ある朝目覚めると、こころがカサカサ音を立てていた。
連日の育成に、疲れ果てる体、焦る心。
どうしても、民の気持ちをつかめない・・・無力なわたし。
このところ、日の曜日の誘いも億劫になって
誰とも逢っていない。
「アンジェリーク、あなた最近おかしいわよ?」
「いいの。ほっといて!」
ロザリアの心配そうな声も、
わたしを責めているようにさえ聞こえる。
どうせ、わたしなんかよりずっと育成が進んでいるのよ。
だからそんな余裕を見せられるんだわ・・・
そして、思うように進まない育成に追われる毎日。
わたしは、何もかも放り出したくなって、木陰に寝転がった。
「アンジェリーク?どうしたのですか。」
「リュミエール様・・・。いえ、別に。なんでもありません。」
わたしは、憮然として答える。
もう、知らない!誰も話しかけないで・・・!
「アンジェリーク、わたくしと一緒に来なさい。」
いつになく強い口調のリュミエール様は、
わたしの手をひいて泉へ。
「こんなところへ・・・なんですか?」
「ちょっと、我慢して下さいね」
そう言うや否や、リュミエール様はわたしを、
あろうことか、泉へ突き落とした。
キョトンとするわたし。
そんなわたしを優しく見下ろすリュミエール様。
「なっ・・・なにするんですかっ!」
するとリュミエール様は自らも冷たい泉に飛び込んだ。
ずぶぬれのリュミエール様と目が合う。
「やはり、まだ泉は冷たいようですね」
そう言って、なぜかいたずらっ子のように微笑む。
「くすっ・・・くすくすくすっ・・・」
思わず、笑ってしまうわたし。
その時、リュミエール様が静かに切り出した。
「アンジェリーク。泉の水が今はまだ冷たいように、あなたの育成は
厳しいものになっています。けれど、もうすぐこの冷たさもぬるんでくる。
あなたにとってのつらい時期も、いずれこの水のサクリアが
民やあなたを優しさで満たしてくれるでしょう。それまでは、
決して投げ出してはいけませんよ。アンジェリーク。」
水の魔法にかかったように、頑なだったわたしの心が、泉に溶け出していた。
つらい育成を悲観するあまり、その先の民の幸福を忘れていた。
こんなことでは、女王失格でも当然だったのだわ・・・。
「くっしゅん!!」
はっ、わたしたち、泉の中で何十分も・・・。
リュミエール様は、たっぷり水を吸って重くなった体で
困った顔をされた。
「このままでは、明日からの育成に・・・くしゅん。・・・差し支えますね」
ふたりして笑いながら泉を出る。こんなに笑ったの、いつぶりかな。
今日はゆっくり休もう。冷えた体を温めよう。
そして明日、水のサクリアをいっぱい与えてもらおう。
わたしと、わたしの大切な民のために・・・