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2001年「麦収穫祭」で寄せられた作品です。

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「 火 の 色」森しず子

火の色の酒を注ぎ込む寒卵
居ながらを恵方となせり鐘の音
白梟間をおいて鳴くまなこかな
刻々と冷えてくるなり受難曲
小さすぎる葉をふるわせて寒牡丹
春しぐれ居抜きで売りし書店かな
屏風屋に正坐しており冴え返る
春の雷音無し時計音たてて
精進料理待つ花冷えなるひとり
坐禅草宇宙の声に耳たてる
老いらくの恋にはならず揚雲雀
押し寄せる波音のなかつくし摘む
開け放つ窓どっと来し卒業生
水草生う京の弁当膝にのせ
春暁や東京湾が浮きあがり
菜の花にひと日染まるや夜の番茶
山笑う隣家の遠き甲斐の国
御法話をぬけて渚の春の月
梅まつり人ざわざわと裸電球
冴返る天神様に牛の鼻
木苺の熟るるに任せ新団地
桜吹雪に後頭を空け渡しけり
春の蚊を打つ大げさな声を立て
「悔いはない」などと嘘つく四月馬鹿
生野菜ばりばりと噛み夏に入る
巨船のごと角出しているかたつむり
どんぐりや貰い泣きする姉妹
椿落つ生気の色をしておりぬ
やわらかな殺気ながれる菊の宴
晦日そば啜る回転椅子軋み

「彼 岸 坂」遠藤 正保

また咲こうね牡丹にのこす妻の声
部屋の隅ばかり目のゆく今朝の秋
泣ける日も今に来る筈白木槿
頬杖をしなおして聴く秋の浪
もう二度と渡らない橋秋の虹
空耳はいつも一言秋の雲
名月や等間隔に寄せる浪
白鷺に白き過去あり秋の水
沈まざる巖傷多し秋の潮
海匂う高さ尋ぎつつ鳥渡る
向うにも銀杏落葉を仰ぐ人
浮寝鳥水にあずける己が夢
立冬の海見る椅子を据えにけり
北窓の多き蜑ヶ家石蕗の花
吾が影の中に影置く枯野道
海に出る道の起伏も年の暮
風花の白し妻との記憶より
もの言わぬ唇あかし雪女郎
冬銀河荒れ未だのこす忘れ潮
晩冬の海を見つめる鷺白し
鬼やらひ同じ高さに港の灯
節分の窓みな閉ずる魚問屋
海向いて廃船となる春しぐれ
鳰の春鳥となるべく水羽搏つ
春風や雑木の影の太曲り
妻在りし夢ももう夢蘆の角
春泥に親しむ鷺も足跡も
鴨引くや水に還りし水の音
祖となりし妻に鐘打つ彼岸寺
撞く鐘に人の過去あり彼岸坂

「春のうれ梢」小松 雅朗

晩年の棘のひとつに春の雷
鳥雲に永久凍土が本の中
曲線が混みだしてくる木の芽どき
びいどろの春の夕焼けかくれんぼ
古草の彼岸はオブジェ雲開く
望郷のひとりの時間黄沙降る
鍵もってサルトルがいる春の闇
かつてスパーク東京の春の昏れ
溶暗の系譜菜花の色の島
来し方に杭ならびたつ遠霞
とけぬ問い仁王の口に春がある
水飲んでおぼろ彼岸に動く影
濃く淡く過ぎゆく時間鳥の恋
書きのこすことや祖形の竹の秋
木下闇風神雷神さまりあ人
青嵐自分が消えないための枷
夏椿絵馬千枚が揺れている
行間にいる駅頭のつばくらめ
余白のような略歴を書く沙羅の花
午前二時本の中から鳳蝶
涼風やわたしはかもめ落下する
夜には夜の濃さの秋霖衷のかたち
曼珠沙華銀河系的コンピューター
私的なことかがんで夕焼色になる
晩餐や葦の匂いのわが敵意
裏山に生涯の焦げ茨の実
豪雪の車中ことばを折りたたむ
祖の地の藻塩を振って春まつり
逢いにゆく海の深さの春の坂

