触手の国のメイドさん(15)








姫君にお仕置き(3)



「失礼します」

フィズがドアを開けて入っていくと、甘ったるい少女の喘ぎ声が聞こえてきた。

「あっ…ああ…フィズ…はやく…はやく、きて…でないと私…」

フィズはビクッと身を震わせた。

リルン姫が自分を呼んでいる。

だけではない。その声には、早く自分を嬲り者にしたいという、子供らしい無邪気で残酷な欲望が含まれている。

フィズは体の奥が熱くなるのを感じた。早く姫様に嬲り者にされたい。いつものように、朝まで犯されたい。

(駄目…)

フィズは喘ぎ声を聞いただけで流されそうになっている自分を叱咤した。今日に限っては、それは許されないことなのだ。

リルン姫はベッドの上で自慰に耽っていた。

パジャマの胸がはだけられ、ふくらみかけの乳房が露出している。下半身は全裸に近い。右膝のあたりにパンティがまとわりついているだけだ。そして、控えめに広げられた股間を、両手がまさぐり続けていた。

一体どれほど自慰をし続けていたのだろう。リルン姫はフィズが入ってきたことにも全く気づいていないようだった。

虚ろな瞳はベッドの天蓋に向けられている。フィズの名を呼び続けている半開きの口元からは、だらしなく涎が垂れていた。

トクン…トクン…

フィズの心臓は、主人の乱れた姿を見て高鳴った。頬が上気する。今すぐ少女の足元にひざまずいて、そのあらゆる望みを叶えてやりたい。

フィズはぎゅっと両手を握りしめた。情に流されてはいけない。この幼い姫君を救うためには、非情にならなければならないのだ。激しい葛藤のために、拳がブルブルと震える。

フィズはハアハアと呼吸を繰り返した。

非情にならなければならない。

ファーナ様のように。

感情を殺さなければならない。

フィズは必死に自分に言い聞かせた。

(自分はファーナ様の人形なのだ。すべてファーナ様のいうとおりにしていれば、姫様は助かるのだ)

ようやく落ち着いてくる。

フィズが声をかける前に、リルン姫の方が気づいた。

「フィズ? フィズなの?」

朦朧とした様子で上半身を起こす。

「はい、姫様」

リルン姫はにっこりと嬉しそうな笑みを浮かべた。

「フィズ、来てくれて嬉しい。はやく私をめちゃめちゃにして。お願い。私、ずっと待っていたの。朝からずっとよ」

フィズは眼鏡の奥で痛々しげな表情を浮かべた。

あの事件以来、数日に渡って、リルン姫はここに閉じこめられていた。さすがに鍵はかかっていないが、必要な場合以外に部屋の外に出ることは禁止され、ドアの前には見張り役のメイドが立っている。

そしてより重要なことに、リルン姫の世話はフィズ以外の別のメイドが行うことになっていた。フィズを前にすると、再び同様の事件を引き起こす可能性が高いからだ。他のメイドに触れることも禁止された。

夜だけが、フィズとリルン姫の愛の時間だった。リルン姫は抑圧された欲望を彼女に叩き付けた。半狂乱になったかのような触手が、彼女をボロ雑巾のようになるまで犯した。何度も気を失い、その度に、より激しい愛撫によって強制的に覚醒させられた。

だが、今日フィズがやってきたのは、リルン姫に犯されるためではなかった。もっと重要な用件がある。

フィズが首を振ると、リルン姫は理解できないとでもいうような、不思議そうな顔で小首を傾げた。

フィズは冷静さを失うまいと努力しながらいった。

「姫様、今日は陛下の元へ伺候される日です」

「あ…」

リルン姫は小さく声を上げた。次第に青い瞳に理性的な光が戻ってくる。

「忘れてた」

リルン姫は決まりが悪そうにいった。王女ともあろうものが、こんな大事なことを忘れるなんて。

「ごめんなさい、フィズ。なんだかこのところ、あなたのことしか考えられなくて」

フィズの顔がさっと赤くなった。

同時に、呼吸をするのも困難になるほど胸が苦しくなる。

(姫様…お許し下さい…)

