Fryer's Replica by Tri-Sonic
Greg Fryerがレプリカの製作をはじめたのは1996年のことである。彼は有名なGuildのものを含め、これまで製作されてきたRed Specialのレプリカがオリジナルを忠実にコピーしたものではないことに不満を持ち、自らその完璧なレプリカの製作をBrianに申し出たのであった。Brianは当初、「またか」と思ったようだ。恐らくGuildとのコラボレーションに少なからぬストレスを感じていたのではないだろうか。それでもGuildのレプリカに完全には満足しておらず、まったく同じスペックのレプリカの必要性を強く願っていたBrianはその申し出を受けることにする。
Gregは大量の計測機材を携えてロンドンに赴き、Red Specialの徹底的な計測を行い、その数値情報はCADデータとしてGregのコンピュータの中に格納された。GregはRed Specialを大変丁重に扱い、Brianの許可なくしてビス1本外さなかったそうだ。Brianは、当初その態度に大変感銘を受け、話し進むうちにGregのアプローチがこれまでのGuildのものとは異なることを理解した。それは工場生産の能率を考えた大企業のアプローチとは違い、Brian自身が30有余年前、父ハロルドとRed Specialそのものを製作したときのアプローチそのものだったのである。BrianはRed Specialを作成した当時のままの工房へとGregを案内し、Gregは製作のための冶具(※)や塗料などを調査した。Gregはオーストラリアに戻り、製作を開始した。
彼が再びBrianの前に姿をあらわすのはそれから1年半も経ちBrianがすっかりGregのことを忘れさったころのことだ。Gregは3本のレプリカとともに現われた。Fryerレプリカの誕生であった。
※一般的な工具と異なり、特殊な用途専用にあつらえた工具を冶具(じぐ:英語でもjig)と呼ぶ。
(2)John、Paul and George Burns
”Greg Fryerによるレストア”の節に書いた「老貴婦人(Old Lady)」の3人の息子たちといったのは、このFryerの手になる3本のレプリカである。なぜ「息子」なのか?その訳はこうだ。Gregが製作した当初、3本のギターは番号で呼ばれていた。Brianがこれを嫌い、自らそれぞれの愛称を3人のビートルの名前を取り、John、PaulそしてGeorge Burnsと名づけた。GeorgeにのみBurnsがついているのはBrianのオヤジギャグのせいである。Burnsは搭載されているピックアップのブランドに引っ掛けており、また、George Burnsというのはアメリカンコミックの主人公の名前らしい。Georgeは他の二人(2本?)と明らかに仕様が異なり見分けやすい。ちなみにPaulはGregの手元に残り、Brianが所有しているのはJohnとGeorge Burnsの2本である。
(3)Fryer's Replicaの仕様
Fryer's Replicaは現在まで3本が作成されており、JohnとPaulが赤、Georgeがナチュラル・フィニッシュである。 ボディは2タイプあり、JohnとPaulはオリジナル同様オークのボディをマホガニーでサンドイッチしたもの、 Georgeは木部をすべてニューギニア・ローズウッドで作成したものである。どちらもセミ・ホロウ・ボディの構造となっている。ボディの塗装はオリジナル同様、ラスティンズ・プラスティック・コートで仕上げられている。
ネックは1ピース・マホガニー、指板はJohnとPaulが黒く染めたオークにボディ同様のクリア塗装を施したもの、Georgeはローズウッドそのままである。(クリア塗装なし) Georgeの外観の特徴のひとつとして5フレットのマーカーが、ただのドットではなく、十字星(棘?の本数は8本)の形のインレイとなっていることがあげられる。また、3本ともセットネック(ネックとボディを糊付けしたもの)となっており、オリジナルのボルト・オン仕様は採用されなかったようだ。ボディとネックは19フレットでジョイントされている。フレットは0フレット仕様で、使われているのはJim Dunlop社の6130(ジャンボ)という種類のフレットワイヤーである。 ネック幅はオリジナル同様、ナット側の幅の太い、分厚いネックである。 ペグはリアのノブでロックするタイプのシャーラー製、つまみはオリジナルに似せるためにゴトー製を用いている。
ピックアップはケント・アームストロングの手になるBurns Tri-sonicである。Gregはこれに対して、金属ベース+金属カバーのピックアップに特有のハウリングを押さえ、Brianのオリジナル同様のトーンを得るために、まったく別のボビン、コイルを用い彼独自の秘密の方法で処理したものを使っている。
ピックガードは完全なレプリカを作るためにオリジナルと同じ黒いパースペクス(訳者注:アクリル板の一種と思われる) を使用している。
モノ作りの観点から見ると、ブリッジとトレモロ・ユニットが最も製作に時間を要し、てこずるポイントである。これらは一品限りの特注メーカーや、もちろんギルドにとっても正確に複製することが困難であったが、Gregはそれを望み、事実それを成し遂げたのである。ただし、筆者の観察によれば、ブリッジの構造は幾分オリジナルと異なるようである。オリジナルのローラーブリッジはブリッジのブロック上に単純に置かれているだけで、それを弦のテンションで押さえている構造となっている。(Brianが、滅多にないことだが、弦を切ってしまったときにローディがローラーを探し回るためにステージ上を右往左往したという逸話が残っている。)対してGregのブリッジではローラーは可動するローラー受けに固定されているようだ。その点でこのブリッジはKid'sのモデルに非常に似通っている。ただし、各ローラーの右側のブリッジブロック部分に非常に小さな穴が見え、筆者はこの穴の中のネジによってオクターブ調整を行うか、あるいはローラー部を固定しているものと想像している。ローラーはAndrew Mayの手になるステンレス製、ブリッジ基部はRichard Den Brinkerによるアルミニウム製。Brinkerはポルシェの改造を専門にしている人である。
トレモロブロックは軟鉄でオリジナル同様、トップの薄板の下に隠されたナイフエッジと1928年製パンサー2輪車のバルブスプリングを模して作られたスプリングによって固定されている。弦のボールエンドはトレモロブロックの上部(ボディ上に露出している部分)の中のザグリの中に収まるようになっている。ボールエンドぎりぎりの部分しかトレモロブロックの中に隠れないため、弦の製造上の端(ボールエンドで折り返して弦に巻きつけてある。)はブリッジとトレモロの間に露出している。ギターを弾く人なら想像できるとおもうが、この部分はぶつける角度と強さによっては容易に手を切ってしまう。Brianが常々黒いビニールテープをこの部分に巻いているのは、演奏中にここに触れて右手を怪我したためだと思われる。
(4)How to get your Fryer's
Fryerレプリカを欲しがる人は大勢いるだろうが、実際に手にいれることのできる人は非常に限られた数になるだろう。なにより、大量生産を前提にした作りになっていないので本数が限られるだろうし、第二にその価格はかなりの高額になるだろうと思われるからである。(予価5000ポンド(=100万円)と報じられている。)
それでもどうしても欲しい人は下記に連絡してみると良いだろう。ただし、Gregは大変多忙で、現在はTreble Boosterを製造段階に乗せるのに奮闘しており、Red Specialレプリカの方は当分お預けになりそうだ。
Greg Fryer Guitars and Pickups,
9/505 Pittwater Road,
Brookvale,
Sydney,
NSW,
Australia 2100.
Tel: 0061 2 9938 3379
Fax: 0061 2 9938 3236