部長やさんからのご挨拶

   自分の家の玄関を出て行くということは、危険な仕事なんだよ。道に足を踏み入れたが最後、倒れないようにちゃんと立ってなければ、どこに流されて行くかわかったもんじゃない。この小道は外でもない、闇の森を通るその道なのだ。道の導くままにかまわず行けば、はなれ山だろうと、ほかのもっと遠い、もっと怖い所だろうと、お前を連れて行ってしまうその道なのだ。
   ―――老ホビットの警句。
J・R・R・トールキン『指輪物語』(瀬田貞二/田中明子/訳 評論社)より抜粋


 らっしゃいらっしゃいらっしゃい。ええらっしゃい。おぅお客さん旅の支度ですかい?ええええ何でも有りますようちは品揃えにゃちと自信がありますんでね。ははあお客さん旅慣れてらっしゃるね、他の方とはお買い上げの目の付け所が違いまさぁね。伊達にここでン10年店開いちゃいませんや、旅装の方の格の目利きはちょっとしたもんでして、ええ。え?いえいえとんでもねぇや、うちは他所みてぇにここから先は有料ですなんて野暮なこたぁ言いやしません好きなだけ見てってくださいな。ところでちぃっと伺ってもよろしゅうございやすかね、お客さん一体どちらまで?……へぇ!!いやぁ、まぁそいつぁ全く実際のところちょっとしたこって!!!!あっしも商売は長ぇがあんたさまみてえなお方は初めてでさ。どうかお気をつけなさるこってす。へぇ、へぇ、それはもう分かっておりますとも。こっちも商売ですからねそうそうぺらぺら客のことをしゃべったりしませんやね。で、お買い上げは、ははぁ、こちらとこちらで。ヘぇどうも!!そいじゃ、もしお戻りの際には是非またこちらにお願いしますよ……ちょっと待ったお客さん、見たところ1人だね、ああいけねぇや、あんな恐ろしいところに行くのに1人なんざ!!悪いこたぁ言わねぇうちの酒場を覗いていきな、そんなあんたにぴったりの旅の仲間を用意できると思いますぜ……。

戻る