「ダイスをころがせ!」 真保 裕一(著) 毎日新聞社
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失注の責任をかぶって子会社に出向させられたあげく、ついに辞めることとなった元総合商社マン。
三角関係で気まずい間柄になっていた高校時代の親友と久しぶりに出会い、選挙出馬の話を聞いた
ところから話は転がり始める。
34歳。その歳の重みを噛みしめながら迷い続ける主人公達が、
2人のみならず出身高校の同級生達が集めて選挙戦に挑んでいく、そのシチュエーションは
まさに学園祭で盛り上がったあの熱さである。
夢を夢で終わらせたくない青さをまだもてあましつつ「敗者復活戦」と称するように、
未熟さと成熟さの混ざり具合がとても絶妙で効果的。
選挙という祭りが終わればゴールというわけではない、っていう現実感がラストまで
夢物語で終わらせない、いい引っ張り方をしてくれる。
この小説はいろいろな角度から語りたくなる面を持っているところが面白い。
ハラハラどきどきのスリルとサスペンスを交えながら選挙ロードストーリーでもありながら、
「ダイスをころがす」という意思表示による自立性も指し示している。
昔を懐かしむ歳にさしかかってしまった年代が、かつての恋心や今の自分のあり様に悩むところは
立派に恋愛小説だ。
そして、ひとつの街がおりなす人々の暮らしが、何気なく細部までに行き届いているのも
なんとも上手い。
「様々な出会いとともに、小さな認め合いの積み重ねから、街の歴史は作られていく。」
街の中で暮らしている人々の生活を、帰郷という形で外側から眺める主人公が見てつぶやく
この絶妙な台詞。
若者が言えば薄っぺらいし、年配者が言うには幼すぎる。
ありきたりの生活感が細部まで行き届いていて、さすが真保裕一だなってうなってしまいました。
(03/28/2004)
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