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「お達者か」美馬順子

筆不精木の芽人の芽お達者か
白雲がまたがる尾根の春動く
人生に変化球あり更紗木瓜
海鼠噛む女系家族の吹きだまり
遠近を啼き交わす鳥二月の樹
道半ば風と惑えり春落葉
辛夷咲く学び舎の窓今日閉ざす
辞を低く別れのことば雪柳
声千々に丘に登れば花菜風
貝寄風や藍を深めて舟溜り
水音のどこへ行き着く落椿
連翹のうねり野中の一軒家
たんぽぽの来る日行く日の波の音
蒲公英の変わらぬ気質待ちぼうけ
春の枷耳に集めてイヤリング
白い花咲きつぐ日和鳥帰る
桃一枝時代おくれの髪結うて
花ミモザ人妻の愚痴雨に咲く
紫木蓮笑顔の裏の重い過去
あす雨となりゆく空の初桜
生い立ちはもはや幻さくらの夜
山桜ひとつ山越え国なまり
その背後大海原の桜鯛
蝌蚪ゆする水地球に深い傷
初つばめ袈裟がけに来て長屋門
山吹の色濃く残る砦垣
白牡丹咲き定まりて不帰の客
清明の橋を戻りぬ明けの鐘
青きふむ手塩にかけし孫と踏む
雨に待つ手持ち無沙汰の桜餅

「おむすびと小犬」川上澄男

アドバルーン降りて弥生の茜雲
スプリングセール地酒の化粧箱
コバルトの空へ身動く耕運機
春深し一刀彫の翁の目
電送の図面真昼の春の夢
春の泥子の駆け登る歩道橋
踏青の水辺飛翔の鳥の影
翻る蝶番犬のテリトリー
ダルマ生む工房鉢の松の花
笹子鳴く七色と散るコップの陽
春塵の野辺助手席の静電気
おむすびと小犬蕾のかたき花
ゆっくりと我が身の査定鳥雲に
測量の杭たんぽぽの絮の舞い
グライダー離陸トカゲは石の上
丸々とマカロニ春の白き喉
遠蛙遺跡を囲む木々の声
山笑う光を零す宅急便
名も知らぬ野川ひかりとなる雲雀
弄ぶペーパーナイフ春の雲
地価下落たどるマップの水温む
無利子の世ゆるりと流る花筏
南面の窓より窓へシャボン玉
木の洞の宿せる命春の雨
鳥帰る笛の音の乗る川の風
風光る土に優しく移植ごて
舟運の名残の宿場蕗の薹
後戻る蚯蚓雨のち晴れの風
春の星影絵の中の白い道
膨らんだ赤い風船乳母車

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「海と四季」山田邦彦

春の海見たくて電車走りけり
芽柳に雲ひとつづつ触れて行く
陰一分日向三分の梅匂う
途中下車できぬタンポポ飛び立てり
春愁や海には海のいろありて
忍冬の花の遮る波の音
葭切や忘れたように鳴き止めり
羽抜鶏いつも通りの声で鳴き
潮風に吹かれて居るや蝉の殻
空蝉は潮風色に染みており
風鈴の音の中より海の音
ガスの炎の音立てている朝の虹
向日葵や海へ向く日は海を見る
帰省子に訛りがもどる夕御飯
有料の終わりの道は夏の海
ふいご火のまだある町やいわし雲
鉄琴は秋碧空の音がする
下駄の緒の緩みほどよくカンナの朱
通園のバス待っている秋の蝶
花野ゆくいつもどこかに分岐点
秋の虹良く見えるまで眼鏡拭く
十月の椅子に落ち着く缶コーヒー
花いちもんめだーれもいない十三夜
人工の浜に砂山十三夜
看板の鮮魚跳ねたる秋入日
今朝の冬刻々変わるものの影
枯れ始まる灯台の灯の通るみち
返り花眠くなるような昼の月
浜道の記憶確かな冬の虹
十二月海傾いて波が来る
単色の記憶の真中春の梢

