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詩
私の書いた詩を載せています。ほとんど「うた」と化しています。「ふんふんふん」と読んでください。
ジプシー娘が地雷で死んだ
ジプシー娘が地雷で死んだ
白痴娘だったと人は言う
大人は子供を集めてあそこに行くなと言ったけど
彼女は原っぱに憧れている
盲目少女は妹と二人で
乞食をしながら旅を続けている
花の匂いに誘われて思わず足を踏みいれた
彼女は原っぱに憧れている
あー、あなたと二人で転がりたい
おひさまの下でぐるぐると
誰にもジャマされずに抱きあってたい
だけど長老はそれを許さない
あそこに行くなと怒る
ジプシー娘が地雷で死んだ
白痴娘だったと人は言う
親は私に向かってあそこにいくなと言ったけど
私は原っぱに憧れている
私は原っぱに憧れている
迷子のワルツ
道を間違えた わざとじゃないよ
人の多い通り 歩きたかっただけ
気がつけば空は 赤くそまって
携帯電話を 忘れたことを知った
ルルルルー ルルルー
ルルルルー ルルルー
誰かが声をかけた 外国人らしい
駅へと続く道 知りたがっている
私は丁寧に 道すじ教えた
だって道路標識に 書いていたから
ルルルルー ルルルー
ルルルルー ルルルー
警察を頼る 好きじゃないけど
あなたのためにって 勇気出して入った
意外と近くて 少しあせった
わざと遠回りして ちょっとだけ走った
ルルルルー ルルルー
ルルルルー ルルルー
待ちぼうけなのに 心配してたね
そんなあなた見ると 悲しくなってきた
だけど本当は 楽しかったよ
見知らぬ街の中で 迷子になるのは
ルルルルー ルルルー
ルルルルー ルルルー
無題
涙が出る
涙が出る出る
悲しいわけじゃないのに
さみしいわけじゃないのに
切ないからじゃないのに
でも、涙は出る出る
誰も見てくれていないのに
誰も抱きしめてくれないのに
きっとこのまま私は涙になる
涙になればこの部屋を出られる
風が運んでくれるかもしれない
一人ぼっちのあなたの部屋に
私はあなたにくっついて
あなたの汚れをぬぐいさる
そしてあなたの悪夢をいやし
草原の羊たちとのどかな夢を見る
愛の狙撃手
少年は愛をさがしてる
「君を守るための戦場がほしい」
少女は愛をさがしてる
「本当のあなたに抱かれたい」
パンクしたビルがはきだす
急ぎ足の中身のない電波
時代をなげくのはもうやめた
誰かが時代をなげくたび
良い知らせが一つ消える
私は彼と雨の中
フードで顔をおおいさり
愛の貨物列車を狙撃する
彼はいつも目を閉じている
だから私は手をにぎる
「めくらの方が愛が見える
ホームレスが言ってたんだ」
のろのろとした愛を待てず
誰もが乗ろうとしてる
マザー・コンプレックス
スチューデント・アパシー
アダルト・チルドレン
そんな名前のスーパーカー
私と彼は雨の中
フードで顔をおおいさり
愛の貨物列車を狙撃する
線路に耳をあててみる
あの貨物列車はまだ来ない
彼の時刻表が古いからか
とっくに列車はすぎたのか
私は彼の手をにぎり
遠くにぎやかなネオンを見つめ
交わされる愛の幻想を思う
彼は小さくつぶやいた
「もし、刑務所に行ったなら
そこで結婚式をあげよう」
寒さで顔がひきつって
うまく笑うことができなかった
私と彼は雨の中
フードで顔をおおいさり
愛の貨物列車を狙撃する
Tokyo City Serenade
彼は野良犬 私になついている
夢がやぶれたと思っている 今じゃ私にうたう歌もない
金をかせぐのが下手で 生まれ故郷に帰ってきた
私は彼を敗北者だとは思わない
だから彼は私になつく
だけど、彼のうたう歌はいつもおんなじ
その中に私の影はない
彼のうたう歌はみんなおんなじ
Tokyo City Serenade Tokyo City Serenade
ジャンキーを気取ることもある
私にこんな冗談を言う
「ヤクは一人でするもんじゃないぜ 歯止めがつかなくなるからな」
彼に仲間はいたのだろうか
彼と仲間との間にどんな歌が交わされたのか
だから、彼のうたう歌はいつもおんなじ
その中に私の影はない
彼のうたう歌はみんなおんなじ
Tokyo City Serenade Tokyo City Serenade
彼にはそこそこの才能がある
だけど 人付き合いは下手
それでも誰かに認められたいと
東京のうずにのみこまれていた
あなたの歌はどこかで聴いていた
交差点の中でも 商店街の中でも 電話の向こう側でも
すぐに忘れてしまったけれど
だって、彼のうたう歌はいつもおんなじ
その中に私の影はない
彼のうたう歌はみんなおんなじ
Tokyo City Serenade Tokyo City Serenade
ナオの物語
自分にしか見えないものを真実だと信じる
私はそれが罪だとは思わない
これはナオのおはなし
神聖さと純粋さの違いについての物語
その部屋には六つのドアがあり
十二人の男女がいた
今いるのは二人きり
ナオとゲイの詩人
十人は五組のカップルとなり
それぞれの部屋に消えた
ナオはいつの間にか取り残された
ゲイの詩人はドアの向こうを気にして
意味なく言葉を浪費する
鋭角二等辺三角形の底辺の喪失
三角形を保っていた内部のエネルギーの行方
残りの二辺は直線を保つことができるのか?
