「アマゾン大漂流記」

第一章「旅立ちの日」

2001年は私達にとって激動の年だった。


コンサート、TV番組、CM出演、ミュージカル、映画など、
それこそ一日の休みもとれないくらいのいそがしさだった。

そんな私達にとって、ある日驚くべき一大ニュースが届けられた。

新曲のダンスレッスンの後に私達13人は全員控え室に集められた。
そこで、つんく♂さんから驚きの話を聞かされた。なんと、アメリカの有名
アーティスト達が、私達「モーニング娘。」の曲をカバーしてくれる事になったのだ。

かくして、発売された「カバーモーニング娘。」プロデューサーのつんく♂共々、
私達は不安をかかえていた。

果たして、自分達の歌ってきた曲がアメリカの人達に受け入れられるのか・・・。

しかし、フタを開けてみると・・・・、

売上ランキング第9位!!!
初回売上枚数50万枚を超える大ヒット!!!!
これは、日本からアメリカへ進出したアーティストの中では異例の数字であった。

よろこびに浸る私達に一週間後さらなる驚きのニュースが届けられた。
アメリカでのCDの売上に対し、某テレビ局が「モーニング娘。」のPVをテレビで
放映した所、数々の視聴者から生の「モーニング娘。」を見たいという手紙がテレビ
局に殺到したのである。
そうした事で、某テレビ局からつんく♂に宛てに、

 「ぜひ「モーニング娘。」のライブを我が国で行いたい。」

という、依頼がきたのである。
事の次第を聞いた「娘。」達はそれぞれに喜びと驚きの声をあげていた。

 「マジでーーー!! 超すごくなーーーい!!!」

矢口が一際高い声を上げる。
その横では、辻と加護がはしゃいでいた。

 「アーーーヤーーーウォ〜〜〜〜!!!!」

常に冷静な後藤と、カメラの無い所ではおとなしい吉澤。

 「ほ〜〜海外ライブだってさ。凄いね。」
 「うん。」

チャーミー石川とオバチャン保田。

 「わ〜〜〜海外ライブですって保田さん!!!」
 「いや〜〜ついに私達もここまで来たか〜って感じだよねぇ〜。」

二人の道産子娘。

 「はーーアメリカかぁ〜〜。どうなんだろうね〜〜。」
 「う〜ん。どうだろうねぇ〜〜。」

娘。に入ったばかりの4人は無言だった。

 「・・・・・・・・・・・・・・」

無理もない。
「モーニング娘。」に入って半年も満たない内にの海外ライブ。 はしゃぐほうが難しいといった所だろう。それを見たつんく♂が4人に声をかけた。

 「お前ら、まだ入ったばかりでダンスとかうまく踊れんのもわかるが、 無理に意識することはない。いつも通りの自分達を出していけばええんや。」

 「そうだよ。みんなついてるから。」

リーダーの飯田が4人に向かって言った。

 「「「「はい!!」」」」

4人が声をそろえて返事をする。

 「あーそれとな、ちょっとみんな聞いてくれ。 今回のライブの事やけどな。お前らには、英語で歌ってもらう。」

 「は・・・」

今まで、騒がしかった控え室は一転して水を差したような静けさに包まれた。

 「英語ですか!!!」
 「そうや!!」
 「英語・・」 「英語だって・・・」

次々に不安の声がつのっていく。辻と加護は目にうっすらと涙を浮かべながら、
何かを訴えるようにつんく♂を見つめている。なんとも可愛らしい。

 「何曲歌うんですか?」
 「それは心配せんでもええ。一曲だけや。」
 「何を歌うんですか?」
 「・・う〜んそれやけどな。「モー娘。初の海外ライブ」やっちゅう事で、やっぱり
 俺としては「LOVEマシーン」がええかなと思うとったんやけどな。
 社長や他のお偉いさんと話し合った結果、リズム的にも一番アメリカ人受け
 しやすいと思われる「恋愛レボリューション21」に決定したわ。」
 「恋レボかぁ〜〜・・・」
 「ああ、でも恋レボなら途中で結構長い踊りがあるから時間かせげるじゃん!!」
 「うん・・その分英語喋らなくてすむ・・・」

