蕾
その時の気持ったら あの人と並んで座れたらどんなでしょうって 他の人はほとんど出ていったわ おわかりになって? わたしは考えるの あの人は立ちあがらしったわ でも そしてズボンを整してらしったわ お話なんか一度もしないけど わたしはやっぱり離れているほうが好きよ すぐだわ! わたしはいつも眺めていたの だって もうすぐよ! いつまで眺めていても気付かれないんですもの 面と向かっていてやろう わたしと同じ部屋に わたしはそう思ったの あの人がいるわ! けれど でもわたしったら それを知っただけでわたしったら 終わりのベルがなって帰る時間がくると あの人がこっちをむかれる前に顔を伏せてしまったの とってもうれしかったわ わたしはいつも悲しくってやりきれなくなったわ 足音が近づいてきたわ 百人以上もいる部屋の中でも わたしは本当に眺めていただけなんですもの ずんずんずんずん わたしは ああ、足音が! あの人がいれば必ずみつけたわ 今日は寒かったけど そうなの とっても晴れていて美しい日だったわ 足音がわたしの横まで来てしまっていたの わたしがこっちの端っこで あの人はずっと前のほうにいらしったわ わたしは思い切って目だけを上げたわ あの人はあっちの端っこでも そして終わりのベルがなったの そしたら わたしはいつも、そっと見ていたの わたしは無理にグズグズしていたの 振りむいてから今まで どこにもいらっしゃらなくて、ため息をついていると あの人はわたしと同じ列にいらしったわ あの人ったらわたしのことを見てらしったのね 前にあの人がいらしったこともあったわ だから 目が合うと急にそらしてしまわれたの わたしのすぐ前なのよ わたしのすぐ横を通らなければ わたしはもう、顔を真っ赤にしたわ どうしても帰れないの その時の気持ったら おわかりになって? (1968年12月)