死には死を

「ちっくしょう!全然しにゃあしねぇ!」

車の攻撃に合わせて、武装ヘリまでロケット弾を飛ばしてきた。

「うわぁ!カイがいりゃぁ、こんな群集楽に蹴散らせれるのになぁ…。ええぃ!こうなりゃぁ…」

加藤は、ハンドルを一気に引くとトランクが開いて、手榴弾が転がりだした。追っていた車は慌てて左右に散ったが間に合わず、すざましい爆音とともに宙に舞い、道路にたたきつけられた。

「よっしゃぁ!ざまぁみやがれ!俺が本気を出せばどうなるか思い知ったか!」

 

 

都庁前広場。

“「サンプルは、第一防衛線を突破!現在第二防衛線にて交戦中!依然として歩く速度を緩めません!応援を要求します!”

「カイ様!第一防衛線を突破されました!第二防衛部隊が応援を要求しています!」

「まだ大丈夫だ!第二防衛部隊には装甲車を盾にして戦うように指示してくれ!」

「了解!」

「最終防衛部隊は、その辺に止めてある車を使って、盾を作るんだ!」

「はっ!」

「なんとしても怪物の息の根を止めるんだ!」

カイは装甲車から顔を出した。はるか遠くに無数の光が瞬いていた。が、急に慌しくなった。

「どうした?」

「第二防衛部隊からの通信です。」

兵から、ヘッドホンを借りると耳に当てた。

「カイだ。何があったんだ?」

“大変です!別の部隊が攻撃してきました!”

「なんだって!どこの部隊かわかるか!」

“まだ不明です!かなりの負傷者が出ています!応援を!”

「すまないが応援は出せない。後退しながら攻撃してくれ!」

“了解!”

「くそっ!とんでもない邪魔が入った!」

 

「あひゃひゃひゃ。いいぞぉ…。」

「ジェイ隊長!奇襲攻撃成功しました!」

「おおぉっし。そのまま殺っちまえぇ!」

「はっ!」

ジェイはニタニタしながら、銃を人差し指に入れてくるくると回し始めた。同時に電話が鳴ったため、銃を落としてしまった。

「誰だよぉ!」

「ルーツだ。状況を報告しろ。」

「報告なんてしなくたって、楽勝だぜぇ。いちいち電話なんかよこさなくてもいいのによぉ。」

「お前は何をしでかすかわからんからな。ちゃんと一定時間ごとに連絡しろ。」

「はいはい、わかったよぉ。」

ジェイは荒々しく電話を切った。その電話を放ると、落とした銃を素早く拾って、電話を打ち抜いた。

「へっへっへぇ。そのうちお前も狩ってやるからなぁ。待ってろよぉ、マッドォ。」

ジェイは立ち上がると、ふらふらと前線部隊に歩いていった。近づいてくるジェイに気づいた兵士が、それを止めようとした。

「隊長!危険です!早くもど…。」

兵士は眉間を撃たれて絶命した。

「うぜぇんだよ。俺に指図すんな。」

ジェイが、兵士を殺す光景を見たほかの兵士は、驚いて攻撃をやめてしまった。

「何見てんだよォ!さっさ殺っちまえよ!」

 

「今だ!撃てぇ!」

この一瞬の隙をついて、第二防衛部隊は総攻撃を仕掛けた。アンドスの兵が次々と倒れていく。しかしサンプルはまったく動じていなかった。

「こいつは不死身だ!あんだけ銃弾を受けてやがるのに死なねぇ!後退だ!急げ!本部にも連絡しろ!」

 

「第二防衛線に動きがあったようで!」

「どうなった!」

「相手の部隊はアンドス製薬の特殊部隊で、指揮官はジェイ・マールラーだということがわかりました。どうやら、あのサンプルを守るために派遣されたと思われます。」

「サンプルの動きは?」

「かなりの弾丸を受けているのにもかかわらず、都庁に向かって全身を続けている模様です。第二防衛部隊も、第三防衛部隊と合流するようです。」

「しょうがない。全部隊に伝達!サンプルおよびアンドス特殊部隊に総攻撃を仕掛ける!」

 

