出来たての絵本(まほらば)
「もう少し、もう少しだ!」
喜んでいる白鳥君。ただいまPM11:30
「ん〜」と疲れた声を上げる。
(そういえば、また差し入れしてくれるんだよな〜大家さん。あの状況にならなければいいんだけどな〜)〔まほらばの第1話2話を見よう。〕
今は絵本の制作中。
題名は「しっぱい」。
内容は、「じぶんのしっぱいだとみとめようとしないおとこのこが、ゆめのなかで、あたらしいじぶんになるたびをしている。」と言うことだ。
「もう少しで出来るから、がんばるか。」といって、また制作をはじめた白鳥君。
1時間30後。
「で…きた。できたぁ!!!!!!!!!!!」
鳴滝荘中に響き渡る声。誰もが驚き、目を覚ます。
どたどたどた。大きな足音が1人分聞こえる。
「うるせー!!!!!!!!」
その声に、おそるおそる後ろを向いた、白鳥君。
「うっ!!」
白鳥君が見たのは、人格の変わった、大家さんだった。
人格は、あのやくざのようで、ものすごく、強いという人格に変身。
「ご、ご、ごめんなさ〜い!!」泣きかけの白鳥君。
「一気に目が覚めちまったじゃねーか。あ、なんだ、こりゃ?」
といいながら、たった今できた、絵本を持ち、読み始めた。
「はんっ!」
大家さんは、鼻で笑った。そして!!出来たての絵本を、文字が見えないぐらいにまで、破ってしまった。
「!!!や、やめてくれー!!!!!!!!」
白鳥君は叫んだ。しかしそれは遅く、完全に破られてしまった。
(あの、私、応援してますから。)
(また、絵を見せて下さいね。)
白鳥君の目から、涙がこぼれおちた。
「どうして…ど…うし…て…どうしてだよー!!!!!!!!!!!!!!!!!」
泣きながら、人格の変わった大家さんに訴える。
「どうしてくれるんだ!!」
その一言で、はっ!!と目を覚まし、元に戻った大家さん。
「??どうしたんですか?白鳥さん?」
「えっ?元に戻った…」
小さくきざまれた紙をとって、少しづつ読んでいく、大家さん。
「絵本……」
大家さんは、ふしぎそうな顔で、白鳥君を見る。
「書き終わったんじゃ、ないんですか?どうして、破ってあるんです?」
「へ?」
驚いた表情のふたり。心の底では、(これは…いったい…)と思っている。
「元に…戻ったんだ…。桃野さん。いるんですよね。そこに。」
桃野が現れた。
「ありゃ。ばれた?」
ばれないようにと思ってこっそり、最初(PM11:30)から見ていたのである。
「すべてを証言して下さい、桃野さん。」
「うん」こくりとうなずく桃野さん。
「大家さん聞いて。PM11:30の事よ。あなたは、うっかりしていて自分の寝床で、ぐっすり。本当なら、差し入れをいれてる時間よね。
その時、白鳥君の絵本はもう少しで完成しそうだったの。ここまでは、わかるわよね。」
「はい。」
「その1時間30分後。白鳥君が思いっきり…『できたーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!』と叫んだのよ。
次の瞬間、どたどたどた。誰かの足音が聞こえたから、あたしは、とっさにかくれたわ。やってきたのは大家さん。」
「まさ…か…」
「そう。やってきたのは、人格の変わった…大家さんあなただったわ。」
「!!!!!!」
「そしてあなたは、白鳥君の作った絵本を手に取って読んだ。そして、『はん』と荒い息をし、絵本を破いた。」
あまりの事に、失神してしまった大家さん。ふたりが驚く。
「大家さん。しっかり、大家さん!!!」
「白鳥君しっかりして。大家さんは気絶しただけよ。とにかく、部屋に運ばなきゃ。」
「管理人室」まで行き、ベッドに大家さんを運んだ、白鳥君と桃野さん。
「僕…部屋に戻るよ…」
突然の事に驚く桃野さん
「どうして?」
と聞く桃野さん。
「この部屋にいたら、大家さんを悲しませるだけだよ。だから…」
「だからって、出て行くことまではしないでよ。」
「!!」
「なぜわかるって顔してるわね。…だって白鳥君は、そういう人だもの。」
「もう、止めたって無駄なんだ。僕…自分の家に戻るよ。」
「白鳥さん…」
「えっ?」
驚く白鳥君。
「帰っちゃ駄目です。私…恩返し…しなくちゃいけないのに、何もしてないです…。だから…」
涙ぐんでくる白鳥君の目。
(ありがとう…)声にならないメッセージでも、大家さんには、きっちり届いている。
「わたし、お手伝い…しますよ。白鳥さん。」
「じゃあ…もう一度、作り直すよ…僕。」
(大家さんが、僕を励ましてくれる、大家さんの期待に、ちゃんとこたえなきゃ。)
THE END
桃野談 作っても作っても、いつも壊されて、出版できないらしい。