カツ丼は丼界の「大江戸線」なのだ。


 今日は朝から新宿副都心の新宿三井ビル53階、
埼玉新都心・所沢方面完全一望の打合せ室へ。
ここでは一連の仕事の総締めくくり。

 新宿へはJR中央線で1本、しかも9分で到着なのを、
行きも帰りもメトロカードでスルル〜ンなのだ。

 最寄りの駅から丸の内線という、
東京の地下を西から東をグルゥッと回る長い線があり、
それに乗っていくと目的のビルよりトチ歩くことに。

 で、昨年開業した「大江戸線」で乗り換えると、
新宿三井ビルの真下に出られ、歩かなくていいことを発見。

 ではでは、イッチョ、初物に乗ってみるかとスルル〜ン。

 乗り換え駅を出て、大江戸線への連絡は、
ウワサには聞いていたけど、深い!!長い!!恐い!!

 なんなんだあの深さは、
地下の連絡通路から延びるエスカレーターは、
ゆうにビルの5階分はあり、もう目がくらむ。くらくら。
一番下に立って見上げると、霞んで上の人の見えない。

 往復して学習したこと。

 昇りの時は上を見ない。
これは階段を駈け昇る気力が失せてしまうから。
事実、営業マン風の人がタタタッと駈けていったが、
8合目辺りで、肩で息をしながら無念そうに見上げていた。

 下りの時は下を見ない。
遥か下界を見ていると、自然に体がフワと前のめりになる。
しっかりと手すりを握っていないと、自分を見失いそう。

 ま、それくらい深いところを走っているワケですね。
それは、周囲に張りめぐらせたほかの地下鉄や
ライフラインのパイプを避けて掘っていく。
先発の地下網を避け、自然に下に下にとなったらしい。

 その深いところを走る電車は、
これまたウワサに聞いていた、通常よりひと回り小さい。
ホームに入ってきた電車を見て「あ、カワイイ」と
まるで女子校生みたいなことを口走ったくらいだ。

 実際乗ってみると、かなり無理があることがわかった。
網棚のパイプが、ぼくの目線に水平にあり、
中刷りは1/3を天井に折り曲げてある。
通路も2人立てるところが、一人でイッパイイッパイ。

 ま、そんな電車を乗継いで、新宿での仕事を終えて、
仕事場に帰ってきたのが午後1時過ぎ。

 さあ、ヒルメシはどうすべ、と思っているところに、
マキヲから留守中の電話の内容を聞くと、
隣街の高円寺に行かねばならない用事が勃発。

 仕方なく自転車に飛び乗ってチャリの人に。



 用事を済ませると、もうすでに2時近い。
ランチタイムは諦めねば、の時間に突入する。
そうなると、目指す店も「準備中」の札で追い返される。
それではと、その心配のない店を目指した。

 高円寺駅の南側から延びる
長い商店街の真ん中あたり、中華料理の「登龍園」。

 外は何の変哲もない古ぼけた店。
中に入ると、外観に負けないくらい古ぼけている。
デコラのテーブルにビニール張りのパイプ椅子。
壁もデコラ張りで、名前入の四角い鏡。

 全体的に、田舎の駅前にある食堂を思い起こす。

 物は古い作りなのだが、キチンと整頓されて清潔で、
出されたほうじ茶をすすりながら(水ではない)、
新聞などを読んでいると不思議と落ち着く、
タイムスリップした気分になる。
常連さんも老人がとても多いしね。

 では何故、この店を選んだか。
答えはひとつ。トビキリ安い、とにかく安いのだ。

 ラーメン330円、チャーハン400円、
五目ソバ450円、ワンタン麺430円と
500円を越すことに罪悪感を感じているみたい。

 とはいえ、味はチャンとしているし、
分量も他店のそれとそんなに遜色がない。



 で、ここに何度か通って見つけたメニューが、
カツ丼440円。これ、オススメですよ。


 いつものように新聞片手に、
テレビの見える席にデンと座って、カツ丼を注文する。

 ほどなくしてから、ジャアッとカツを揚げるイイ音が、
厨房から聞こえてくる。(うん、制作にかかったな)
続いて、カラカラと玉子を溶く音。(激しくやってね)
ほどなくして、サク、サクとカツを切る音。(そろそろか)

 で、しばらくしてから、きました、アルミの盆にのって。

 出汁と仲良く絡まったトキ玉、
その上にパラパラとのったグリーンピースが眩しい。
その下にうっすらと見えるキツネ色の豚カツ。

 そして、昔ながらの瀬戸物の丼がウレシイ。
あの、フタの付いた「由緒正しい丼」ですね。

 ぼくは最近はやりの、漆器のサカズキ型の丼は嫌いだ。
確かに表面積は広くなって、見栄えはいいし、
具の部分が多くなるが、とにかく食べにくい。

 がしかし、ハシでご飯をすくい上げようとしても、
深さがないので、少ししかすくえないし、
勢い、器に口をつけてズズゥとかき込みそうになって
だらしない食べ方を余儀無くされるからだ。

 挙句は「さじ」などを付ける店が出てくる有り様。
だんだん日本人はハシの使えない、
子供みたいになってしまうのかと憂鬱になるほど。

 しかしここは、手にずっしりとくる「由緒正しい丼」。
いいですねぇ、カツ丼はやっぱり「ずっしり」も味のうち。

 で、まずカツをほじり出してパクり。
なにしろ、中華料理店or食堂なので、
「豚のショウガ焼き」の豚肉が、気を抜いている間に
コロモを付けられて揚げられてしまいました、ワタシ。
という代物だが、なにしろ揚げたて。

 コロモのサクサク部分と甘辛い出汁が絡まって、
程よい「しなしな感」があって、ホッホッと旨い。
この出汁のしみ具合が大切なんですよね、カツ丼は。

 続いて玉ねぎとトキ玉地帯をホジホジ。
これもやっぱり、出汁のしみ具合がイノチ。
出汁がムラになっていたり、多過ぎたりすると、
なにかカツ丼とは別の物になり、旨さが半減する。
その点ここのは、全体に薄く絡まっていて具合がイイ。

 一口カツをかじって、別のところにのせ、
ご飯をすくい上げては、ハウハウと食べ進む。
そうすると、ご飯の方が少なくなっていく。
その丼の中を見て「!!」となりましたね。

 そうなのだ、カツ丼は丼界の「大江戸線」なのだ。
うえに先発隊を残しておいて、ズンズン掘りススム。

 そうか、オレは今日乗ってきたばかりなのに、
胃の中にも開通させてしまったのか、 と
壁に貼った紙のメニュー「カツ丼440円」を
しみじみ見上げて、お茶をすすった。



 ではでは、ゴッツアンでぇーす。

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