皆が安堵の表情を浮かべる中、新メンバーの4人は放心状態にいた。まだろくに新曲 の振り付けも覚えられないまま、「恋レボ」の振り付けを覚えなければならなくなったからだ。

 「・・つんくさん、ライブ日はいつ何ですか?」
 「二週間後や」

 「!! じょ、ちょ、ちょ!!」

瞬間的に矢口がツッコミをいれる!

 「ム〜〜リ〜〜〜!! 絶対ムリ〜〜〜!!!」

吉澤が大声で否定した。

 「エアーーーーヤ〜〜〜!!!」

辻と加護は意味不明の奇声を発している。

 「とにかく、そういう事や。みんなよろしく頼む!!!」
 「・・・・・・・・・」

皆、小さな声でグチっていたが、プロデューサのいう事を聞かないわけにもいかず、
最後はライブまでのスケジュールを熱心に聞き入っていた。

スケジュールはというと、今から一週間死ぬ気で英語を歌詞をマスターし、 一週間後に現地でリハーサル。そのままアメリカに滞在し、残りの一週間向こうのステージでの 立ち位置、演出を行うというものだった。

 「ああ、それともう一つ。「モーニング娘。」のスケジュールとは関係ないが、
「木村 弓」さんて知ってるか? 千と千尋の・・」

 「しってるーーー・・よんでいる〜〜むね〜の〜〜」

加護が得意のモノマネを披露した。

 「そうやそうや。あのスタジオジブリの作品はアメリカでも公開されとってな。 今回「モーニング娘。」と一緒に向こうのステージで曲を披露することになっとる。 乗る飛行機が一緒やから迷惑かけんようにな。」

 「は〜い。」

辻と加護がなんとも心配そうな返事をした。

 「・・頼んだで飯田・・」
 「・・はい。」

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〜出発前夜〜

ダンスレッスンと英語の歌詞で歌う練習が終わり、 娘達13人は控え室に集まり円陣を組んでいた。リーダーの飯田の手の上に12人が手を合わせる。

 「みんな、明日はいよいよ「モーニング娘。」アメリカに出陣よ!!! 初めての海外コンサート、 全員一丸となって成功させましょう!!

 ・・せ〜の」

 「がんばってぇいきまっしょい!!!!」

 「はい! それじゃあみんな明日のリハーサルにそなえて、 早く家に帰ってさっさと寝ましょう〜〜〜!!」

 「おつかれさまでしたーーー!!!」

 「おつかれさまでしたーー!!」

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〜出発前夜-辻邸-〜

 「希美、あんたそんなにいっぱいお菓子持ってくの?」

 「うん。」

「モー娘。」1の食いしん坊で知られている辻は、 バックの中にはちきれんばかりのお菓子を詰め込んでいた。

 「ほんと、それ以上太って「モー娘。」に居られなくなっても知らないからね。」
 「えへへ・・・」

彼女は何をしにアメリカへ行くのだろうか?

