豆 雑 魚
母は豆雑魚を作れり 豆炭でぐらぐらと大豆を煮れり 幾時も煮てから醤油と砂糖を入れり 大豆はぐらぐら揺れて 醤油と砂糖はあまねく混ざれり 台所の片隅のお鍋の中で 朝から雑魚が動いてありぬ 水の少ないお鍋の中で親指ほどの雑魚たちが いれかわりたちかわり背を見せり 母は雑魚を籠ですくいて 大豆の煮えたる大きなお鍋に入れり 雑魚は揃いて跳ねまわり 汁がお鍋のまわりに飛び散れり 雑魚は黒い目を見せり 皆ひとつずつ見せり 母はすまして蓋をせり 凍りし大豆の中に
白き目をせし雑魚たちが
膳に出さるは明日なるや
(1967年12月)