二十歳のころに・・・・。

 

花 薫

 

夏風が私のところに届いた 二度目の使者は
しかしそれは息も絶えだえだった もう風ではなかった
私の頬にくちづけするや まったく栗の花薫りであった
たちまち消えてしまった 私自身が栗の茂みに流れ込んで
  そこで揺れているようであった
二度目の使者がくるまでには  
かなりの時間がかかった あまりのその薫りに
私はそれを待ち焦がれていた 私は頭痛がした
  私は泣き顔をして顔を伏せた
二度目の使者は 私は恥じらいを知った
栗の花薫りを含んでいた と言うのもその薫りは
いや一度目の使者も含んでいたのかもしれない   私がいつも夢幻にかぐあの香りであった
私は気付かなかったのだ 私が十三の時にはじめて知った
  あの恋しい
  私自身の
  私だけの
  あの薫りであったからだ

 

(1968年6月)