<見つめるは、未来>

ここまでする必要はないのかもしれないけど
将来本当に必要としたときに機能してくれないと困るから。

不用とも思える抗がん剤。
これは美月自ら希望したものだという。
名前を聞けば誰もが副作用の恐ろしさを想像できるほどの治療。
敢えてその苦痛に踏みこむ時、言っていた言葉だ。

もし強い人間がどんな人間かの定義が、
絶対に自分の弱いところを見せない、
そして他の弱い部分を多分に受け入れる事であるならば
彼女は強い人間では決してない。
いつも他を受け入れるわけではなく、
感情の起伏もあるし、当然のように
自分の弱さに負けそうになることもある。

しかし、その定義が、何事もまっすぐに見つめられる事
受け入れ、行動する事
その速やかさであるなら
彼女は年齢以上の強さをもち合わせている。
間違いなく強い部類の人間だ。
自分に対しては厳しかった。
一時泣こうが、必ず逃げることなく戻ってくる。
そして、自分が何事であっても、枷になることを極端に恐れていた。

治療は最小限のメンバーしか知らず
並行して行われた仕事も、特に病人扱いを受ける事はなかった。
今にして思えば
あまりにぞんざいな言動、無神経な言葉を吐く
周囲に振り回される事なく専念できたのは
既に彼女のビジョンは未来に向けられていたからだろう。
好きなように言えば良い。
完全に切り離した事により
精神動揺は極端に少なかったようにおもう。


倒れれば、好き勝手言われることを覚悟の上で。
興味本意に探られる事を承知の上で。

極秘裏に、徹底して体内の悪魔を追い払うべく治療に望んだのだ。