Squall

 

最初に、少女を見つけた時に思った。

本当にこの華奢な身体の少女が、宇宙を統べる女王なのかと。

この宇宙を統治している、金の髪の女王に比べても、その力は弱い。

だが、あいつらを助け出すたびにわかってきた。

彼女は・・・アンジェリークは、守られるべき存在なのだと。

だからこそ、このひ弱な姿でもやっていけるのだと。

 

「こんなところにいたの、アリオス」

頭上からの澄んだ声。そんな声の持ち主は、一人しかいない。

無視して、寝返りをうつアリオス。

・・・俺に、話しかけるな。

そんな感情を背中に醸し出してみるが、栗色の髪の少女は一向に気づく気配はない。

「アリオスったら!スコールに襲われたって、知らないわよ?!」

少し、怒ったような声色。

今、彼女がどんな表情をしているか、アリオスにはすぐに想像がついた。

いかにもうざったそうに目を開けてみると、目の前に翡翠色の瞳。

ちょっぴり怒りの色を滲ませて、でもどこか楽しげで。

・・・髪が長ければ・・・見分けがつかないかもな。

「え?何か言った?」

「・・・おせっかい、って言ったんだよ」

アリオスは身を起こすと、身体についた砂を払う。

青き群島の惑星というだけあって、美しい海と砂浜が広がっている。

そして、頭上には昼寝におあつらえむきの茂った木々。

「おせっかい?ふーんだ、おせっかいで結構よ」

唇をとがらせてみせる少女。彼女の名は、アンジェリーク。

もっとも、彼がその名で呼ぶことはほとんどなかったのだが。

「・・・あいつらは?」

一緒に旅をしている彼女のナイト達の事を聞くと、アンジェリークはアリオスの隣に

座って答えた。

「だって、この湿った空気よ?いかにも、ひと嵐が来そうじゃない。皆様、すでに

屋根の下におられるわ」

「・・・で。お前は、何しに来たんだよ」

「アリオスに会いに」

とんちんかんな答えに、アリオスはクッと喉の奥で笑う。

「バーカ。毎日、会ってんだろうが」

「・・・それは、そうだけど。いいでしょ、別に」

ぷい、と横を向くアンジェリークに、アリオスはからかうように言う。

「お前って、本当に気持ちが顔に出るな」

「アリオスのポーカーフェイスより、マシでしょ」

「・・・全く、口のへらねえ・・・」

「あなたより、マシ!」

ついに堪えきれなくなって、アリオスは吹きだした。クックック・・・とひたすら肩を震わせて、

笑い続ける。

「ちょっと、笑うことないでしょ?!」

真面目に抗議してくるアンジェリークに、ますます笑いが止まらないアリオス。

もう、と呆れたようにつぶやいたアンジェリークは、その言葉とは裏腹に、最近めっきり

豊かになってきた彼の表情に、少し見入っていた。

炎の中、助けてくれたことがきっかけで仲間になった旅の剣士。

その出身も旅の目的も教えてはくれないが、いつも自分を助けてくれる。

信用できないと言う者もあったが、彼女は彼を信じていた。

やがてひとしきり笑いが収まると、アリオスは立ち上がって言った。

「ほら、帰るぞ」

「・・・あら、もうお昼寝は終わり?」

アンジェリークは、下から彼を見上げる。

「・・・お前なぁ。呼びに来ておいて、それかよ」

アリオスは、腰に両手をあてて少しかがむ。

2人の視線が、まともにぶつかる。・・・先に、視線をそらしたのはアリオスだった。

「・・・早く帰んないと、またあいつらに何言われっかわかんねーからな。それに、

スコールに生じて敵が襲ってこないとも限らねえし」

アンジェリークは立ち上がると、ポンポンとお尻の砂を払った。

そして、アリオスに向かってニッコリと笑ってみせる。

「大丈夫。アリオスは、私が守るから」

「・・・はぁ?」

何言ってんだ、こいつ。

アリオスが、そんな顔をしたことに気づいたのか。

アンジェリークは、ぎゅっと手にしたロッドを握り締める。

「だって、あなたは大切な人だもの」

大切な・・・人?

その言葉にドキッとしながらも、アリオスは彼女の瞳から視線をそらせない。

ポツ、ポツと雨が降り出してきた。

「アリオスも、守護聖の皆様も・・・私を守ってくださる。そして私は、あなたと皆様を

守ってみせる・・・」

アンジェリークは、両手を広げて微笑んだ。

「だって、私は女王だから」

その時。

ザーっと勢いを増す雨の中、アリオスは確かに見たと思った。

自分を覆う、真っ白な翼を・・・。

「行きましょ、アリオス!」

我に返ると、目の前にはいつも通りのアンジェリーク。

すでにずぶぬれの髪を、小さな手で隠そうとしている。

「・・・ったく。お前ってやつは・・・」

アリオスは、自分のマントをばさっとアンジェリークにもかけてやる。そしてそのまま、

華奢な肩を抱く。

「・・・行くぞ」

「ええ!」

 

守られるべき存在。そして同時に、すべてを守っている存在。

・・・見くびりすぎていたようだ。

その存在は、消滅すべきもの。それがはっきりした。

けれど・・・。

もう少しだけ、一緒に走らせてくれ。

せめて、この嵐がおさまるまで。

                    FIN

 

§じろりんのあとがき§

「2号館前広場」444HIT記念ということで、ソーニャ様に進呈した作品。

一定期間が過ぎたので、こちらでも公開することに致しました。

リクエストは『勝気ちゃんを』とのことで、お相手がアリオスなのは私の好みです()

アリオスには本当に、泣かされました。良くも悪くも。

天空EDでは、本気で号泣しましたから。いい年なのに、何やってんだか・・・。

ちなみにこの作品のタイトルも、ソーニャ様につけてもらいました。