二十歳のころに・・・・。 

 

 

   豆 雑 魚

   母は豆雑魚を作れり
   豆炭でぐらぐらと大豆を煮れり
   幾時も煮てから醤油と砂糖を入れり
   大豆はぐらぐら揺れて
   醤油と砂糖はあまねく混ざれり
 
       台所の片隅のお鍋の中で
       朝から雑魚が動いてありぬ
       水の少ないお鍋の中で親指ほどの雑魚たちが
       いれかわりたちかわり背を見せり
       母は雑魚を籠ですくいて
       大豆の煮えたる大きなお鍋に入れり
       雑魚は揃いて跳ねまわり
       汁がお鍋のまわりに飛び散れり
       雑魚は黒い目を見せり
       皆ひとつずつ見せり
       母はすまして蓋をせり
  

     凍りし大豆の中に

       白き目をせし雑魚たちが

         膳に出さるは明日なるや

(1967年12月)