り替えたあとの、そう快さを感じさせるようにすることも大切です。
お乳も自分の適量がわかるまで飲ませました。これ以上飲むのは苦しい、嫌だという限界まで飲ませ、少しでは次ぎの授乳までお腹がすいてたまらないということを体で覚えさせます。空腹感や満足感も学ぶことによって身につくのだと言えます。
これらのことは、はじめての子を持つ母親にとっては「こんなに飲ませていいのかしら」「こんなに泣かせていいのかしら」と悩ませるものでした。厳しい母と子の闘いのようにさえ感じられました。オムツの交換、授乳、眠りが一日のほとんどという生活の中にも母親の働きかけを通して、母と子の通じ合う関係が日び深まっていきました。
二ヶ月になると条件さえ整えば必要以上に泣かなくなると同時に、甘えた泣き方を覚えてきます。大きな変化は、あやすと「ア、ア(
41日目)」とこたえ、話しかけると「アーアー」と声を出して応答することです。機嫌よく声を立てて笑ったり、目を細めたりするなど、一つ一つの表情にも以前とは違った変化が見られるようになってきました。朝、目覚めても、自分の握りこぶしを眺めて笑ったり、じっと見つめたり、起き上がり人形をたたいて遊んだりしています。握った手を開いたり閉じたりもしています。泣き方も、怒ったような激しさと、甘ったれた泣き方と、場に応じたものに変化してきました。そんな時私は、歌ったものです。窓の側で抱っこしながら、
「風さん 風さん どこいくの
典ちゃんの ほっぺを なでていく
風さん 風さん どこいくの
典ちゃんの まつげを なでていく」
哀しそうな顔をする時は、
「典ちゃんは なぜ
夕方になると 哀しくなるの
お日さまが沈み 暗くなるから
でも みんな 哀しいのよ
典ちゃん
暗くなっても 星や月が でるのよ
安心してね ねむりなさい
夜は たのしい夢があるのよ
また お日様が でるまで
あすの 夢を見てごらん
典ちゃん そんな 哀しいお顔をしないで
おやすみなさい」
と、語りかけるように歌にしたものです。

