花より触手(4)別れの日
風呂上りはいつもぼうっとしている。いつも背中を流してあげると言われて、背中以外の敏感な部分まで弄繰り回されてしまうからだ。タオルを一枚体に巻きつけただけの姿で、アルマはベッドに座っていた。同じくタオル一枚のマルルーネが、隣に座ってアルマの髪を拭いてくれる。それが終わると、あとはベッドに入るだけ。
押し倒されたアルマに馬乗りになると、マルルーネはさっそく股間から触手を伸ばした。二本の太い触手が、アルマの剥き出しの胸を這い回る。
「あっ…ん…ぅ…」
触手に擦られて、乳房がいやらしく形を変えていく。ぬるぬるした感触。乳房全体に粘液を塗りたくっているのだ。
「ハァ…ハァ…んっ…ぁ…」
息が荒くなる。粘液が皮膚から浸透するにつれて、神経が侵され、全身が快楽に対して過敏になっていく。
マルルーネは触手を這わせながら身を乗り出し、アルマの口に自分の乳房をあてがった。アルマはそのやわらかな物にしゃぶりついた。粘液を塗りたくられたお返しに、唾液を塗りたくっていく。
白い乳房を、唾液を一杯に乗せた舌で、舐め上げる。二人の荒い息遣い。舌と触手、そして唾液と粘液が発するいやらしい音が、静かな部屋に充満する。
「そろそろいいかしら」
マルルーネはいうと、アルマの上に覆いかぶさり、自分の胸をアルマの胸に押し当てた。
「あっ…」
アルマは切なげな声を上げた。乳房がやわらかな物で押しつぶされる。粘液と唾液が入り混じった潤滑剤が、ぬるりとした感触とともに、乳房を予想もつかない方向へと押し流す。
マルルーネが腰をくねらせ、円を描くように乳房を蠢かせる。それに押されてアルマの乳房も振り回された。
「んっ…くっ…んあっ…んっ…っ…」
濡れた乳房がニュルニュルと音を立てる。手で揉まれるのとは全く違った快感が背筋を痺れさせた。
「ハァ…んっ…ふぁあ…ぁ…くぅ…ん…」
アルマの喘ぎは、次第に鼻にかかった甘ったるい声へと変化していった。無意識のうちにか、マルルーネの動きにあわせて自分も腰をよじり、体を動かし始めた。二人の胸が蠢き、より激しく擦れ合う。
興奮が高まり、アルマはじれったそうに訴えた。
「ルーネさん…私…私…」
「なあに…アルマ…もう我慢できないの…」
「は、はい…」
潤んだ瞳でいうと、マルルーネはアルマの上から降りた。
「ルーネさん?」
怪訝そうにアルマはたずねた。いつもなら、そのまま触手で犯してくれるのに。
マルルーネはいたずらっぽく笑って、アルマを抱き起こした。
「今日はあなたが上よ」
いいながら、ベッドに仰向けに横たわる。
「ほら、はやく」
アルマは恥ずかしそうにためらった。視線はマルルーネの股間から離れない。伸び上がった二本の太い触手が、誘うように淫らにくねっている。
「どうしたの、入れてほしいんでしょう?」
アルマは意を決してマルルーネの上に跨った。マルルーネがやさしく…そして欲情した視線で…見上げている。触手が太腿の内側をそっとなぞり、あそこの入り口に先端を押し当てたのが分かった。
「そのまま腰を下ろして」
「は、はい…」
アルマはマルルーネの腹に両手をつき、ゆっくりと腰を沈めていった。それにつれて、触手がずぶずぶと入ってくる。
「うっ…ぅ…んんっ…くぅ…」
いつもよりきつい。おそるおそる体重をかけていく。固く閉まったあそこが、めりめりと音を立ててこじ開けられていった。涙が溢れ、ぎゅっと目を閉じると、温かいものが頬を伝って零れ落ち、ぽたぽたとマルルーネの乳房に弾けた。
アルマは堪え切れずに声を上げた。
「あっ…あぁああっ…くっ…うっ…ぅぁああっ」
一瞬、膝の力が抜けた。じゅぶりと音を立てて、一気に触手が体の奥まで貫いた。
「っ……っっ…!!」
背筋に快楽の衝撃が走り、アルマは仰け反った。声が出ない。目の前が真っ白になった。突然の絶頂に、体が硬直する。
「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」