フィズは心の中で何度も繰り返した。自分は今、こんなにも愛らしい姫君を、罠にかけようとしているのだ。



フィズはリルン姫を伴って、至聖殿の中を歩いていった。地下への階段を下りていく。惑星の中心へと続いているかのような、長い、長い階段を。

いつもの事ながら、フィズにはリルン姫の楽しげな様子が理解できなかった。

自分と一緒にいるときとは微妙に異なる、リルン姫の笑顔。それは、よりいっそう無邪気で子供っぽいものに見える。

ある意味、それは当然だったかも知れない。この先で待っている国王は、リルン姫の父親でもあるからだ。

だが、その父親が、当然の権利としてこの幼い少女に加える仕打ちを思うと、フィズは当の本人であるリルン姫が、こんなに楽しそうにしている事が信じられない。

やがて、二人は広大な地底湖の入り口に立っていた。

完全な暗黒ではない。壁に付着した光り苔がドーム型の空間を、幻想的な青緑色の光で満たしている。

湖面の中央に、まっすぐ幅の広い通路が延びていた。そして、その突き当たりの一段高い位置に、この国の支配者であり、半ば神として崇められている、巨大な触手生命体が鎮座していた。

「行ってらっしゃいませ」

フィズはその蠢く触手から目をそらすように、深々とお辞儀をした。あれを長時間見ていると、頭がおかしくなりそうになる。

気味が悪いというのではない。グロテスクでさえない。それはむしろ美しく、神々しい。

ただ、あれの前に立つと、自分が一匹の「牝」という生物になったような気がする。頭から理性や人格さえもがどんどん吸い出され、代わりに自分はあれに犯されるためだけの生物なのだという、動物的な欲望だけが充満していく。

「いってきます」

と朗らかに微笑み、リルン姫は王に向かって歩き出した。

フィズは通路の脇にある控え室へと入っていった。主人が王の相手をしている間、侍女はここで待っていなければならない。

室内には、お茶が飲めるような備えもあったが、フィズはとてもそんな気にはなれなかった。

奥の方から、かすかにリルン姫の楽しそうな声が聞こえてくる。実の娘といえども、王と会話ができる時間はほとんどないのだ。

だが、それも長くは続かない。

会話はもう止まっている。

フィズは無意識のうちに、聞き耳を立てた。

じゅる…じゅる…じゅるるるる…

無数の触手が這いずる音。それは同時に幼い肉体を愛撫する音でもある。

「ぁ…ぅ……」

かすかに少女の喘ぎ声が混ざる。

「はあ…はあ…はあっ…ああ…お父さま、もっと…」

少女の声が大きくなる。

それはもうフィズが知っている愛らしい姫君のものではない。艶っぽく淫らがましい牝の声だ。

「ああああああっ」

悲鳴のような叫びが上がった。

フィズはビクリと肩を震わせた。リルン姫が実の父親に犯されている。

フィズは逃げるようにぎゅっと目をつぶった。何の役にも立たない。脳裏にはリルン姫の幼いからだが浮かび上がっている。触手の群れの中で蠢いている白い肢体。あどけない秘所には触手の太い男根が、無惨に突き刺さっている。

「あっ…あっ…ああっ…あくっ…んああっ…」

リズミカルな喘ぎ声。男根が突進し、その度に少女の体が壊れた玩具のように跳ね上がる。

耳を塞いでも、その無惨な光景は消えはしない。いつ果てるともない陵辱。

(やめて…もうやめて…)

自分が犯されるよりも辛い。

だが、リルン姫はお父様はとても優しいと言う。とびっきりの無邪気な笑顔で。

(どうしてそんな笑顔ができるのですか…)

犯されているリルン姫はとても苦しそうだ。耳を塞いでいても、その声は聞こえてくる。

「だめ…おとうさま…リルン、こわれちゃう…いやっ…いやっ…いやあああああっっ」

フィズの全身が震えている。涙が眼鏡のレンズにポタポタと落ちる。

(はやく…はやく終わって…)