「生 き る」山下重子

故里を出てゆく友の春帽子
春動くダム湖の水の鎮まりに
神鈴に拍手ふたつ春嵐
石臼の世に捨てられし春愁い
岸辺より摘み来し春を大壺に
春雪や鳴門海境暮色濃し
今日生きし証は何ぞ春夕べ
川風と菜の花対話土手の昼
駅前の陶狸の親子おぼろ月
花菜風古稀の心音たしかなる
梅匂う塀の内よりわらべ唄
野良猫の声から昏れる木の芽時
啓蟄や水神祀る峯社
首すじの曲りにくくて花疲れ
娘の街は坂道ばかり風光る
晩学の心の友や月の客
神苑の奥に声あり岩清水
人も湯も温し霧湧く湯布の宿
稲滓火の幼き記憶亡母が居る
再会の四国三郎夕時雨
冬波に磨かれ浜の石まろし
初句会傘寿の友を範として
石仏や水仙郷の風旨し
列島に裏表あり大枯野
寒鴉声捨ててゆく河川敷
二ン月の稜線傾ぎ送電塔
寄り合いし竹の百幹冬銀河
寒晴れや雲ゆっくりと峯跨ぐ
知らぬ世の奈落の蓋かも枯蓮
野の窪に光と影や春隣

「地震多き国」梅木俊平

雪折れの音に目が覚め木霊起つ
雪国の銀河ざくざく踏みゆけり
神代から風花手足のなき青年
琴線に氷柱に月のひとり言
キリストの首大根の首青し
時止まりおり銀漢に滝凍る
除雪車のあまたもぐら叩きのもぐら
ジョギングの肺の中まで雪解光
薄氷に近づいてくる巫女の足袋
飯炊けし匂いが二階まで立春
とびっきり碧い二月の魚の骨
あわせ酢の飯の香つんと二月の陽
嬰児笑うこえ春分の日の瀬音
白梅のいっぽんは少年に澄む
白梅満開神父の手に指輪
山ざくら嬰児抱きたくなる日昏れ
さくら満開体内に魚泳ぐ
朧夜の指しそこねたる飛車の貌
魚跳ねし音宙にある朧の夜
病室の下がすぐ海のどかなり
鐘の音の鐘をはなれて春ゆうべ
春眠のかぐや姫どの竹の中
桃の花埴輪ぽあんと口開けて
自由自在に犬を走らす桃の昼
釣堀の子が釣りそこねたる春光
春愁の泣き砂黙するまま足跡
しゃぼん玉来世もまたこの空の色
沈丁花僧衣月夜の風に揺れ
地震多き国に生まれて蝌蚪群るる
ババ抜きの一枚たりない四月馬鹿

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「尻 尾」村田珠子

鈍色の秋潮髪の毛重くなる
立冬の靴跡深く潮に向く
小鳥来て古美術店に木の引き戸
紙袋ぶつかり合ってゆく師走
人の訃や恋猫出たり入ったり
初蝶やトラック出口につき注意
つくしんぼ話せば長くなる話
春の地震猫の尻尾の知らんぷり
うかうかと寝過ごして春のどか雪
よじり出す言葉秋刀魚が太りきる
啓蟄や胴長の犬買われゆく
二人から家族菜の花辛子和え
梅三分展示農家に鶏走る
めくっては戻して春の通販誌
初すみれ猿は揃って学者面
如月の猫の尻尾が落ち着かぬ
桃色の和菓子で決まる春の膳
大あくび台風それた日曜日
花渋滞牛の尾高く弧を描く
奇蹄目偶蹄目いてしゃぼん玉
かくしゃくととは言い切れず春の雲
遺伝子が決める鼻型花粉症
花れもん頭声発声微調整
犬ふぐり午後の空気が重くなる
朝刊の些事も大事も春めけり
芹なずな思考回路が深呼吸
花筏ゆらりと割って鯉の鬱
聞き役になれずぶらんこ押してやる
震度三ゆるりほどける蝌蚪の水
福祉課に手話通訳者チューリップ

