死には死を

 

 

 

 

 

西暦20**年

某国内某高速道路。二台の高級車が、物凄い勢いで通り過ぎていく。

「もっとスピード出んのか!!」

後部座席から、一人の男が運転手に怒鳴り散らす。

「無理です!!もうこれ以上出ません!!!」

スピードはゆうに200kmを超えていた。遥か後ろから銃声が聞こえ、同時に男に無線が入った。

“だめです!向こうの数が多すぎます!抵抗していますがとて……”

突然の爆発音とともに、通信は途切れた。振り向くと、後ろについてきていた車が、爆炎を上げながら激しく回転し、子供に振り回されるミニカーの如く防音壁に衝突した。

「くそっ!!」

男は無線機をたたきつけた。

男は開き直った様子で、懐から小瓶を取り出し、

「ふふふふ……誰にもわしの研究を渡さん!!!」

と、小瓶の中の液体を飲み干した。

「ふふふふふ……今までどいつもこいつもわしの研究の邪魔ばかりしていたが、今度こそは、誰にも渡さぬ!」

男の顔色は見る見る変化していき、

「誰にも………だれ…に…も……わた………さ…ん………グハァ。」

男は血の泡を吹きながら、首をもたげた。

「はっ…博士!!」

運転手は、車を止め後部座席に座っていた博士に近づいた。変わり果てた博士の姿に、運転手は言葉を失った。博士は、体中の筋肉がなくなっており、骨はむき出しで、まるで人体模型の骸骨に皮膚をかぶせただけのような格好をしていた。

「ひっ……ひぃぃぃぃ。」

運転手はあまりの恐ろしさに、逃げ出した。が、銃声とともに運転手は倒れた。

「ひいぃっ。助けてくれ…。」

しかし、銃声二発とともに男は息絶えた。

「へへへっ。手が滑っちまってなぁ。ごめんよォ。」

数台の車から、次々と武装した男が降りてきた。

「おい。無闇に打つな。サンプルにでも当たったらどうすんだ。」

「大丈夫だって。こんなやつが博士に見えるかァ?」

一人の男が、銃口の先で死体をつつきながら言った。そのとき、

「ボスっ!来て下さい!!」

「なんだ。どうしたんだ。」

「怪物が……怪物が車から……。」

「なんだと!?」

男が追っていた車に近づくと、無残な死体が二体ほど転がっていた。一人は、腹を切り裂かれ内蔵が飛び出しており、もう一人は、首がなかった。

向こうで何かを喰らう不気味な音が聞こえた。

「誰だ!!」

男が叫んだ瞬間、奇声を発しながら怪物が飛び掛ってきた。男はとっさに持っていた拳銃で怪物に発砲した。弾は怪物の腹に当たり、さらに奇声を発しのたうち回っていた。

「何なんだこいつは!?」

男が見ている怪物は、まさに怪物という言葉が当てはまる姿をしていた。体の色は茶褐色で、腕や足の筋肉は異常に発達し、両手には楽に首を刈れるような鋭い爪が生えていた。そして、その爪には血が滴り落ちていた。

「こいつは…博士の研究室で見たサンプル……………。」

怪物を見た男の部下たちは一斉に怪物に向かって発砲した。だが怪物は、身をひるがえし、

「ダレニモ…ダレニモワタサヌゾォォ……。」

と言葉を発した後、高速道路から飛び降りた。

「あひゃひゃひゃ。自分から飛び降りたぞぉ。」

「………あいつならここから飛び降りても平気だろうな…。」

「んぁ?なんか言ったか?」

「いや。なんでもない。」

男はニヤリと笑うと、車に戻っていった。