不意にフィズは、リルン姫の悲鳴に、誰かの足音が混ざっているのに気づいた。

カツン、カツン、

階段を下りる音。誰かがやってくる。

(だめっ)

フィズはおののいた。今の姿を見られたくない。主人が神聖な義務を果たしているのに、そのメイドが泣きながら震えているなんて。

「何をしているのですか」

冷たい声に、フィズはおそるおそる目を開いた。ファーナ姫がそこに立っていた。そうだ、今日はファーナ様と一緒に…

「泣いているのですか?」

隣に腰を下ろしながら、ファーナ姫が変なものでも見るような視線を向けた。

フィズはうわごとのように言った。

「姫様が…姫様が…」

ファーナ姫はなおもガタガタと震えているフィズをじっと見つめた。

「フィズリリーナ、あなたはリルンが無理矢理お父様に犯されているとでも思っているのですか」

「分かっています。でも…」

「口答えは許しません。リルンも私も、お父様に愛されることを、何よりも楽しみにしています。それをなぜあなたは悲しむのですか? 他のメイドたちのように祝福してください」

突然ファーナ姫の手がフィズのスカートをめくり上げようとした。慌てて両手で押さえる。

「ファーナ様、いけません。こんなところで…」

「手を離しなさい、フィズリリーナ。こんな所だからするのです。リルンの歓喜の声が聞こえるでしょう。メイドたちは皆、主人の声を聞いて欲情し、ここで必ず自慰をします。淫乱なあなたに、それができないはずがありません」

「あ…」

スカートを押さえる手の力が、フッと抜けた。

白い太股が剥き出しになった。

たちまち、パンティの中に、ファーナ姫の優雅な指先が侵入してくる。ぎゅっと太股を閉じようとするが、もう遅い。

「……っ!」

背筋に電流が走り抜けた。背筋を仰け反らせ硬直する。

くちゅ…くちゅちゅ…

淫らな音。自分の愛液の音。

「やはりあなたは淫乱です。もうこんなに濡れています」

淡々と事実を述べるファーナ姫。

体が硬直したまま、息ができない。目が霞む。くるしい。たすけて。

やがて、ゆっくりと体が弛緩する。

「はあ…はあ…はあ…ああ…ああ…ああっ…あくっ…んんっ…」

呼吸が戻ってきた。

だが、それは先程までの呼吸とは違う。息を吐く度に、それが全て喘ぎ声になっている。

「いや…やめて…くだ…さ…い…」

首を振って快楽に抗う。

「何を言っているのです。リルンの声にこんなにも感じているのに」

「いや…いや…ゆるして…」

なぜこんなにも自分は嫌がっているのだろう。

(ファーナ様の言うとおりだ…)

姫様の声を聞いただけで、こんなにも感じている。

姫様の喘ぎ声が好き。

姫様の幼い体が好き。

姫様の悶える姿が好き。

(でも…)

姫様が陛下に犯されるのはいや。

姫様が何本もの男根に犯されるのはいや。

姫様がボロ雑巾のように犯されるのはいや。

不意に恐ろしい考えが浮かんでくる。自分は王に嫉妬しているのではないか? リルン姫を独占したいと願っているのではないか?

何という大それた願い。自分はただのメイドではないか。おそばに置いていただけるだけでも身に過ぎた光栄だというのに。本当ならば、あの方を思って、ひっそりと自慰に耽るだけでも、分不相応なことだというのに。

ファーナ姫に対する申し訳なさで、胸が一杯になった。ファーナ様は、罪深い自分を正しい道へと導いてくれる。それを嫌がるだなんて、自分は何という罰当たりな…

(お許し下さい…お許し下さい…)

