「ゴッホの遺言」 小林 英樹(著) 情報センター出版局
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小さい頃、家にあったゴッホの画集の中で一番好きだったのは「アルルの寝室」だった。
まさに外国の部屋(当たり前だ)という画風が憧憬心をそそり、なおかつベットと窓と椅子のみという、
カンタンに真似できそうな構図だったから。
しかしどうやら世の中には私以上の不届きモノがいるらしく、その「寝室」には贋作があったらしい。
贋作者の気持ち、わかるなあ〜(^^;)。
ゴッホは精神を病み、自らの耳を切り取り、ついには自殺をしてしまった・・・美術の授業ではこう教わってきました。
本書は真っ向からその風評を否定。
贋作を告発しながらその背景にあった自殺の真相へせまっていく。
誰もが知っている画家の贋作、その理論的な展開は、まるでミステリーを解説されているようだ。
しかし中盤以降心を奪われるのは、贋作うんぬんではなく、弟テトとゴッホの関係。
生きている間に売れた絵がわずかであったゴッホの人生は、テトがなくてはあり得ないものだった。
テトにとってもゴッホは自身が創作活動を行っているに等しいくらい、大きな存在であった。
なぜならテト自身も立派な芸術家だったから。
この兄弟の持ちつ持たれつの関係、強いパイプでもあるが風に揺れる糸のようでもあり、かしぐバランスが
とても危うくて目が離せなくなる。
「ぼくは画家として去ることによって、永遠にきみたちに等しい」
理想と現実、大義とテトの家族に兄弟は板ばさみになり、すりきれていくゴッホ。
ラストの題でもあるこのセリフが、涙を誘います。
(09/07/2003)
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