Jellyfish's Note

「オリンポスの果実」 田中 英光(著)  新潮文庫


オリンピックに出場したレガッタの選手が主人公が、横浜から太陽丸という船で南カリフォルニアに向かい、 船中で出会った選手団の中の女性に恋をしながら大会に挑む話。
まあ時代が時代、「聖林」と書いて「ハリウッド」、「剣橋」は「ケンブリッジ」とルビをふる時代 だから、恋の話といっても劇的な展開があるわけではなく、主人公がつらつらと面々とした思いを綴っている だけの話といっても過言ではない。

だけど情景描写が際立って素晴らしいのだ。
「海の青、水天の碧い空気、白い国、紫紺の山肌」といったように、まるで絵画のような色彩を基調としており、 その上に「焼きつくような日光をあびた甲板、途中寄港したハワイの水々しい山頂」等、これらの描写はもう、 水の空気が目の前に匂いたつような心地。

初めてこの話を読んだ時はもう遥か昔で、ただ海の青さと気温の暑さが印象的だったけど、再読してみると主人公の レガッタの日本選手に大学生ながらに選ばれてしまう、ちょっとした生意気さ、気弱さがかなりイライラ(笑)。
(さらに物をよく失うんだ、この主人公は。)
だけどそういう若さが純粋といえば純粋で、それも夏のまぶしさについ引き込まれてしまう一因なのだろう。
(08/12/2003)


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