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〜出発前夜-石川邸-〜

石川は広間で明日の持ち物のチェックをしている。

 「・・え〜と、テッシュよし! ハンカチよし! マスクよし! 変えの下着よし! ・・そしてスタンガンよし!!」

 「(スタンガン!?)」

台所で洗い物をしていた母親が顔を覗かせた。

 「梨華、あんた何しにスタンガン何か持ってくの?」
 「えーだってアメリカだよーー!! いつどんな所で襲われるか分かんないじゃん!!」

そう言いつつスタンガンをバッグの中にしまう。ちなみにこのスタンガンは事務所と契約 した時に、護身用としてもらったものだ。「モーニング娘。」は全員もっている。

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〜出発前夜-後藤邸-〜

 「姉ちゃん明日だっけ?」

 「おお。」

ソファーに座ってゲームをしている弟のユウキが話しかけた。

 「ふ〜ん。じゃあこれ貸してやるよ。」

そういって、ユウキはやっていたGBAをやめ、姉に差し出した。

 「サンキューー!! それよりあんたゲームばっかやってないで、早くEE JUMP戻りなよ〜〜。」

 「うっせえな!」

後藤は部屋に戻り、明日の仕度をしていると誰かがドアをノックした。

 「真希? いるーー。」
 「うんーどうぞーー。」

ドアを開けて姉が入ってきた。
 「出発・・たしか明日だよね?」
 「うん。」
 「じゃあ、これ持ってきな。」

そういうと、姉は透明に光り輝くネックレスを差し出した。

 「ウォーーなあにこれ?」
 「路上で外国人が売ってたやつ。ガラスで作られた安物だけどね。 まあ、ライブがうまくいく為のお守りみたいなもんかな。」
 「ありがとーーお姉ちゃん!」

やれやれ・・弟のユウキとは、えらい対応の違いだ。

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〜出発前夜-矢口邸-〜

矢口は携帯で誰かと話している。

 「やーぐち〜聞いたよーー! 凄いじゃん!! がんばんなよ〜〜!!」

電話の主は中澤だった。

 「ウチも応援してるからな〜〜!!」
 「うーーん、ありがとー裕ちゃん!!」

・・・・・・・・・・・・こうしてそれぞれの夜は更けていった・・・

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〜出発当日-空港ロビー-〜

 「11時50分羽田発アメリカ・ロサンゼルス空港へお越しのお客様は3番搭乗口へお集まり下さい。」

午前11時40分。3番搭乗口には、つんく♂、マネージャー、テレビクルー、衣装さん、メイクさん、 「ウリナリ」などでお馴染みの川村(かわむら)アナウンサー、「木村 弓」さん、そして「モーニング娘。」の11人が集まっていた。

 「遅いのう、あの二人・・ちゃんと迎えに行かせたのに・・・」

つんく♂は時間になっても到着しない辻と加護に苛立っていた。

 「あ、来た!」
 「すみませーん!!」「おくれましたーーー!!!」

二人が息を切らしながら走りよってきた。

 「遅いやないか!! 20分前集合ていうといたやろ!!!」
 「「ごめんなさい・・・」」

新メンバーの前というところもあるのか、二人は萎縮している。

 「お前ら、もう先輩やねんぞ!! こんなこっちゃシメシがつかんやろ!!」
 「まあまあ、つんくさん・・」

川村アナが仲介にはいる。

 「二人も反省しているようなので・・あ、つんくさん!! もう搭乗手続き始まってますよ!!」

さすがはアナウンサー。話の切り替えがうまい。

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〜-飛行機内部・2階ファーストクラス-〜

飛行機に搭乗すると、スチューワーデスが先導してくれる。 これは余談だが、「モー娘。」の海外遠征を応援しに空港にくるファンは 一人もいない。海外ライブがあるという会見を行っただけで、正確なライブの日時は、ライブ模様の収録 が終わるまでシークレットにされているからだ。したがって、ファーストクラスに座っても「モー娘。」 を特に気にする者はいなかった。
他の乗客が、年をくっていたということもあるが・・・

全員が座席に座ると、他の乗客がちらほらとやってきた。 次々と座席に座っていき、全員がそろったかと思いきや、また一人客がやって来た。

 「あれぇ? モーニング娘じゃあないの?」

(やれやれ見つかってもうた・・)つんく♂がめんどくさそうに、声のした方を振り向くと・・

(!!!)

