お琴のおもいで

  私が始めてお琴の音を聞いたのは、戦後何年くらい経った頃でしょう。

懐かしい風景の中で・・・・
からたちの生垣をめぐらせた旧家の離れから、時々、田舎には珍しく優雅な琴の音が、聞こえてきました。
学校への行き帰り、美しい音色に魅せられた私は、心待ちしながら、からたちの垣根にたたずみました。 どんな人が弾いているのかしら・・・
 人の噂では、東京から親戚をたよって疎開してきたお琴の先生だそうな。でも誰もその人の姿を見たことはない。   きっと美しい若い女性に違いない。 私はそう思いました。
ところが一年くらい経った頃、ぱたり と音が途絶えてしまいました。・・・病気かしら、それとも東京へ帰ってしまったのだろうか? わからないまま時は流れて、  からたちの実がなる頃、前の道を通りながら淋しく思ったものでした。

以来、何かの折々に琴の音はよみがえり <琴を習いたい> 願望が除々に膨らんできました。そして、ようやくその願がかなったのは、もはや中年になってからのことでした。
 
初めて加藤先生のお教室に入門させて頂くことになりました。 緊張のあまり、指先が震えたり、爪を逆にはめたりしたのをきのうの事のように思い出します。   調弦に始まり、小曲集、一段一段と上がっていくのが、とても嬉しくて。何をしてゝも・・・テントーン  テテントーン と琴調子が耳からはなれなかった。夢中でした。   
 どんなに楽しかったことか。 (そりゃあ苦労もありました、なにしろ中年から始めたんですから、でも努力努力、好きな道ですから。)  その内、年月をへるごとに、晴れがましい演奏会にも度々出演できるようになり、「合奏団」の一員にもなることができました。
 こうして今、ささやかな子供の頃の夢を実現できたことに、喜びと誇りを感じています。
 そして、厳しく、優しくご指導いをいただいた加藤先生や、理解をしてくれた家族に深く感謝をしております。
 有難うございました。

                  生田流 筝曲演奏会
      
              立筝台での合奏

          加藤先生古希記念演奏会