「男の”カン”」         平成13年2.10(平成12.11.23記す) 山根光正
   「勘」とは何ぞや。広辞苑に「B直感。第6感」等とある。それでは「第6感」 とは何ぞや。「五官のほかにあるとされる感覚で、鋭く物事の本質をつかむ心の はたらき」と出ている。”勘”について、市井に生きる方と国の指導者との二つの 例で考えてみたい。
 一つ目はすし屋のご主人のこと。文藝春秋12月号に女優の高峰秀子さんが「店仕舞」の 題で感動的なエッセイを寄せておられる。銀座に「きよ田」なるすし屋があったらしい。 気配り抜群の店で、定員も「こちらから話しかけない限りほとんど音声を発しない」。店の 主人、新津さんが素晴らしい。「掌はいつもピンク色に輝いて両手は『すしを握るために ある』という神経がこちらにもピリピリと伝わってくる」。
 新津さんは若い頃小林秀雄と今日出海に「すしはカンだよ」と教えられた。この言葉を 金科玉条にして「私はカンだけでやっているようなものです」とおっしゃる。
 閉店通知の封書も「長い間お世話になりました。ありがとうございました」との簡潔な 文章だけ。見事な引き際だったと高峰さんは感服される。新津さんの生き様にこちら(山根) まで感動をおぼえた。
  二つ目の”カン”はご存知自民党の加藤元幹事長。どのような第6感がはたらいたのか 知らないが、11月10日のテレビで「国民の75%が反対している森内閣は問題。野党が 内閣不信任決議案を出したら反対できない」との爆弾発言をした。その後、血湧き肉躍る ような内容が次々と飛び出した。その結果、国民の熱狂的な支持を得た。曰く「国民と共に 自民党の密室政治をどうにかしたい」。曰く「多くの国民は司馬遼太郎の小説のように、”この 国”の行く末を憂えている。そのような国民と共に頑張りたい」と。
 水も流れが止まると澱むように、国政も瞬時も停滞は許されない。加藤さんの言動に 自民党の密室政治は変わるかも知れないと期待した。
 衆院本会議が近づくにつれ、主流派の切り崩しは気が気でなかった。加藤さん頑張って、 そんな国民の期待の中で11月20日夜9時に本会議は開会された。
 【同志は誰も出席していない。ただ一人賛成のために出席した加藤さん。自民党からは 「裏切り者」の罵声を浴びせられ、野党からはリーダーシップのなさを揶揄される加藤さん。 思わず悔し涙が頬を伝わる。でも加藤さん、あなたの態度は立派だった。あなたの行動は 政界に一石を投じるものだった。国民の一人として、あなたの行動に人間の偉大さと真の 勇気がどういうものであるかを教えられた。ありがとう、加藤さん・・・】とこういきたかった。
 現実は(私の想像とは)全く違ってしまった。
 加藤さんのカンはどこで狂ってしまったのか。10日間の行動は全体何だったのだろう。 冒頭の新津さんと国民の選良たる加藤さんとの違いすぎるカン。政治家は信用できない。との 不信感だけが残ってしまった。その意味で加藤代議士が国民を裏切った行為は許せない。