 「猪木さん!!!」

アントニオ猪木!! その人だった。

 「猪木!?」 「猪木さん!?」 「あ、猪木さんだ・・・」

つんく♂の声に娘達も振り向くと、そこには確かにあの「アントニオ猪木」がいた。

一方、猪木はテレビクルーと川村アナを見て

 「あれ、何かの撮影中?」

と、拍子ぬけ。

 「猪木さん! 何でここに居はりますの!?」
 「ん、いやプライベートですよ。ちょっと友達と旅行に・・」

猪木とつんく♂が話をしていると、猪木の後ろからその友達がひょっこり顔を出した。 これにはつんく♂もおったまげた!

 「マリックさん!!」

Mr.マリック!!! 先ほどの猪木には興味を示さなかった何人かの娘達もこのネームには さすがに乗ってかかる。先陣を切ったのは加護だった。

 「ウォーアーー〜〜〜マリックさんだ〜〜〜!!!」
 「どうもこんにちわ。」
 「あれー・・えーマリックさん?」

後藤が首をかしげる。無理もない。プライベートの旅行のため、いつもテレビで見るような 服装ではなく、普通の服を来ていたからだ。当然、サングラスも掛けていない。後藤の問いに対し、 マリックは・・

 「違いますよ! 今は栗間たすみです。」

と返した。 

 「よく、二人で遊ぶんだけどたまたま二人ともまとまった休みがとれたものでね。」

二人が座席に座ると、マリックの所へ辻と加護が手をつないで、ピョコピョコとやって来た。 マリックが振り向いたところに、

 「ハンド〜パワーで〜す。」
 「マリックさーん! 何か手品して下さーい。」

するとマリックは10円玉を取り出して、指と指の間でロールさせ始めた。

 「ウオーーすごーい!」

さすがはマジシャン! プライベートでも必ず、ネタは用意しておく。辻と加護はすっかりマリックの マジックに見とれている。その横では・・

 「・・で、今日はどうして?」
 「実はこれから、アメリカでライブなんですわ。」
 「アメリカで! すごいなあ!!」
 「まだ、シークレットの段階なので、内緒にしといて下さいよ。」
 「ハハハ、分かりました。」

話が一段落ついたところで、アナウンスが入った。

 「まもなく、発射いたします。お客様は座席に座り、シートベルトをお締め下さい。」

辻と加護も席に戻り、シートベルトを締める。

・・・バシュン!! ゴゴゴゴゴゴゴゴ!! ゴォーーー!!!

---いざアメリカへ-----

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第二章「消えた民家」

〜-飛行機内部・2階ファーストクラス-〜

飛行機が離陸してから10分後、安定高度に入りシートベルト解除の許可が出された。 ファーストクラスは満席ではないため、娘達はあちこちでかたまり、雑談をやトランプをし始めた。 辻と加護はまたマリックさんの所へ走っていく。

 「お前ら、あんまマリックさんに迷惑かけるなよ!」
 「・・・・・・」

無視。

 「ハハハハ! 大変ですねぇ!」
 「ほんまですわ! あのころの年になると俺の言う事も聞かんようになってきますわ。 俺はプロデューサーやぞ! まったく!!」
 「元気があっていいじゃありませんか。」
 「木村さん!」

猪木も木村と目を合わせ、軽く一礼する。

 「隣りよろしいですか?」
 「ええ、どうぞどうぞ。」

向かって左から、猪木、つんく♂、木村、何か変な組み合わせだ。

 「私もあれぐらいの年の息子が一人いますから、つんくさんの気持ちは分かりますよ。 ホホホ・・・」

すると前に座っていた吉澤が、

 「皆さーん!」
 「「「?」」」
 「ハイチーズ!!」

 パシャッ!!

