ESPAS 

     七

 静かな公園に聖司は一人でいた、何をするでもなくベンチに腰掛け、そこにいた。

 あの後、聖司と藍は男を連行しテレパスの能力によって記憶を一部消去した。死んでいた女性はテレポーターだった、死んでしまったものは仕方ないので組織が何か適当な事を引っ張ってその死を普通の死に変えるだろう。

 秀明や智達は六人で打ち倒した数人の男たちをテレポートで一旦支部に連れ帰り、全員の記憶に変更を加えた。全員が何かしらの容疑で警察に引き渡され、警察も本人たちも知らない所に聖司達の仕事は移動した。そして一晩明けて朝刊が謎の銃撃事件を取り上げている時、支部では全員が別の仕事に付いているはずだが聖司は出勤せずに公園にいた、ただのサボりだ。

 先程、何度も携帯が着メロを鳴らしていたが全て無視した。今掛かって来ないのは諦めたからかそれとも相棒が探しに出たのか。ぽけ〜と空を眺めていると雲が動いているのに気付く。何も無い訳では無い、鳥が飛んでいるし飛行機も見える、雲もある、それでも空は綺麗だった。

「こら!」

 頭部に強い衝撃、殴られた。振り返ると藍が息を切らして立っている。

「電話鳴ったよね!」

「鳴ったから、怒鳴るなよ」

 聖司が言うと藍が勢いよく隣りに腰掛けた。

「何で取らないのよ」

「別に」

 気の無い返事をする。

「人が死んだから、仕事をやめたい?」

「別に」

 さらに気のない返事を重ねる。

「なら、仕事に行こう」

「そうだな」

 聖司は立ち上がる。脇に手を滑らせると金属の硬い感触があった、愛銃はそこにある。そして相棒は隣りにいる。

「それで、新しい仕事は――」

 藍が話し始める。

 圧倒的大多数の人間が知らない仕事をこなす、そして人の死を簡単に隠蔽する。誰かを騙す。聖司はこの事に嫌悪感を抱いていた、それはいつまで経っても変わらないだろうしこの仕事も続けるだろう。この嫌な気分だけはなくしたくないと聖司は思った。

「――――なんだけど、聞いてる?」

「いや、聞いていない」

 脇腹に肘が入った、思ったより重く痛かった。

                                             (終わり)

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