「姉の指尺」今野 等

涛の奥そのまた奥に海苔掻き女
リストラや子の丸き背に春の雪
石臼の母の癖消す春の雪
トランプのハートうたた寝春炬燵
黄水仙快速電車通過駅
健やかに姉の指尺雛飾る
地下街の日替りランチ桃造花
桃の花老人棟への遊歩道
空想の囲みの中を探梅す
笑ってるエコーの胎児梅開く
ホワイトデーとは弁慶の泣きどころ
生き伸びて振り出しへ戻り山辛夷
さくら餅男も女もない世紀
漁火やルームカードに桜の名
山ざくらふと消えかゝる里訛り
さくらどきカルチャー教室がらんどう
いざかいやバックミラーの八重桜
銀行の監視カメラも花疲れ
フラミンゴ疲れはじめた風車
陽炎へデビューしたての乳母車
タイピンへ羽化したばかりの蝶止まる
不審者のように猫行く聖五月
脈拍や休むともなく蝸牛
はみ出すは晩生のわらび停車駅
蜜採りの蜂の国から逃亡者
稲びかり五体の窪に悪玉菌
はらからの鴨が二・三羽モネの池
白鳥に会ったその夜の万歩計
虎落笛褒めことばにも傷ついて
寒天やひと日の旅にも舌下錠

「独り芝居」八木邦夫

土筆ほつほつ老眼鏡の度が合わぬ
黒猫の逃げる構えや蕗の薹
如月や文楽人形肩で泣く
春寒し竹竿売りの間延び声
あたたかやホルン鳴り出す二楽章
暖かき雨の匂いや女身仏
春宵の値缶ビール一本
うららかや赤子あやしてふと悲し
抱いた子のそっくりかえり柳の芽
リハビリという暇つぶし春の雷
恋終わる予感や花の咲き満ちて
諦めるまでの手続き恋の猫
しおしおと恋猫信号黄点滅
蒼空の光集めて梅一輪
桃咲いて搾乳の牛無表情
台東区青テント村黄水仙
三界に家無し花見酒一合
セールマンの遺産竹垣と犬ふぐり
降り返る過去より長き春の昼
仏頭に烏群れいて柿若葉
克明に襞を描いて山装う
黄落や夕陽に祷る馬の群
鳳仙花自虐の言葉弾き出す
歳末のキャベツ畑を轢き潰す
雪吊りの緩みまだまだ倦怠期
身震いて孟宗雪を脱ぎ落とす
寒卵吸って何にもすることなし
待ち人の大根洗い来し手なり
黒猫の遠き眼をして日脚伸ぶ
餌のときも白鳥すでに上の空

「く び れ」田中朋子

月ふたつ並べて我が名新教師
ジョーカーが行きつ戻りつ春の風邪
居酒屋にどこかの校歌春の宵
花疲れして二枚目の不在票
教会の扉が開く木の芽風
頬にキスジャングルジムに止まる蝶
塗り変えた壁画に鴎春近し
始発待つように受験の子が並ぶ
如月をジグザグに抜け救急車
教頭は直立不動桜咲く
素肌重ねし花屑が薄汚る
身の内に何かが足りず散る桜
しゃぼん玉飛ばし損ねた額の中
菜種梅雨夜間診察始まりぬ
花吹雪有料道路開通す
競輪の出目数桜北上す
春陽差し込んで耳鼻科の軋む椅子
脱帽の球児等並ぶ春の泥
踏み込んだ車輪の速さ風光る
花に雨余白のままの住所録
さんざんに弄られレタス異動なし
生きがいをみつけられずにしゃぼん玉
石膏のくびれ鰔は蛇行せり
花粉飛ぶ削り落とした絵の具滓
遠ざかる暴走バイク花明り
春眠のまだ覚めきれぬ指遊び
着信を告げるメロディー春の星
春昼や妊婦のあくび立て続け
書き取りのはみ出している春があり
花の冷え途中下車して愛されず