このとっさのノリに対応できたのは、以外にも猪木と木村だった。 つんく♂は反応できなかった。

 「コラ! 吉澤!」
 「いいじゃないですか。ただの記念撮影ですよ。だってこの3人のスリーショットなんて めったに見れるもんじゃないし・・」

隣りで後藤が苦笑した。

 「お客様ーお飲み物、軽食はいかがですか?」
 通路奥からスチュワーデスさんが台車を押してやってきた。ちなみにファーストクラスのため、 商品はすべてタダになる。娘達はハイエナのように台車に群がっていった。客の対応にはなれている スチュワーデスも、9人の娘が同時によってくると対応が難しそうだ。しかも「モーニング娘」だと 気づき、さらに動揺する。

 「こーら順番に! スチュワーデスさんに迷惑がかかるでしょ!」

すかさず飯田が注意する。

 「そうだよ! ちゃんと一列に並びなさい! 他のお客さんだっているんだから。」

保田も続いて注意する。一方他の客はというと、ほとんど老人ばかりなので孫を見るかのように 暖かく微小していた。

 「う〜ん、新リーダーもなかなか様になってきたじゃないの。」
 「ええ。まあ、あの二人と安部と矢口には、ほんま世話になってますわ。俺の言う事は聞かんでも、 あいつらの言う事は聞くっちゅう奴が多いですから。」

娘達はそれぞれ食料をゲットしむさぼりはじめた。食べている時は辻と加護も静かである。 他のメンバーが落ち着いたのを確認してようやく残りの4人が動いた。

 「えーとどれにしようかな〜。」
 「すいません。コーヒーもらえます。」
 「これと、これと・・」
 「う〜ん・・なっちはどれにしようかなぁ〜・・オレンジジュースと・・あ、後、新聞一部。」
 「かしこまりました。」

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 離陸してから一時間後。ようやく飛行機にもなれ落ち着いてきた。辻加護と新メンバーの4人は いつのまにか寝入っていた。猪木、つんく♂、木村組は川村アナも加わり、なおも雑談を続けている。

 「よっすぃー、私ちょっとトイレいってくるね。」
 「・・うーん・・。」

 吉澤は雑誌を見ながら軽く返事をする。その隣りで寝ている後藤をおこさない様に、 石川はトイレに立った。

 「ねえねえなっち。何か面白い記事載ってる。」
 「うーん・・あんまたいした事載ってないねー。」
 「・・あ、これ何?」
 「ん?」

矢口が指さした場所に目を向ける。

 「えーと何々、アメリカテキサス州片田舎にあった民家が、ある日一夜にして忽然と姿を消した・・だって。」
 「ほうほう。」
 「住人の「ジョージ・マリソン」さん65歳男性は行方不明。近隣の住民の話によると、 ジョージさんは朗らかな性格で、近所付き合いもよく、誰にも告げづに引っ越す事は考えられないという。 これらの証言から、地元警察は誘拐の線でも捜査を進めているもよう。・・だってさ。」

なっちが記事を読み終わる頃には、矢口はうたた寝をしていた。飯田も保田も吉澤も仮眠を 取ろうとしている。

 「(みんな寝ちゃったのか・・なっちも少し寝よーっと・・ZZZ)」

つんく♂達はマリックも加わり、なおも雑談を続けていた。

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〜-飛行機内部・1階女子トイレ-〜

用をすませた石川は、鏡の前で髪の毛をとかしていた。
ふと、腕時計を見ると12時55分。

 「後、一時間ちょっとか・・。」

石川また髪をとかし始めた。

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〜-飛行機内部・1階エコノミークラス-〜

エコノミークラスにはファーストクラスと違い様々な年代層の客が乗っている。ざっと100人。 もちろん人種も様々である。その中で日系人と思われる男数人が妙な アイコンタクトを交わしていた。数は10人といったところだろうか。男達は、目で合図をしながら腕時計を見やる。

 12時59分56秒・・57・・58・・59・・00!! ピー!

 ザッ!!!

