「故郷の光の中へ」              平成14年8.10  山根光正
   NHK人間ドキュメント「故郷の光の中へ」を見て感動した。桜井哲夫さんはハンセン病に罹り17歳の時に故郷を追い出された。以後 60年間、療養所での生活を余儀なくされる。去年里帰りしたのだが、帰郷前後や故郷での温かい交流を描いたのが「故郷の」だった。幼 なじみで現在町長の中野賢治さんに再会する。「ケンジ、ケンジと呼び捨てにしてごめんな」と桜井さんが言うと、「なにを言っているん だ。お互いは『ケヤグ(友達のこと)』じゃないか」と握手する中野さん。岩木山のみえる実家に帰る。出発の日「堪忍してちょうだいな」 と泣いて見送った両親も既にいない。葬式に出席できなかったことを詫びる桜井さん。
 番組を見ながら感心したこと。(1)桜井老人を陰になり日向になりして励ます若い女性がいる。金正美(キムチュンミ)さんで、金さんは 桜井さんに全く偏見をもっていない。(2)桜井さんの心が仏様のように澄んでいるのも驚嘆だ。私が桜井さんの立場なら、社会を恨んで人間 を恨んで、となると思う。桜井さんにはそのような心は微塵もない。それどころか人間に感謝し社会に感謝し病気にまで「おじぎ」をされて いる。どのようにすればこのような清水のような心境になれるのだろう。
 金さんの優しい心、桜井さんの達観した心に触れるにつれ、この作品が放送文化基金賞を受賞したのは当然であると思うと同時に、素 晴らしい番組を提供したスタッフにも感謝したい気持ちで一杯になった。