激しい息遣いとともに、アルマは現実に引き戻された。涙で前がよく見えない。半開きの口から、だらだらと唾液が垂れていた。
お腹の中には巨大な触手がしっかりと収まっていた。温かい。あそこは限界まで広げられ、絶えず湧き出している愛液でグチョグチョになっていた。
「アルマ、動いて」
「でも…」
「アルマが動かないんだったら、触手を動かしていいかしら」
アルマはふるふると首を振った。今、お腹の中を掻き回されたら、どうにかなってしまう。
「うぅ…」
アルマは泣きながら腰を動かし始めた。ゆっくりと前後に振る。大きな異物が、お腹の中で少しだけ位置をずらす。気持ちいい。
「ぁ…ハァ…う…ぅ…くぅ…」
アルマは新しい快感に恍惚となった。アルマが動くたび、股間でグチュグチュと音がする。もうひとつのいやらしい音は、いつものようにもう一本の触手がマルルーネ自身のあそこを犯しているのだろう。
「アルマ、よくなってきたみたいね」
「は…はい…気持ち…いいです…」
「左右にも動いてみて」
「はい…うぅ…ぅ…ふぁあ…あ…ぁん…」
夢中になって腰を動かす。前後、左右、それから回転運動。
「あ…はぁん…くぅ…ぅ…うぁ…ハァ…ハァ…あぁ…んっ…」
下腹部がとろけそうに熱い。じわじわと快楽の痺れが腰に向かって這い登ってくる。
「あぁ…いいわよ…アルマ…」
マルルーネが色っぽく喘ぐ声が聞こえた。見れば自分の乳房を両手で揉みしだいている。アルマも自分の乳房を両手で掴み、揉み始めた。固く敏感になった乳首が、ジンジンと痺れ、快感の波動を送り出す。
「あっ…あっ…気持ちいい…気持ちいいよぉ…」
アルマは何度か逝ったが、その度にさらなる快感を求めて腰を動かし続けた。
「ハァ…あぁ…んくぅ…ぁ…あぁああ…」
快楽に頭が朦朧とする。虚ろな瞳は宙を向いているが何も写していない。口元から溢れた唾液は、乳房まで流れ落ちていた。腰の動きがより激しく、そしてより淫らになっていく。両手は今や乳房を揉みしだくだけではなく、自らのクリトリスをまさぐっていた。
「あっ…あぁああ…あうっ…ぅ…はぁ…あ…んっ…くぅ…」
「アルマったら…こんなに腰を動かして…」
遠くでマルルーネの声が聞こえる。だが、それはもう快楽に支配されたアルマには届かなかった。アルマは全身をいやらしく蠢かしながら、ほとんど無意識のうちに、誰とも知れない相手に向かって哀願していた。
「あっ…あぁあああっ…んっ…くっ…もっと…もっと…私を…ぐちゃぐちゃにして…ください…私は…いやらしい…奴隷ですっ…あっ…あぁああ…あっ…あっ…あぁああっ…ぁああああああっ!」
気がつくと、アルマはマルルーネの腕の中にやさしく抱きしめられていた。そっとマルルーネの手が頭を撫でている。「ルーネさん…」
「あら、気がついた?」
「はい…」
アルマは恥ずかしそうに答えた。自分がひどく乱れてしまったことは覚えている。だが、マルルーネはそれをからかったりはしなかった。彼女はやさしく尋ねた。
「あなた、好きな人がいるの?」
「えっ、どうしてですか?」
「セックスするとね、なんとなく分かるのよ。あなたには誰かすごく大切で大好きな人がいるって」
胸の奥から突然熱いものが込み上げてきて、アルマは泣き出した。涙が後から出てきて止まらない。肩が震え、泣き声は次第に激しくなっていった。
「お嬢様…お嬢様ぁ…」
アルマは荷物の詰まったカバンを手に、マルルーネの前に立っていた。マルルーネが差し出した袋を受け取って相手を見返す。「これは?」
「餞別よ。道中何があるか分からないし、お金はあった方がいいでしょう」
「でも、私、お金なら…」
「好意は素直に受け取りなさい。ほら、馬車が来たわ」
アルマは「ありがとうございました」と頭を下げ、馬車の方へ歩きかけたが、突然くるりと一回転してマルルーネのところへ戻ってきた。驚いているマルルーネに、アルマはいった。
「忘れてました。お別れのキスです」
相手の首筋に手を回し、背伸びをして唇を軽く重ねる。
「…ありがとう」
やさしく微笑むマルルーネに見送られて、アルマを乗せた馬車は走り去っていった。