『青の軌跡』
砂浜に面したテラスに出て 海を眺めた
真っ白な砂浜が続く先には 青い海原が広がり
打ち寄せる波の先端は白く 段々に微妙な変化をつけながら
青の色が濃くなってゆく
太陽の陽射しを浴びながら 明るく鮮やかに輝く青
夏の名残を残したような 少しくすんだ青
その輝きをどこかに忘れてきたように
深い陰りを落とす青
数え切れない青が織りない 海を構成していた
僕は目を凝らし探し続けた
暗さの中にぼんやりと淡い光を含んだ あの青い色を
いつか彼女と観たシャガールの絵の中の
寂しげで暖かな あの青い色を・・・
『誰がために』
そんなことは決まってる
僕は、僕自自身とごく一部の大切な人の為だけに・・・
『僕らのクリスマス』
込み合う街中から逃げるように
僕らは手を取り合い、
二人だけの場所へ逃げ込む
部屋が暖まるまでの間
お互いを抱きしめあう
誰かにとって特別な日も
僕らには大切な日々のなかの一日に過ぎない
その日々の終わりを感じている僕らは
誰かの生誕には興味を持てない
さむいね
君がつぶやくから僕はカーテンを開けたけど
街灯の明りの中で粉雪が舞うことはなかった
『無 題』
会社から帰ると君はすぐに僕の前に座り話しかける
いろいろな話 日常の出来事や上司への不満
悲しいことやうれしいこと
その一つ一つに僕はあいづちを打つ
君は僕の反応など気にもとめずに しばらくの間、話しつづける
話し終えると、君は決まって大粒の涙を流し
僕は、君の肩越しに、君がこの十二年間、いつもそうしてきたように、
正面に置かれた額縁の中で微笑む僕に向かい
手を合わせるのをただじっと見つめる
言葉は発さない
僕の言葉は彼女には届かないから・・・
僕の存在は彼女にとって
もはや、額縁の中で微笑む男でしかないのだから
『過ぎ去りし・・・』
過ぎ去りし日の想い出は 感傷的な痛みを伴い
無意味に思える日々の中で 僕の心を締めつけて止まない
過ぎ去りし日の過ぎ去りし想いは
欺瞞と錯覚にまみれた おとぎ話のようなものかもしれないが
その圧倒的な存在に 僕は魅了される
たぶん
過ぎ去りし日々は 求めてもかなわぬ夢のように
たどりつけないからこそ いとうしいのかもしれない