 

 

 

 

「現在の状況を報告してくれ。」

“マッドです。現在、一台の車を発見、追尾しています。激しく抵抗するため、現在武器での威圧を加えています。”

「わかった。」

ルーツはいすに深く腰掛け、大きくため息をついた。

「おっと…ジェイの報告を聞いていなかったな。」

体を起こし通信ボタンを押す。しかし応答しなかった。

「なんだ?」

ルーツは仕方なく、前線部隊につなごうとした。しばらくしてようやく兵士が出た。

「どうした!なぜすぐ応答しない!今の状況を報告しろ!」

“もうだめです…ジェイ隊長が、途中で狂って……兵士のほとんどが死にました…。”

「なんだとぉ!」

ルーツは机を激しくたたいた。

「そしてサンプルは!」

“今、知らない部隊と交戦しています…。まだ生きています…。”

「このくそ野朗!」

ルーツはマッドにつなぎかえた。

「マッド!緊急事態だ!ジェイのやつがしくじった!大至急都庁のほうへ向かってくれ!」

しかし聞こえてくるのは砂嵐の音だった。

「ちっくしょう!!」

ルーツは立ち上がり机を蹴飛ばした。それと同時にドアが開き、警官がなだれ込んできた。

「なんだ!お前たちは!」

「ルーツ・アンドス。殺人および、A級危険生物開発法の容疑で逮捕する!」

「なぜだ!わしがやったという証拠はないぞ!」

「証拠ならここにいる。」

警察官の群れの中から一人の男が出てきた。

「お…お前は…。」

「お久しぶりです。また会うとは思ってもいませんでしたよ。」

そこにたっていたのは、カイ・フランク・フィッシャーだった。

「なぜだ!お前は都庁にいたはずじゃ…。」

「なぜでしょう?それはあなたのサンプルに聞いてください。」

「まさかサンプルを!どうやって倒したんだ!」

「その口ぶりからすると、貴方が関与していたことは間違いないですね。」

「お・・・俺じゃないぞ俺はやってないぃ!」

ルーツは、その場に座り込んだ。警官が集まる。カイはふう、とため息をついた。

「よっ!お疲れさん!」

振り向くと加藤だった。

「加藤!よく無事だったな!」

「まぁな。ヘリの一機や二機、軽く落とせるぜ!しっかし、よく倒せたな。あんな怪物。」

「いや。俺たちは普通に突撃命令を出したんだ。だけど、攻撃をする前に死んじまったのさ。」

「えっ!なぜ死んだんだ?」

加藤は不思議そうな目でカイ見つめた。

「これは軍の企業秘密だ。」

「なんでだよ!いつから軍の情報になったんだよ!」

「俺は疲れたから帰る。また今度な…。」

「お、おい!ちょっとまてぇ!」

カイは、足早に社長室を後にした。

‘まったく…アンドス製薬会社もまともなのを作れよ……。出血多量で死んだなんて、間抜けで人に言えたもんじゃないぜ…。’

 

 

報告書  カイ・フランク・フィッシャー

 

今回の事件で、アンドス製薬会社の勢力は衰退するであろう。例のサンプルは、元々サンプル開発者の、Dr.バシックだったそうだ。あの研究のそう責任者でもあったらしいが、本社からの威圧により逃走。自分にサンプルを打ち込み、怪物化した。怪物化した後は、筋肉および脚力が人間の数倍にも発達し、凶暴化する。しかし逆に、脳細胞の急激な老化現象によって、本能でのみ行動するようになってしまう。そのため今回のケースは、打ち込んだ博士自身の恨みにより、ルーツ・アンドスに向かって移動、殺戮を繰り返したということになる。なお、怪物の撃退方法は、とにかく攻撃することにある。サンプルを何に打ち込んだかによって対策法は異なるが、人間だった場合大量出血させるのが、一番効果的と見ている。また、頭部および胸部の攻撃はサンプルになると急所ではなくなってしまうので、とにかく大怪我をさせることが重要である。

 

以上を報告とする。