"Greco BM-900"の改造および調整について
By Kumasan/Guitarist of "Mustapha"







はじめに

 現在まで数多く発表されているレッド・スペシャルのコピー・モデルの中でも、最も安価であり、また日本で入手し易いといえるのはGreco社の「BM-900」である。
(注:品番については途中から変更があり、1983年以降は「BM−80」,さらに1987年からは「BM−90」と名称を替えているが、ギターそのもののシステムやコンセプト等に特に大きな違いははないため、ここでは初期の名称である「BM−900」と統一させていただく。)
 1975年に登場したこのギターは、定価90,000円という、当時としては比較的高価な部類のコピー・モデルであるにもかかわらず、多くのブライアン・メイ・フリークのギタリスト達がこぞって購入し、クイーン/ブライアン・メイ・ファンの夢を叶えた楽器でもあった。
 しかし、このギターは写真だけを参考にして製作されたというだけあって、後から登場した他社のコピー・モデルと比較すると、実際の使用にあたっては色々と手を加えたくなる部分も、少なからずあると言えるだろう。
 ここでは、BM-900を購入して、実際にクイーンのコピー・バンドで使用してきた間に施したグレード・アップ/チューン・ナップ等について説明していく。
 
 

1.筆者所有のBM-900について

 私がGreco:BM-900を購入したのは、1986年の夏。
 クイーンの社会人コピー・バンド「ムスターファ」に参加して初めてのライブを、フェンダー・ストラトキャスターでこなした後、やはりブライアン・メイ・モデルの必要性を感じて購入に踏み切った。
 最初は他社のモデルを買うつもりだったが、お茶の水の楽器店を彷徨っていたところ、中古で90,000円で置いてあったのを発見し、思わず衝動買い。
 ラッキーなことに、前の持ち主がギタリストではなく、単にクイーン・ファンがインテリアとして飾っていたようで、ほとんど新品同様の状態だった。
 しかも、インテリア使用にもかかわらず、ピックアップはディマジオのブライアン・メイ・モデルに交換されてあり、それでいて90,000円という値段を考えると、まさに至れり尽くせりの掘り出し物であったといえる。
 そしてこの日から改造と調整の試行錯誤の日々が始まった──。
 
 

2.ピックアップについて

 元々のBM-900には、Grecoのオリジナル・ピックアップがマウントされている。
 知人の同モデル所有者によると、「オリジナルのままでも、申し分無い」との意見だった。
 両者の音を同じ条件で聴き比べていないので何とも言えないが、1980年代にディマジオ社からブライアン・メイ・モデルのピックアップが発売された当時、多くのグレコ・モデル所有者がこぞって交換したようだ。
 その値段(定価)は、フロントが14,000円、センター&リア(セット)が25,000円。 (後で触れるが、センターとリアが単体でなくセット販売というのは、実は深い理由がある。)
 ちなみに、ディマジオ・モデルはポール・ピースが無く、黒色のプレート上に金字でブライアンのサインが書かれている。
 (これが弾いているうちに、だんだん剥げてきてしまうのが残念!)
 はっきり言って、視覚的なコピー度だけならば、オリジナルのままの方に軍配が上がるだろう。
 前述の通り、購入したものは既にディマジオがマウントされていた訳だが、ストラトのハーフ・トーンと比較してみると、やはりブライアン的なニュアンスをとても感じることが出来たので、素直に喜べた。
 しかし、いざバンドの中で大音量で使ってみると、ハウリングの問題に直面することになる。
 そこで、ギター修理店でピックアップの「パラフィン加工(蝋漬け)」を施してもらい、ハウリングについては解決した。それによって音質も多少変化し、高域が落ちて、多少丸いサウンドとなったような気がする。
 いずれにしても、ハウリングは「演奏上の大敵」なので、防止するという第一目的は果たせた。
 
 

