少女




その少女は もう いない
この世の何処にも 彼女はいない

これ以上傷つくのが怖くて
ただ怖くて
小さくその身を丸めながら


差し出される手を
哀しい心の奥底で待っていた
その臆病な少女は もう いない


どこへ行ったのだろう 彼女は
あの空高く聳えるビルの屋上の
誰も座らぬ錆びたベンチから
か細いその手を大きく広げ
あの蒼に溶けてしまったか


それとも この頬を掠める麗らかな春の風に
淡い桜花のようなその身を委ねて
ひらひらと飛んでいるか


少女よ
わたしは君を忘れない
君がわたしを忘れても
わたしは君を忘れまい

桜舞う春の風
君の見えない白い手が わたしの頬に
ふわりと触れる

震える華奢な指先が わたしの頬を
さらりと撫でる






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