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「四季身辺」早坂澄子

天も地も手品師の日や初雀
冬麗にうれしそうなり救急車
雪折れや薄紙めいた日が満ちて
腰低う生きて賜る寒卵
自堕落にぶっきら棒にわが家の雪
雪鳥や死ねば進んで掌にも載る
充分に寝て思いどおりの雪
もの干せば風邪に張りあり雪山巓
梅見頃もらい手のない父がいて
享保雛見ているわたしは棒っ切れ
さくらただ揺り抱くなり小さき墓
パリほどに遠い薔薇園入院す
母の日は羽衣が欲し翼欲し
軍艦がくる草むらの青大将
曇り日の地蔵半睡茄子の花
水あれば影風あれば青薄
入道雲人間学の風呂洗う
夏ごろも職印ことに捨てられず
夏風邪や和綴じの論語どこにある
一に雲二に雲体じゅう新秋
百日紅地球大好きのまま逝けり
撥橋の撥ね終わりけり月の下
来客へ多弁なりしか秋しぐれ
霧の中耳低うして野兎いるか
粘り撥ね朝寒の川はあるなり
謝辞のような宇宙は紅葉黄葉して
木の葉降れ降れ絆創膏になれ
白山茶花木偶坊と思っています
就中蒼き冬木を夫にす
水鳥やもう聞こえない越天楽

「春」  早川 きく

約束の梅咲き出して姉居ない
花菜風わたし逸れてしまいけり
黄砂降り襟に新たな泣きぼくろ
春昼を毀されている旧き家
昼寝覚む音一つ無き家の中
げんげ田に探すや吾てふ忘れもの
夜桜や天より鬼の降る気配
春の昼知らない声の留守電に
天国に桜咲いたとEメール
春雲にキリンの首の突き刺さる
春呼ぶや象高々と鼻をあげ
翁草話相手を待っている
桜ひらひらお壕の淵をサラリーマン
浮き島は空母のかたち水仙咲く
花の下待っても待っても母来ない
春の雪わたしに触れて消えにけり
つちふるや足に魚の目ある不安
遺句集をひらけば蝶の現われり
標本に耳をよせれば蝶の息
朧夜や履かない靴を並べては
パリ祭や棚に忘れし帽ひとつ
蝸牛カタツムリして母の忌や
秋麗やローマの鐘の身まわりに
パリ黄葉日本人らは袋提げ
蝿湧きてとぶ図書館の静寂に
名刹に萩の乱れを見てしまう
人形に菊括られて城の展
店先に猫畏まる良夜かな
秋彼岸向えの墓に酒タバコ
有明月五十一階にて訣る

「平凡に春」浦川哲子

初ざくら押して句帖の使い初め
桜前線来たり爪に除光液
骨董の酒器の沈黙桜の芽
三四郎池巡りて会えり初桜
初花や二羽の鵯遊ばせて
花筵昔話の輪に入る
濃茶のむ桜の席の客として
花の中おとの記憶を手繰り寄せ
モノクロの旧街道や花盛り
夕桜竹久夢二の小風呂敷
花冷えのあられ鉄瓶ないている
花の雨言葉に体温あるという
花月夜鏡の中の予言者ら
晩学という暗がりや花の雲
鷹好む老画家春の鼻眼鏡
「坊ちゃん」も古典となりて猫の恋
マクベスの野望を暴く春の雷
ほろ酔いて埼玉新都心朧
履き馴れし靴磨きあげ卒業す
花どきの毛穴欲しがる化粧水
扁平な身を横たえて紙雛
春の風邪蓮っ葉なこと言ってみる
春陰や両手で握手して別る
一滴の涙をいれて春の川
桜狩上野浅草九段下
花疲れと言いつつ切らぬ電話かな
岐れ道ならばこぼれる花の道
あねいもうと桜吹雪に紛れたり
旬日のいのちを乗せて花筏
人知れず散の花沈め四耳の壺

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