3.トレモロ・アームとチューニング安定について

 BM-900の調整における最大の課題は、何と言っても、フェンダー・ムスタング・タイプのトレモロ・アームにつきる。
 私はレスポール・モデルにフロイド・ローズを取り付けているほどのアーム好きギタリストだが、購入時に楽器店で試奏したときから、アーム・ダウン時のチューニングの狂いについて「このままではいかん!」と痛感したので、真っ先にこの点の対処を考えた。
 まずは、ペグをシャーラーのロック式のものに変えてみた。(私の持っている最近のフェンダーのストラトキャスターは、このロック式ペグにより、かなり安定したチューニングが保てる)
 楽器店の厚意により、白いプラスティック(?)の部分はそのままにしてもらったので、見た目は全く変わらないままに出来た。
 しかし、ペグを交換してもチューニング安定の効果はなかった。
 アーミングによるチューニングの狂いの原因は、弦の当たっているナットかブリッジのどちらかに引っかかりがあるため、と言われている。
 やはり本物のレッド・スペシャルと同様、ローラー式ブリッジでないとダメなのか?と思ったが、それはアーム本体を交換するということに他ならず、とても悩んだ。
 (ちなみに、BM-900のブリッジは6個の山型のもので、平行な各駒の真ん中に弦を乗せる溝が掘ってある)
 そんなある日、数年前に観に行ったトリビュート・バンドのギタリストが(ギターの機種はわからなかったが)ナットをロック・ナットに交換していたのを、突然思い出した。
 「アーム本体を取り替えるよりはマシかな?」と決心。楽器店でロック・ナットを取り付けてもらった。
 楽器店の話によると、取り付けには多少無理があったようだが、取り付けをするということに対する心配や悩みは、幸いにも「吉」に転じた。
 現在では思いっきり(オクターブ近く)アーム・ダウンしても、ほとんど狂わず、安心してアーミングができるようになった。
 最近、BM-900とギルドのモデルとを比較した雑誌記事を入手し、自分なりに考えてみたのは、どうもチューニング狂いの原因はナットというよりも、実はヘッドの角度にあるのではないかということだった。
 ギルドのブライアン・メイ・モデルはヘッドの角度がほとんど無いので、弦のナットでの引っかかりが少ない。よって、アーミングがスムーズとのこと。ただしその反面、力持ちのギタリストにとっては、弦のテンションが低めに感じられるようだ。
 その点、BM-900は、ヘッドの角度、ネックのスケール、アームの構造などの関係で、少しテンションが高めだと(華奢な私は)思う。
 さらによりチューニングを安定させるために、弦の交換時にブリッジの溝に「CRC-556」をスプレーしている。これが意外と効果的なポイントかもしれない。
 BM-900のアーミング時のチューニング安定を、ロック式ペグへの交換、ロック・ナットへの交換、ブリッジへのCRC-556の吹き付けという過程を通して、私は手に入れることが出来た。
 いずれにしても、このGreco社のBM-900のアーム本体は、かなり出来の良いものであったと思う。
 
 

4.トレモロ・アームの調整について(続編)

 前項にて、BM-900のアーミング時のチューニングの安定について、私の試行錯誤を述べた訳だが、実はこのトレモロ・アームについて、その後もうひとつの(奏法上の)問題点にぶち当たった。
(最初は、「Liar」や「It's Late」の演奏の際に、何か違和感を感じたことがきっかけだった。)
 まず先にお断りしておきたいのだが、これから述べる問題点は「それは全く問題ではない」というギタリストもいるだろう。
 むしろ音楽のジャンルによっては、そのままの方が絶対良いということも、ギタリストとして十分承知の上で、述べさせていただく。
 私が悩んだのは、トレモロ・アームの構造は「フローティング」と「ノン・フローティング」のどちらがベターか?ということである。
 日本語で分かり易く言うと、トレモロ・アーム・ブロックがボディ(木)に対して「浮き状態」か「密着状態」かという問題。
 実際の状況はというと、本物のRed Special やギルドのモデル等は「密着状態」で、対するBM-900は「フローティング(浮き状態)」である。(アームのシステム自体、全く異なっている)
 
 両者の違いについて簡単に説明しよう。
 「フローティング」では、張ってある弦の張力とアーム本体のバネの張力とが「綱引き」をしている状態であり、チューニングという作業も、この両者の張力の微妙なバランスの上に成り立っていることになる。
 「フローティング」の優れた点は、アーム・ダウンだけでなく、アーム・アップも可能であることと、それにより基準音に対し上下方向への(とても人間的な?)アーム・ヴィブラート効果が得られることにある。
 ギター・インストゥルメンタル・バンド「ベンチャーズ」のプレイにおける「音程の微妙な揺れ」の部分を思い出していただければ、ご理解いただけると思う。
 それに対し、「ノン・フローティング」は、アーム・ブロックが(バネの張力で)ボディ(木)に常に接している(密着している)状態である。
 「ノン・フローティング」の欠点は、アーム・アップが不可であること、よって基準音に対し下方向へのアーム・ヴィブラートしか得られない。
 反面、このシステムの優れた点は、アーム無しのギターとほぼ同じ条件で「チョーキング」がプレイできることである。
 