やがて放物線となってしまうのか?
ナオはその言葉を読みとろうとするが
的外れな返事しかできない
それでも居心地の悪さは消えることはない
向こうの音は聞こえないはずなのに
なぜなら壁の素材は天下一品
NASAのロケットにも使われた断熱材
才能とはわきでる泉のようなもの
ゲイの詩人はそう断言する
それは心の奥深くにある
無意味な遺伝子の羅列の中の
人類という生命のつながり
見たままを書けばいい
人は願望で動くが世界は願望で動かない
こうして残される文化の残骸
その恐怖に惑わされてはいけない
ただ見たままを書けばいい
自分らしさという壁を築くことは
願望によって世界が動くと信じさせる罠だ
源泉、法律みたいだと思う
ナオは所得税について勉強したばかり
ゲイの詩人は言う
おれが詩を書きだしたのは
体内にたまった言葉を投げすてて
軽くなりたかったんだ
そうすれば もしかしたら
空を飛べるかもしれないって思ってさ
やがてナオはつぶやいた
あそこの部屋に行きましょう
ゲイの詩人は気のないそぶりで
君の望むことはできないぜ
ナオはそんな言葉に首をふって
この部屋にいると落ちつかない
誰かに監視されているような気がする
ゲイの詩人は笑った
そうかもしれないな
ここには監視カメラがあるかもしれない
ナオは何がおかしいのかわからない
こうして部屋に入った二人
ドアはバタンと勝手にしまり
二人は暗闇に包まれる
電気を探そうとするゲイの詩人
そのとき声が聞こえたのだ
明かりをつけないで
少女の声がはっきりと
それからマッチのする音
おぼろげながら映る子供の顔に
ナオは純粋さが放つキレのいい
底なしの恐怖を感じたのだった
座りなさい、と少女は言う
ナオはゲイの詩人を見る
ゲイの詩人はナオも見ずに
指さすところに腰かけた
ナオもやがてそうした
何からはじめればいいのかな
ゲイの詩人は少女にきく
はじまりなんてないはずよ
少女はナオの方を向いて
でもここでは終わることはできない
ゲイの詩人はナオを無視する
続きを続ければいいだけ
少女はゲイの詩人を無視する
目を閉じて祈りなさい
少女はろうそくを高くかかげ
この終わりない世界に敬礼を
それが儀式の合図だった
ナオは身体がふるえてきた
もう目は見えなくなっていた
ろうそくの熱を感じるだけ
ゲイの詩人も謎の少女も
まるで闇の中にとけたように
自分の鼓動をさぐろうとするけれど
意識はどんどん隔離され
自分の手と足がただ棒のようになり
ぬけおちていく気分
ついにナオはふりしぼる
叫ばなくてはならなかった
息もできないほど苦しかった
ナオは空気を震わせるため
あごに思いきり力をいれた
こうしてナオが叫んだのが
「私は私だ!」
そこでナオは目が覚めた
どうやら夢のようだった
ナオはしばらく考える
あのセリフが二人に伝わったら
きっと狂ったように笑っただろうと
でもナオにはそれ以外の言葉など
何もしゃべることができなかったのだ
ナオはそれからの二人のことを
あの言葉が儀式に何かをもたらしたのか
いろいろ思いをはせようとしたけれど
想像力は働かなかった
記憶はふと分断される
かすかな火花が飛び散って
何かが砕け散る音がした
自分にしか見えないものを真実だと信じる
私はそれが罪だとは思わない
これはナオのおはなし
神聖さと純粋さの違いについての物語
