赤川次郎
<幽霊列車> 文春文庫 476円 1981年刊
(ストーリー)
田舎町の温泉街へ向かう列車から、確かに乗っていたはずの乗客8名が忽然と姿を消してしまった。乗客たちはなぜ、そしてどのように消えてしまったのだろうか。この謎に本庁から派遣されたどこか頼りない宇野警部と、好奇心旺盛な素人探偵永井夕子が挑む。
(書評)
本作は、三毛猫ホームズシリーズ等で知られる赤川次郎のデビュー作であり、「幽霊列車」を含む5作からなる連作長編である。氏みずからがあとがきで、「緻密に組み立てた謎解き小説は、頭の構造上不可能である」と述べているように、トリックそのものはあっと驚くようなものではなく、本格ファンにはやや物足りないかもしれない。しかし、事件をつうじて次第に惹かれあう二人の軽妙なトークと全編をとおして盛り込まれたユーモアが、物語を非常に軽快にしており、さすがは日本のユーモア推理の第一人者赤川次郎といったところである。本作は、あまり難しい推理小説は苦手だという人や、難解な小説の後にちょっと一休みと考えている人にお勧めです。
我孫子武丸
<8の殺人> 講談社文庫 495円 1992年刊
(ストーリー)
事件の舞台となるのは、アラビア数字の8を模した通称8の字屋敷。この奇妙な屋敷でおきた密室殺人の担当となったのは捜査一課の速水警部補。頭を使うことが苦手な彼と、推理マニアの弟と妹が事件の真相を探る。
(書評)
我孫子氏は綾辻、歌野、法月氏らと同時期に島田荘司氏によって見出された新本格派第一期生の一人であり、ゲームソフト「かまいたちの夜」のシナリオを手がけるなどのマルチな才能により幅広い人気を獲得している。本作品も、トリックもさることながら速水兄弟のやりとりが非常におもしろく、文章の書き手としても氏が一流であることがうかがえる。また本書では、推理小説マニアの速水兄妹によってディスクイン・カーなど多くの推理小説の話題がでてくるので、こういった点でもコアな推理小説ファンは楽しめるのではないでしょうか。
<メビウスの殺人> 講談社文庫 495円 1993年刊
(ストーリー)
男性が自宅で殺され、被害者の着衣のポケットからは「2−2」と書かれた謎の紙が。その後も次々と殺人が繰り返されるが被害者からはなんら接点が見つからない。しかし、被害者と共に見つかる、数字が書かれた紙が連続殺人であることを裏づけている。はたしてこの数字の意味するものは。
(書評)
本作も速水三兄弟が活躍する作品であるが、今回の違うところは冒頭の登場人物紹介において、椎名俊夫・・連続殺人犯とはっきり明示してある点である。つまりこの作品は、本格物によくある犯人探し、いわゆるフー・ダ・ニットではなく、動機が何かを重要視する、ホワイ・ダ・ニットに分類される作品である。そして、本作は犯人の猟奇性を前面に出した作品であり、これは氏の代表作といわれる「殺戮にいたる病」へと連なっていく。
<殺戮にいたる病> 講談社文庫 571円 1996年刊
(ストーリー)
気に入った女性を次々と殺しては、その乳房や性器を切り取り持ち帰る、異常犯罪者の蒲生稔。そして、最近不自然な行動をとるようになった息子に不安を感じる蒲生雅子。知人を殺した犯人を追いかける元刑事の樋口。3人がそれぞれの思惑をもって行動していく中、事件は驚きのクライッマックスを迎える。
(書評)
本書は我孫子氏の代表作といわれ、叙述トリックの最高峰のひとつとしても名をあげられる作品である。物語は3人の登場人物の視点を交互に描きながら進められ、