 両システムの欠点と利点──決定的な問題はここにあった。
 BM-900をはじめとする「フローティング」のアーム付きギターは、トレモロ・ブロックが「浮いている」ことにより、ロックギター奏法の基本である「チョーキング」をプレイすると、他の弦がそれに影響されて「音程が下がってしまう」ことが、最大の弱点なのである。
(「ケーラー」等の一部のシステムには、この点が全く影響のない製品もある。)
 これだと(私自身が1番困った点であるが)、チョーキングした弦と他の弦を同時に弾く奏法「ハーモナイズド・チョーキング」などは、微妙に濁った不協和音となってしまうのである。
 そして、更にその「チョーキング自体」についても、アーム無しのギター(またはアーム密着状態のギター)でのプレイと比較すれば、バネの張力に逆らっている分、常に余計な力を使っていると言えるのである。
 「1音」までならさほどの違いはないが、ブライアンもよくプレイする「1音半」や「2音」といったダイナミックなチョーキングや、ブライアン・メイ奏法の肝である「チョーキング・ヴィブラート」のプレイにおいては、バネに逆らう分だけ大変な労力が必要となり、私のような華奢なギタリストには、プレイ自体に支障を来してしまうのである。
 BM-900のフローティング・アーム・ヴィブラートは、それ自体はプレイしていて大変心地良かったので、本当に悩んだのであるが、ここはブライアンを見習い、上記の問題を優先させて「密着状態」に改造しよう、と決心するに至った。

 実は、私は以前にもGrecoレスポール・モデルに取り付けたフロイド・ローズのアームを自分自身で「密着状態」に改造したことがあったので、このくらいは楽器修理店には頼まないで自分でやろうと思い、その辺に転がっていた7mmほどの板切れをボディとアーム・ブロックの間に接着剤ではめ込んでみた。
 これでめでたく「密着状態」にはなったのだが、どうも板の厚さが足りなかったのと、板の材質が柔らかいものであったため、チューニングの安定も悪く、テンションも更にきつくなってしまい、残念ながらいい結果が得られなかった。
 結局「やっつけ仕事ではダメだ」と悟った私は、泣きながら親戚の大工さんの所へ駆け込むこととなり、壊れたカンナ(約10年間ほど放置され、十分に乾燥した?固い樫の木である)の一部を切り取ってもらい、職人技に委ねることにした。
 さすがにプロの仕事は素晴らしく、ボディの隙間にピッタリ埋まった固い樫の木は、アーム・ブロックの延長である2本の(バネで引っ張られている)バーをガッシリと受け止めており、まさにアーム無しギターと同じニュアンスでハーモナイズド・チョーキング等ができるようになった。
 もちろん、アーミングによるピッチの狂いは皆無である。
 しかし、予想された通り、アーム・ヴィブラートに関しては、ほとんど不可の状態になってしまった。
 アーム・ヴィブラートを諦められなかった私は、アームのバネを緩めてみた。
 プラス・ドライバーとチューニング・メーターで微調整すること1時間半、アームのバネを「フローティングとのギリギリ密着状態」に調節できた。
 すると、今度はアーム・ヴィブラートも(下方向ではあるが)それなりにプレイできるようになった。
 これによって、「トレモロ・アームを安定した密着状態にする」という私の目的は、ようやく完了した訳である。
 
 

5.ボディ加工について

 多くの方がご存じの通り、本家レッド・スペシャルはセミアコのようなホロウ・ボディである。
 このボディ内の空洞が、あの完璧なフィード・バックによるサステインやアコースティカルなトーンの要因(の一部)である訳だが、残念ながらBM-900はソリッド・ボディである。
 では、「本物をまねて、ホロウ・ボディにしてください」と言っても、そうは簡単にいかないので、私はボディにザグリを入れてもらうことにした。
 どこに入れたかというと、あの大きくて黒いピック・ガードの下で、堀の深さは20mmに設定した。(ちなみに、ボディの厚さは45mm)
 といっても、ピックアップの右側の部分だけなので、ボディ全体の約1/8が空洞になった程度である。
 結果としては、さほど音質に大きな変化はなかったようだが、アンプを通していない時の生音が大きくなって、サステインも多少良くなったように思う。 

