ブライアン・メイのギター・プレイ・テクニックについて
スケール編
By Kumasan/Guitarist of "Mustapha"
はじめに
この章では、ブライアンのギター・サウンド作りという視点から離れて、基本的に彼の奏法上のテクニックについて、記してみたいと思う。
なお、この章を読むに当たり、リットー・ミュージックより、「Brian May奏法」という教則ビデオが以前から発売されているので、こちらをご覧になられることをお勧めする。
これは、ブライアン本人が自らギターを弾きながら(もちろん、Red Special、VOX:AC-30、Treble Boosterの組合せ)自身のフレーズ、テクニックを解説しているもので、たとえギターを弾かれなくても、ファンにとっては大変貴重なビデオである。
まずは、ブライアンのギター・ソロのスケール(音階)の特徴について述べてみたい。
Queenのような幅広い音楽性のバンド・ギタリストであるため、一概には言えないのは当然であるが、敢えて言わせていただくとLed Zeppelin のジミー・ペイジと同様に、基本的には「メジャー・スケール」と「ブルーノート・スケール」の二本立てのペンタトニック系ギタリストと言えるだろう。
このスケールの名前だけではイメージ出来ない方のために、一応文章で説明しておこう。
まず「メジャー・スケール」は、誰もがご存じであり、頭の中でも歌える音階だと思う。いわゆる「ドレミファソラシド」の事である。(それ以上でも、それ以下でもない)
「な〜んだ」と思われる方も多いと思うが、この「学校で習ったもの」というイメージの「ドレミ音階」を、あのような華麗なるフレーズやソロに昇華してしまう事こそが、ブライアン・メイの凄さなのである。
その使用頻度はダントツで、特にフレディやジョンの曲において開花するスケールである。
例を挙げることも必要ないだろうが、一応代表曲としては、
「Bohemian Rhapsody」
「Somebody To Love」
「Spred Your Wings」
「It's A Hard Life」
「You And I」
「Play The Game」・・・
(切りがないのでこのくらいにする)
「ブルー・ノート・スケール」。
ロックやブルーズやポップスのギター・ソロを聴いている方なら誰でも耳にしている音階であるが、そのイメージを敢えて言葉で言うならば「いわゆるドレミではない硬派の(?)音階」という感じだろうか?
では、五線紙上のオタマジャクシ的に解説してみよう。
まず、スケール(音階)については、ハ長調を例に取ると「ド、レ、ミ」という表記を「1度、2度、3度」という数字に置き換えて語られる事が通常なので、ご存じない方のために、記してみよう。Cメジャー・スケール
音名 ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド 度数 1 2 3 4 5 6 7 8(1) これが前述の「メジャー・スケール」──細かく言えば、『キー(曲の調性)が「C(もくはド」のメジャー・スケール』──である訳だが、この中の3度(ミ)と7度(シ)の音を半音フラットさせると(下げると)、「ブルーノート・スケール」の出来上がりである。更に、5度(ソ)と4度(ファ)の間に、♭5度(♭ソ)の音を仲間に加えてやれば、もう完璧である。
「ブルーノート・スケール」の「メジャー・スケール」と異なる特徴は、2度と6度の使用頻度が、他の音に比べて意外と少ない点である。逆に言うと、「1度、♭3度、4度、5度、♭7度」の5個の音が基本と言える。Cブルー・ノート・スケール
音名 ド レ ミ♭ ファ (ソ♭) ソ ラ シ♭ ド 度数 1 2 3 4 − 5 6 7 8(1) ↓
基本の五音
音名 ド ミ♭ ファ ソ シ♭ 度数 1 3 4 5 7 代表曲の中で、この基本(5音)スケールばかりを弾き捲っているのが、「Brighton Rock」(スタジオ・バージョン)のギター・ソロである。
通常は、前述の「♭5度」の音を挿入するので、渋くブルース的な雰囲気も味わえるスケールなのであるが、何故かこの曲では(曲中ブレークの早弾きは別として)、その5個の音だけで16分音符を弾き捲っている。
面白いことに、このスケールは、なんと日本の(特に津軽系の)民謡音階と全く同じ音使いであり、この曲でのプレイが「ブライアンのじょんがらギター」と発表当時から言われている点も、まさに的を射た表現であったと思う。
ちなみに、他の曲においては、♭5度や6度等の音もよく使用するので、当然ながらこの曲のような日本的雰囲気は無く、歴としたブリティッシュ・ロックのスケールを奏でている。ところで、やはりジミー・ペイジと共通部分なのであるが、ひとつの曲の中で「ブルーノート・スケール」と「メジャー・スケール」を交互に弾く事も、ブライアンの特徴と言える。
これは、エリック・クラプトンやジェフ・ベックといった、ブライアンにとっての先輩ギタリスト達も昔から御用達のパターンであるが、同じコード進行でのソロが続く場合に、場面展開的なニュアンスを感じさせる効果的表現法である。(野球のピッチングで言うと、変化球だろうか?)
ブルーノート・スケールが基本のロック曲のソロで部分的にメジャースケールを使うパターンと、メジャー・スケールが基本のポップス曲において敢えて硬派のブルーノート・スケールを弾くパターンがあるが、ブライアンはどちらも使用する。前者は
「Liar」
「See What A Fool I've Been 」
「Ogre Battle」
「Tie Your Mother Down 」・・・後者は
「I Was Born To Love You 」
(一部ブート音源での)「Somebody To Love 」
「If You Can't Beat Them 」・・・中でも、最も顕著な例が「Doing All Right」で、大サビ後と3番の後で全く同じコード進行のハードな間奏(ギター・ソロ)が出てくるが、お聴きの通り、前者は「ブルーノート・スケール」でロックっぽく、後者は「メジャー・スケール」でポップな雰囲気のギター・ソロを展開している。これによって、同じパターンの繰り返しによるマンネリ化をほとんど感じさせない事に成功している。
それ以外のスケールについても、簡単に触れてみよう。
「Good Company」「Leroy Brown」のソロで使われているのが、「ディキシーランド・ジャズ・スケール」で、これはメジャー・スケールの発展型と言えると思うが、メロディが半音単位で上昇または下降するものである。
ピアノ的にイメージすると、曲のキーが「C」(ハ長調)の場合に、基本的なメジャー・スケールには含まれない「#」や「♭」の黒鍵の音を、経過音やコード・トーンとして多用するという感じである。
「Inuendo」や「Death On Two Legs」では、一部であるが「スパニッシュ系スケール」も使われているが、飽くまで隠し味程度である。
ちなみに、前者のアコースティック・ギターのパートにはYESのスティーブ・ハウが参加している。(個人的には、ブライアン1人で演奏して欲しかったが・・)
「Mustapha」では、アラブっぽいオブリガードが効果的に奏でられているが、これも曲そのものの雰囲気によるところが大きい。
その他にも色々なパターンのスケールを部分的に奏でているが、要は曲の雰囲気や流れにあったギターソロを作り出している結果と言えよう。
実際のところ、相当腕の立つプロ・ギタリストでも、曲の雰囲気にマッチしない(浮いた)ソロを弾いてしまうケースが意外と多いもので、こういった点、ブライアンは「音楽の引出し」が豊富であるがゆえか、大得意である。
(ただ、初期の頃は、神経の使いすぎにより、十二指腸潰瘍等を病んでしまった面もあったという逸話も残っているが・・・?)
いずれにしても、そう言った「懐の深さ」においては、他の追従を許さない名ギタリストであるだろう。