心の中で何度も繰り返す。

だが、それを声にすることはもうできない。股間で蠢いているファーナ姫の指先が、それを許さない。何か口にしようとする度に、その全てが淫らな喘ぎ声になってしまう。

「あっ…ああっ…あくっ…ふぁー…な…さ…あっ…んくっ…うっ…」

次第に頭が朦朧としてきた。

こんなに謝りたいのに、自分の体はもうファーナ姫の与えてくれる快感に反応することしかできない。ファーナ姫の言うとおり、自分は淫乱なのだ。

なんて淫ら。

なんて恩知らず。

自分自身に対する憐憫か、怒りか、それともファーナ姫の優しさに対してか、まぶたの裏に熱いものが溢れ、頬をつたって流れ落ちていく。

「フィズリリーナ、あなたの泣き顔は、とてもそそります」

頬に突然、ザラリとした感触。ファーナ姫が、涙をねぶっている。

同時に、その優美な指先が、愛液にまみれたクリトリスを激しくこね上げ始めた。

「ああ…はあっ…ああっ…あくっ…んっ…あああっ…あああああああっ」

フィズは絶頂に達すると、精根尽き果てたように、がっくりと前のめりになった。テーブルにぶつかる…理性がそう囁いているがどうすることもできない。

恐れていた衝撃はやってこなかった。何か柔らかいものに顔をうずめている。

(ファーナ様…)

フィズは朦朧とした頭で思った。自分は今、ファーナ姫の胸に抱きしめられている。

すぐにでも顔を上げて礼を言うべきだったが、体の方がいうことを聞かなかった。あたたかく、心地いい。いつまでもこうしていたい。

リルン姫の叫び声はもう聞こえてこなかった。少女である姿を失い、より原初的な触手へと変身を終えたのだろう。遠くからは、触手が蠢く粘着質の音ばかりが聞こえてくる。

いや、それだけではなかった。すぐ近くからも音がしている。

くちゅ…くちゅ…

(何の音だろう)

よく聞いたことがあるような音だったが、判断力を失った今のフィズには分からない。頭に霧がかかったようで、何も考えられない。

「さあ、フィズリリーナ、舐めなさい」

ファーナ姫の声が聞こえ、唇に何かが押しつけられた。反射的にそれを口内に迎え入れる。指先か何かのようだった。あたたかく、そしてヌルヌルしている。

フィズは何も考えず、いわれるがままに、そのヌルヌルしたものを舐め、しゃぶった。

神経を犯す、甘い匂い。後頭部が痺れるような感じがする。

何度も何度も、フィズはその指を舐めさせられた。

やがてフィズは、うっすらと目を開いた。ファーナ姫が自分の股間に手を入れ、それからその手を自分の口元に運んでいる。ようやくその意味するところを理解して、フィズは慌てて体を離そうとした。ファーナ姫は自分の愛液を、まるで餌のようにして自分に与えているのだ。

「じっとしていなさい」

ファーナ姫はその一言で、フィズの動きを封じてしまった。

「私が逝くまで、私の愛液をすべて舐めるのです」

答える暇もなく、フィズの口元に、次の指がねじ込まれた。

ファーナ姫は、フィズに自分の愛液を与えることで、快感を感じているようだった。次第に頭上で聞こえる息が荒くなってくる。

フィズの体もまた熱くなりつつあった。無理矢理愛液を舐めさせられているというだけで、体が勝手に感じてしまっている。

「はあ…ああ…あっ…んっ…くっ…う…っ…」

ファーナ姫の喘ぎが、切羽詰まったものになった。フィズには、ファーナ姫が間もなく絶頂を迎えるのだということが分かった。

次の瞬間、大量の愛液でべっとりと濡れたファーナ姫の手が、フィズの顔を襲った。それはもう、指をしゃぶらせるというような物ではなかった。手のひら一杯に付着した愛液が、フィズの顔全体に塗りたくられた。さらにその手は、唇に愛液を塗り、それから傍若無人に口内を犯した。

「あっ…うう…」

フィズは呻いた。ファーナ姫の手が、まるで内側から愛液を塗りたくろうとしているように、乱暴に口内をまさぐる。甘い匂いが立ちこめ、唾液が溢れ出す。

「ああっ…あくっ…うっ…んっ…んんっ…あ…ああ…あ…ぁ…」

小さな断末魔と共に、ファーナ姫の体が痙攣した。

それと同時に、フィズもまた、再び絶頂に達していた。


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