 
6.コントロール部について

 Red SpesialとBM-900の見た目および機能での最大の違いは、コントロール部分にある。
 まずは、トーンとボリュームのノブの位置関係が逆であること。
 本物やギルドのモデル等はボリューム・ノブがギターを立てた状態で一番下にあるので、演奏中下を見なくても(勘で)ボリューム操作が楽にできるが、BM-900の場合トーンが一番下に位置しているので、ボリューム操作が少し扱いにくい。
(おそらくは、単純にストラトキャスター等の位置関係と同じに考えてしまった結果であろう)
 私の場合、バンドで演奏するときは、必ずフット・ボリューム・ペダルを使うので、この点についてはずっと放って置いたのだが、最終的には楽器修理店でオリジナルと同じ位置に交換してもらった。
  特に、普段フット・ペダルを使わないギタリストならば、絶対に付け替えた方が、演奏性は向上すると思う。

 次に、ピックアップ(以下、PUと表示する)のON/OFFスイッチおよびフェイズIN/OUTスイッチであるが、本物やギルドのモデル等はスライド・スイッチなのに対し、BM-900は金属製のミニ・スイッチである。
 これについては、ミニ・スイッチであるために困ったようなことは何も無かったので、私は手を加えようと言う気は起こらなかった。
 
 

7.PUの組み合わせとノイズについて。
 
 フェイズ・アウトを含めると13通りのPUによるサウンド・セレクトができるわけであるが、BM-900はシングル・コイル・マイクの宿命か、ノイズが割と激しい。(特に、オーバー・ドライブさせると)
 それでも、私がノイズ対策について、特に何もしなかったのは、この13通りのうち、次の3通りの組み合わせにおいては、ノイズがほとんど発生しないからである。
 私は、この3通りの組み合わせしか使用していないので、さほど問題として気にならないということもある。

(1)リア+センター:フェイズ・イン(正相)
(2)フロント+センター:フェイズ・イン(正相) 
(3)フロント+リア:フェイズ・アウト(逆相)

 少なくとも、PUを単独で使うのだけは、特にノイズが激しいので避けた方が良い。しかも、それはブライアン・メイのニュアンスが最も出しにくい使用法でもある。
 基本的に、2個以上のPUをミックスした、いわゆる「ハーフ・トーン」こそがブライアン・メイ・サウンドの要であると思う。さらに、曲によって高域を強調したヒステリックなニュアンスが欲しいときは、フェイズ・アウトに設定すればよい。
 不思議なもので、(3)の場合ではフェイズ・インにすると、ノイズが発生する。
 また、(3)以外のフェイズ・アウトでは、ヒステリックになり過ぎてしまう(たまにそういうニュアンスのフレーズも出てくるが)ので、サウンドの厚みも無くなってしまい、あまり勧められない。
 
 

8.その他の調整
 
 その他にも、色々な調整を行ったが、全部は覚えていないので、思いつくところだけ、挙げてみる。
 
 まず、BM-900のトレモロ・アーム・バーについてであるが、この取り付け方が結構原始的で、本体右側の穴にバーの付け根を差し込んだ後、その穴の右及び下の2カ所から六角レンチで締め付けるという(ムスタングもそうらしい)方式である。
 これの問題点は、ずっとアーミングをしていると、アーム・バーがグラグラと緩んでしまう(外れそうになる)ことである。よって、激しいアーミングをプレイした後などは、こまめに六角レンチで締めてあげなければならない。
 この対処法としては、アーム・バーの付け根の(穴に入れる)部分に、マスキング・テープを巻く、あるいは穴の中に輪ゴムやプラスティックの破片を入れる、といった方法で隙間を無くすことが(完全ではないが)有効である。

 次に、ネックの「指板」について、BM-900はローズ・ウッドの指板なのであるが、私の使用してきた他のギターと比べると、チョーキング・ヴィブラート時の指の摩擦感が若干強く感じられるので、「Finger Ease」等の弦潤滑剤だけでなく、「Orange Oil」等の木用ポリッシュを時々塗っている。
 また、ローズ指板の表面に浮き出ている微細な穴を「かくれん棒」という(クレヨンのような)家具の傷隠し補修材で、埋め込んだりもした。

  ロック・ナットを取り付けた場合のチューニングの仕方について。
 製品の違いもあるので一概には言えないが、チューニングして弦をロックすると、それによってピッチが上がってしまう(特に低音弦が、シャープする)傾向がある。
 これは、ロック・ナットをマウントした以上、ある程度は仕方のないことなので、まずはテンション・バーをできるだけ下げることが解決法だ。
 しかし、私の場合はそれでも低音弦はシャープしてしまうので、ロックする前に、弦ごとにどの位シャープするかをメーターで目算し、わざと低めにチューニングしてからロックするという方法を行っている。
 ロック後のファイン・チューナーがないのだから、面倒だがこうするしかないだろう。

