1995年 東北大学法学部卒業
1996年 「悪党たちが目にしみる」 第13回サントリーミステリー大賞佳作賞
2000年 「オーデュボンの祈り」 第5回新潮ミステリー倶楽部賞
2003年 「重力ピエロ」 直木賞候補
2004年 「アヒルと鴨のコインロッカー」 第25回吉川英治文学新人賞
     「死神の精度」 第57回日本推理作家協会賞短編部門賞


陽気なギャングが地球を回す 祥伝社文庫 2006/02/20

伊坂さんが書くと、ギャングもなんだかお洒落でユーモアたっぷり・・
成瀬と響野と久遠と雪子、4人が銀行強盗仲間
それに、雪子の息子と別れた亭主地道が絡み
響野の若い妻祥子、メカおたくの田中などなど、面白メンバー集合
裏切られ、裏をかき、どんでん返しの面白さ
伊坂さんの作品には、前の作品の登場人物が出てくる、楽しいリンクがはられている。
それにはまる
もうじき、映画も公開されるようで、映画のキャストが目にちらついて
私オリジナルの人物像が変更された
成瀬は大沢たかおで動かない・・いいのか悪いのか
映画を見るのまちどうしい


重力ピエロ 新潮社 2003/04/20

これは、伊坂作品の前期の金字塔でしょうね
この延長線上に、「魔王」があると思いました
兄と弟の2人兄弟。仲良しで魅力的なところも一緒。

復讐劇も、伊坂さんにかかると切り口が鮮やかでお洒落で一味違いますね
小道具は、遺伝子と放火と落書き。
兄の泉水は、遺伝子を商売にしている企業に勤めていた。

母親が未成年の少年にレイプされて出来た弟・・春。
その事実と結果を当たり前のように受け止め、妻を抱きとめ受け入れた父
家族のありようが格好よすぎ。だけど、それがとても胸にしみる。
事実を知ったとき、遺伝子を恐れたであろう弟、春。

20数年を経て、次々と放火事件が起きる
放火現場の近くには、必ず、落書きがあった。
春は、落書きを消す仕事をしていた。

伊坂さんは、映画に堪能だということです
読みながら、目の前に映像が浮かび上がるような描きっぷりは、見事ですね。
(2006/03/14)


 オーデュボンの祈り 新潮文庫 2003/12/01

伊坂さんの作品は、風変わりでそこが面白い
あとがきにシュールとありましたが、言い得ていると思います

伊藤はコンビニを襲い失敗した後、轟という男に荻島へつれてこられた
その島は、100年以上も鎖国状態だった
島には、優午という物を言う案山子がいた
優午は、未来が見える案山子だった
島の人々に頼りにされた、在る意味神のような存在だった
島にたりないものを持った男がやって来ると予言していた
島にたりないものは何なのか、伊藤は足りないものをもってくる人物なのか
登場人物は、人間のありようのカタログのようである
どうやって生きていくんだ・・・つぶやきがどこからともなく聞こえてくる気がした
優午の予言がリンクをして、ほうと思うラストを迎える
島にたりないものは何なのか・・ラストに判るがなるほどと思う
伊坂さん、ロマンがあるよな



魔王 講談社 2005/10/20

伊坂さんは、今まで読んだことのないような小説を書きたかったと言っているようです。
文章が軟らかい、風にそよぐ柳の葉のようにしなやかといいますか・・・
テーマが重たいから、優しい文章はとても読みやすい
ムッソリーニのファシズムに照らし合わせて、日本がファシズムの方向へ傾いていくのを
食い止めるため、安藤は1人で闘う。
或る日突然に、安藤には不思議な超能力がついた。
超能力を使って、若くして首相になる政治家犬養と対決する
犬養は、ファシズムを懸念させる政治家だった。
「考えろ考えろマクガイバー」と、判らないことについて安藤はいつも考えている
まるで、流されるな、時代の流れを見極めろといわんばかりに
歴史を見れば、同じ過ちを繰り返し繰り返しやってきて懲りていないのが人間。
賢いのも大衆なら、愚かなのも大衆で、ずるがしこいヒーローが出てくれば、ころっと騙されるのは歴史が証明している。

結局、なにがどうやねんといいたいラストでしたが、余韻の残る小説です
自由ってなんだろうと、ふと思ってしまいました。



死神の精度 文芸春秋 2005/06/30

伊坂さんが作り出した死神「千葉」は、音楽が好きで・眠らなくても良くて・感情がなくて・時々とんでもない無知をさらけ出す、人間から見れば得体が知れなくて、でも、調査対象にはなじまれる人間に変身できる。
まじめな死神で、1週間程きっちり調査をして、対象者を死の世界へ送り出す。
精度はとても良い、いい加減さのない仕事のできる死神かな。
「オール読み物」に不定期に連載された5作品と、「別冊文芸春秋」の掲載された1作品、合計6作品の短編集です。

死神の精度(あるメーカーの苦情係:藤木一恵)
死神と藤田(昔ながらの任侠やくざ:藤田)
吹雪に死神(ある山荘に招待されたメンバーの田村聡江)
恋愛で死神(ブティックに勤める萩原、恋人になる古川朝美)
旅路を死神(逃亡中の殺人犯、森岡耕介)
死神対老女(美容師の老女、名前は読んでのお楽しみ)

いずれも、面白いです。
調査する対象が様々で、味付けもなかなかです。
私は、「死神と藤田」と「死神対老女」が好きです。
「死神と藤田」では、ローリングストーズのことをさりげなく書いてあるのが、ローリングストーズはあまり好きでないけど納得しました。
「旅路を死神」では、<あんなにたくさんの人がいて、人間のことで悩んでいる奴は、たぶん1人もいない>と死神が言うセリフが、妙に心に引っかかりました。自分の悩みで人は悩むけど、人間のことについては悩まない。其れについて悩むのは、誰だろう、仏様か・・・?
哲学者も本当は、不毛な思索をだらだらと繰り返している気がするし。
宗教家も胡散臭いしね。
6作品がどこかでつながっていて、其れも楽しかった。
やっぱり、最後の「死神と老女」はいいなー。
2005/11/22