1時の時報と共に、数人の男達は同時に席を立った。

 「お客様?」

通路の通し口に立っていたスチュワーデスを男の一人が突き飛ばし、スチュワーデスは 壁に打ちつけられた。

 「キャアッ!!」

スチュワーデスの悲鳴にエコノミークラスの客達が異変に気づきざわつきはじめた。

 「ボブ、ニコル、ジャックここに残れ。」
 「了解!」

男達のリーダー風の男がそう命じたかと思うと、その三人は持っていたバックから何かを 取り出した。

 「キャアッ!!」 「オイッ!」

それは銃だった。むしろマシンガン。銃を手にした男達を見てエコノミーはパニック に落ちいった。

 「騒ぐなーーー!! 静かにしろーーー!!!」

男達は乗客に銃口を向けながら威嚇した。

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〜-飛行機内部・1階階段前通用口-〜

階段前についた男達。リーダーらしき男が首をひねる。それにうなづき二人の男が残った。 すると残っている男の一人にリーダーらしき男が何か耳打ちをした。

 「・・レニー・・例の・・始末しとけ・・・。」

 「了解・・」

リーダーがまた首をひねった。三人の男がファーストクラスへ入っていく。そしてリーダーと もう一人の男は階段を上がり「二階・管制室」へ。

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〜-飛行機内部・2階管制室-〜

管制室。飛行機の殆どのシステムはここで管理している。常時4人の管制人が待機している。

 「ズズ・・」

 コッコッ・・・

 「ん?」

階段を上ってくる音がする。管制人の一人がコーヒーをすすりながら階段へ目を向けると・・・ 見知らぬ男二人が上がってきた。管制人はあわてて止めにはいる。

 「すいません・・ここは関係者以外・・」

 ドンッ!!

男の一人が発砲した。

 「おん?」

音に気づいた管制人の一人が振り向く。

 ドンッ!! 

二人は音もなく倒れた。

 「はあっ! はあああっ!!」

新米だろうか。管制室にいる残りの二人はパニックに陥っている。リーダーらしき男がまた 首をひねる。それに対しもう一人の男がうなづく。

 「どけっ!!」

男は新米管制人を突き飛ばし、操縦室へ。

 「・・あーきみ・・。」

 リーダーらしき男は突き飛ばされた管制人に話し掛けた。

 「はえっ!?」

 「機内アナウンスのマイクはどれかね。」

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〜-飛行機内部・操縦室-〜

けたたましく扉を開け、男が入ってくる。

 「なんだ君はっ!?」

 ドンッ!!

問い掛ける機長に対し、黙殺の銃声。息絶えた機長を引きずりおろし、男が操縦席に座る。

 「・・は・・・は・・」

男は恐怖で混乱している副操縦士を指差し、

 「座ってろ!!」

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〜-飛行機内部・2階ファーストクラス-〜

トイレに立った石川を覗いて、娘達は全員眠っていた。つんく♂達はまだ雑談を続けている。

 「・・そしたらそん時ワイが・・」

 ガー!!

扉が開き三人の男が入ってきた。

 「はははは・・は・・」

男達の手に銃が握られていることに気づき、つんく♂は身を乗り出した。

 「立つんじゃないっ! 座ってろっ!!!」

他の乗客達も異変に気づく。娘達もその大声に次々と置き始めた。

 「・・うーん・・何〜・・」

 ピンポンパンポン!

すると機内アナウンスが入った。

 「・・あ、あー快適な空の旅を楽しんでいる最中にもうしわけないが、この航空旅客機637便は、 我々がハイジャックした。」

 !!!

 「え?・・」

ハイジャックと聞き、つい飯田が立ち上がろうとした。

 「飯田! 座ってろ!!」

すかさずつんくが止めにはいる。猪木とマリックはじっと前を見据え、放送を聞いていた。

 「乗客の皆さんにはまことに申し訳ないが、アメリカ政府が我々の要求を聞き入れる為にも 皆さんには人質になっていただく・・ 知ってのとおり、アメリカはテロには屈しない。 したがってアメリカの便をジャックしてところで、政府は切り捨てる恐れがある。 そこで、我々は同盟国であり友好国でもある日本の便を乗っ取ったわけだ。」

 「(おい・・録音しとけ・・)」

テレビクルーのディレクターが音声に命じる。

 「我々がアメリカ政府に要求するのは・・・・」

その男が口にしたのは、あの男の名前だった。アメリカ中を震撼させた あのテロの首謀者・・・昨年末に米軍に捕らえられ、現在、アメリカ国内で 留置されている男の名前であった。――

 !!!