 最後に、BM-900での使用弦についてだが、これがゲージ(太さ)に制限があるので、注意しよう。
 ブリッジの(弦を通す)溝の幅の関係で、たとえ腕力・握力に自身のある方でも、「0.09〜0.42」のセット以下のものを使用すること。それを超える太さの弦(「0.10〜0.46」セット等)は、たとえ張ってもこの溝には(削らない限り)フィットしないので、BM-900には合わないと思って間違いないだろう。
 ブライアン本人は「0.08〜」のセットを使っているとのことだが、私の場合は「低音を強く出したい」という理由で、1弦から「0.08, 0.10, 0.14, 0.24, 0.32, 0.42 」という、高音側と低音側で異なる組合せのゲージを使用している。バラで購入しなければならないので、セットより割高の値段になってしまうが、テンションのバランスも、ちょうど良いと感じている。
 
 

おわりに

 以上、BM-900を使いこなすための調整および改造について、私自身の体験談を述べさせていただいた。
 「全く、なんて手を焼かせる楽器なんだろう」といつも思うのだが、その反面、問題にぶつかって試行錯誤の改造や調整をすることも、私のギター人生の楽しみのひとつになってしまったようだ。
 「苦労した子供ほど可愛いもの」とはこのことかもしれない、と相棒「Greco BM-900」を隣で眺めながら、ふと思う今日この頃である。
 拙文が少しでも、BM-900を所有している方、これから入手される方の参考となり、お役に立てたならば、光栄である。
 

   (〜追記〜)
9.ピックアップのシリーズ(直列)配線

 1997年のある日、いつも読んでいるある音楽雑誌にブライアン・メイ師匠のインタビュー記事が載っていた。早速読んでいると、なにやら聞いたこともない用語が文中に出てきた。(注:筆者は自慢ではないが、電気関係に全く疎い;;)

Q:「レッドスペシャルの3つのピックアップ(以下PU)がシリーズ接続されているというのは本当ですか?」
ブライアン:「ああ、本当だよ。というか、当時僕は普通のギターのPUがどういう状態で接続されているかなんて知りもしなかったんだよ。で、自分で一番いいサウンドが得られるように接続した結果が、あのシリーズ(直列)接続だったんだ。」

 ・・・シリーズ接続〜?・・・何だ、そりゃ?
 とにかく、その日からその単語は私の頭を離れなくなってしまった。そして、たまたまネット上知り合いになった改造マニアの方に質問してみたところ、シリーズ接続についての概念等を色々と教えていただくことができた。
 すると、まず「ストラトキャスター等の複数のシングルコイルPUのギターというのは通常パラレル(並列)に接続されており、それがいわゆる常識の配線であるのだが、ブライアンの本物のレッドスペシャルや(ブライアン自身がプロデュースしたという)Guild社製のコピーモデルについては、それとは全く違う「直列」での配線で接続されている。よって、2つ以上のPUを同時にON(ハーフトーン)にすると、パラレルでは音量が下がってカワイイ音となるが、シリーズだと逆に出力が増して太い音になる」ということだけ、(小学校の理科の時間に勉強した電池のつなぎ方を思い出し;;)何となく理解できた。
 そして、ブライアン・メイのギターサウンドについて「シングルコイルPUのギターなのに、どうしてあんなハムバッキングPUのような太い音がするんだろう?」という、たぶん私を含め多くのブライアンのファンが今まで疑問だった点についての回答の全てがそこにあったのか!・・と納得する事ができた。

