Jellyfish's Note

「アミターバ −無量光明」 玄侑 宗久(著)  新潮社


もし母親が病になり死の床に伏したら・・・?
想像することは少ないけれど、それは突然のアクシデントがないかぎりいつかはやってくる未来。
「死後の世界」とは?「臨死体験」て?「仏教」とは?
これもまた、母親の死と同様普段はめったに踏み入らない領域。

本書は癌になり死期の近づいた母を主人公に、その娘、娘婿の僧侶を中心として、母の闘病生活や 臨死体験、宗教の考え方など広い範囲で「死にかかわるもの」をやわらかく展開。
心の奥のすみっこで感じていた仏教を、ひょうきんなお母さんを語り部として、やさしく、 現代的に目の前に見せてくれます。

あやしげな観念論は全くないので、思ったより読みやすい。
逆に物理学を使って理論的に述べているので、哲学的な要素が強く、それがうさんくさくない。
かえって誠実な感じがあって、作者の言いたい(だろう)ことがすとんと胸の中に落ちてきました。

また、闘病生活の何気ない場面のリアリティさがこの本を押し上げている。
病により薄れていく意識、記憶の混同など、看病される側とする側の思いが重なったり離れたりするところが 胸にせまる。

「ほんまに、・・・あたし母さんの子供でよかったわ」
「なに言うんやな、この子は。私は元気になりまっせ」
私がこの本に、こんなに胸をしめつけられるのは、そんな会話をとても愛しく感じてしまうからだ。
(08/16/2003)


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