 「そこで一つ皆さんに忠告しておきたいことがある。我々を甘く見ないことだ。 我々は彼を奪回するためなら、どんな手段も選ばない。アメリカとの取引が終了するまで 我々の邪魔をするような、ふざけた行動はしないでいただきたい。もし、そういう行動を取るものが いれば・・残念だが即座に射殺させてもらう。」

アナウンスの内容に乗客達は次々と不安の声をもらしはじめた。

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〜-飛行機内部・1階階段前通用口-〜

 「始まったか・・。なあ、レニー今回の仕事うまくいくと思うか?」

男の問いかけに対し、レニーと呼ばれた男は黙殺。だが次の瞬間!!!

 ドンッ!! 「がっ!!」

レニーが拳銃で男の肩を貫いた。

 「・・レ、レニー・・何を・・」

 「とぼけるな!・・ネタは上がってんだよ。テメーがアメリカ政府のスパイだってことはな!・・ くたばれ・・」

もう一度レニーが男に拳銃を向けた。

 「くっ!!」

その瞬間! 飛行機が乱気流にぶつかり、グラリと揺れた。男は体制を崩したレニーの 手にしている拳銃を足で払いのけ、肩を抑えながら逃げ出した。レニーはすかさずもう一丁の拳銃を取り出し、 男の背中に向けて発砲した。男は弾丸を受けながらも、何とかその場から逃げ出した。

 「ちっ!!」

軽く舌打ちするとレニーは無線のスイッチを入れた。

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〜-飛行機内部・2階管制室-〜

 「我々はー・・」

リーダーが機内アナウンスをしていると、腰元の無線機が点滅した。

 「どうした!?」

 「ボス! 奴が逃げた!」

 「ッ!・・見つけだして殺せ!」

そういうとリーダーは無線機のチャンネルを変えた。

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〜-飛行機内部・1階エコノミークラス-〜

 ザッザザ・・

 「ボブ!!」

 ・・ザッ

 「はい、ボス。」

 「スパイが逃げた。レニーと一緒に追ってくれ。ジャックとニコルはそこに残れ。」

 「了解!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

〜-飛行機内部・1階トイレ-〜

 「フンフン・・」

石川はまだ髪をとかしていた。この飛行機がジャックされたとも知らずに・・。

 コン・・コンコン・・コン・・コン・・

 「ん?」

誰かがドアをノックしたように聞こえた。聞こえたというのは、ノックにしては以上に力弱く、 不定期に何度も音がしたからだ。

 「(なんだろ・・)」

石川がドアノブに手をかけた瞬間!!

 ドサッ!

 「キャッ!」

見知らぬ男が女子トイレに入ってきたのだ。いや、入ったというより倒れこんできた。

 「な、な、何ですか!? ここ、女子トイレですよ!!」

 !!!

石川はそこまでいうと、息を呑んだ。男の服が血で真っ赤に染まっていたのである。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

〜-飛行機内部・2階ファーストクラス-〜

 「・・我々は本気だ! もし、アメリカ側に我々の要求が通らなかった場合、この旅客機は ロサンゼルスには到着しない。もし要求が通らなかった場合は・・この旅客機をアメリカの国防総省、 「ペンタゴン」に落とさせてもらう!」

 !!!

 「何やて!?」

 「もし、そうなったときのために今の内に謝罪はさせておいていただこう。・・ブツッ!」

アナウンスが終了すると同時に機内はパニックに陥った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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