 で、「とにかくシリーズ配線に改造するしかない!」と思い立った筆者は、早速よく利用する有名なあるギター・リペア店にBM-900を持って訪ねた。
 ところが、「お願いします」と依頼したところ、店員さんから帰ってきた返事は「シリーズ接続?あぁ、アレってね〜、音がこもった感じで汚なくなるからね、悪いこと言わないから、う〜ん、やめた方がいいですよ。」・・・であった。
 「・・・汚い音になるって?・・・そんな〜」
 傷心の私は、さらに別のお店に行ったが、やはり同様な応対であった。
 そして、こぼれ落ちる涙を拭いつつ;;帰りがけに立ち寄った書店で1冊のギターの改造&メンテナンスの本を購入した。色々な配線図が書かれた接続関係の部分を読んでみると、やはり「シリーズ接続は、あまり勧められない」と記してあった。
 やはり、シリーズ接続って、一般的に良くないのだろうか・・・?
 結局、配線改造の野望は半分諦めた感じで、その後も「パラレル接続」のままで、バンドでのリハーサルやライブをこなしていた。
 ところが、このHPが開設となって間もなく、掲示板に「元ギター・リペアマン」という1人の「足長お兄さん?」がやってきたのであるが、その方と連絡を取ってみたところ、たいへん親身になって相談に乗っていただけたのである。
 彼の持論によると、残念な事にリペアマンの多くが「シリーズ接続」に対してネガティブな先入観を持っているとのことであった。そして彼は「ブライアン・メイのサウンドが好きならば、シリーズ接続改造は是非やるべきです」と太鼓判を押してくれたのである。
 また、配線上の注意点として、「3つのPUのうち1つだけ磁極(NS)が逆でないといけない」とのアドバイスもいただいたが、私のBM-900にマウントしてある前述のディマジオ・BMモデルPUは、元々その点を踏まえてセンターPUのみ逆磁となるようプロデュースされた物なので、その点問題は無かった。

そして、彼の持っていた「BM式シリーズ接続:配線図」を送っていただける事となり、それをゲットした後、1度は自分でやってみようかとも思ったのであるが、・・・やはり怖くて出来ず;;結局この配線図を見てリペアしてくれそうな楽器店を再度探すことにした。
 そして、今までリペア関係は1度も頼んだことのなかった隣町の楽器屋さんをダメモトで訪ね相談したところ、ラッキーなことに、そこのリペア担当の方が何と(ちょっとだけ)Queenファンであった。そして、ブライアンのギターがシリーズ接続である旨の話をしたところ、「なるほど〜、それは知らなかったですね。ならば、是非やってみましょう!」と、配線改造を快諾していただいたのである。

 そして5日後、楽器店より「完了した」との連絡があったので、早速取りに
伺った。たまたまリペア担当の方は不在で、他の店員さんが「一応、チェックしましょうかね?」というので、その場でVOXの小型アンプで音を出してみた。
 店員さんがセッティングを終え、まずはリアPUのみONにして、Aメジャーのローコードを一発!もちろん、これはなんてことない音だった。
 そして、いよいよ・・センターとリア両方のPUをONにした瞬間・・。
 「スゴ〜イ!何なんだ、この音圧は!・・・これがシングルコイルのハーフトーンだなんて、信じられない!」と、先に叫んだのは筆者ではなく、・・・その店員さんであった。

 と言うわけで、やっとのことシリーズ接続への改造を悲願達成できた次第であるが、2つ以上のPUをミックスすると音圧が上がってファットな音になるので、私自身この改造ができて本当に良かったと思っている。
 理論的には、2個のPUがくっついて1セットであるハムバッキングPUをあえて離れさせて距離を置いた状態なので、ハムバッキングとシングルコイルの中間という見方をされる方もいるようで、私もそれに同感である。

 ただ、シリーズ接続にした結果、デメリットが全くなかったかというと、実は正直なところ、2点ほど感じる部分があった。
 まずは、音が太くなった代わりに、高域が若干落ちてしまったようで、高音の伸びや鳴りがパラレル時代よりも悪くなったような印象を受けた。
 しかし、この問題についてはその後、やはりブライアンがプリアンプ的に愛用している「トレブル・ブースター」を、前述の「足長お兄さん」やこのHPのスタッフの方のご協力によりゲットできたのであるが、それを咬ますことでちょうど良い感じに高域が補強されるようになり、めでたく解決した。
(ちなみに、パラレル接続であるストラトにもトレブル・ブースターを咬ましてみたのだが、今一トレブリーになり過ぎてしまうかな?と感じた。)
 もう1点は、やはりこれも同様の副作用であると思うが、空間系エフェクターのノリ(掛かり具合)が以前より落ちたと感じた。
 もちろんこれについては、各エフェクターのパラメーターを上げれば良いので、大した問題ではなかった。

 やはり、この「PUのシリーズ配線化」については、「音」そのものにおいて最重要の改造ポイントだったと思う。
 Guild社製以外のブライアン・メイ・モデルを愛用されている方には、この点是非お薦めしたいと思う。
 ちなみに、このHPのある住人の方からいただいた体験談情報では、GrecoのオリジナルPUの場合は、センターないしリアPUのポールピースを引っこ抜いて、それを逆に差し込めば、見事に逆滋になる!とのことである。 

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