さぁ、問題もついに4問目となった。

諸君、わたくしの出題する
幾つかの問題たち、いかがであろう?

何問かの難問たち・・・

幾つかは解けたであろう。

そうでなければ、これより先わたくしを
楽しませてくれそうにないからな。




問題.04





 快晴である。雨が降ってきそうな雰囲気など微塵も感じられない。そんな天気だ。

 場所は、中村青司という建築家が設計から建築までしたという、ここ「暗黒館(あんこくかん)」である。まだ建ったばかりである、ここ「暗黒館」で、まさかこれから殺人事件が起ころうなどとは・・・
 ・・・さらに、今日(こんにち)殺人事件が起こったあとも、何度か殺人事件が起こったり、館が炎上したりで何度か建て直しをする羽目になるとは、誰も想像すら出来ないでいる。
 それに、今日(こんにち)の時点で、建ったばかりであるここ「暗黒館」であるが、すでに何件か事件が起こったあとであった。
 

 そこへやってくる9名の団体さん。彼らは東京の大学から来た客だった。男だけのその9人の団体は、汗をふきながら館の門をくぐった。
 季節は夏。8月24日である。

 「おぃ、みんないよいよ今年も始まるな。」
グループの中でもリーダーシップをとっているらしき人物、加藤順平(かとう じゅんぺい)が云った。

 彼らは「ミステリー研究会」というサークルに入っているらしく、今日(こんにち)はここ「暗黒館」で加藤の執筆した「悪意と殺意の融合する時」という、デビュー作にして特別賞をいただいたこの作品を演じる為やってきたのだ。
 ここ「暗黒館」は、重い鉄の扉を開けるとそこはホールになっている。ホールをまっすぐ行くと食堂があり、食堂の奥には厨房がある。食堂の両隣にはそれぞれ左にバス、右にトイレがある。その他には、遊戯室、図書室、ワイン室が、バスと今彼らが入ってきた扉の間にあり、カラオケルームが結構なスペースを使用して、トイレと今彼らが入ってきた扉の間に存在している。又、2階にはそれぞれ個々の部屋が10部屋あった。それぞれの客室にはトイレがついている。

 加藤は、一番右の部屋に入った。
 その隣に畠山利里(はたけやま としり)が入った。人見知りのする畠山は、いろんな女性と話しをしている加藤を見て、いつも羨ましく思っていた。
 畠山の隣の部屋に入ったのは、新田真(にった しん)。真面目一色な彼の趣味は、クラシック音楽鑑賞と、読書。そして、ミステリー研究会のみんなとこうしてこういう所に来ることである。
 そして、空室を隔てて次の部屋に入ったのは、長野翔(ながの しょう)その人である。彼については特に語ることもなかろう。普通の人物である。
 長野の隣の部屋に入ったのは、鬼沢尚也(きざわ なおや)である。彼は、「鬼沢」という苗字には似合わぬ、すごく優しい人物である。顔はあまりかっこよくはないからか、異性からの人気よりも同姓からの人気や支持があった。
 そして次に七瀬ツトム。彼は、先に言っておこう。ホモである。彼は、ひそかに加藤と井上を狙っていた。
 そして、そんな七瀬の隣の部屋に入ったのが、そんな七瀬の気持ちなど知る由のない、井上吉彦(いのうえ よしひこ)である。井上は、あきらかに女性からもてる顔立ちをしていた。加藤からいろんな意味で恨まれていたとかいないとか。
 井上の隣には、尾崎貴彦(おざき たかひこ)。彼はとても歌が上手い。実は尾崎は、今回はミステリー研究会の行いよりも、1階にあるカラオケルームに閉じこもるつもりでいた。
 そして、最後に顎孝太(あご こうた)。顔も普通、体系も普通、偏差値も普通、運動神経も普通。顎は長野と仲が良い。普通同士だからか。

 各々の部屋に入った彼らであった。

 何十分か、何時間か。彼らは一人として自分の部屋から出てくる者はなかった。それはそうかもしれない。前回の「光明館(みつめいかん)」と同様、この「暗黒館」も、駅から小1時間以上歩くのである。電車で来た彼らは、当たり前のごとく個人の部屋のベッドの上で倒れていることであろう。

 先程までは全く雨など降りそうもなかったのだが、急に雨が降り出してきた。しかも勢いがすさまじい。アマゾン地帯の「スコール」を思わせるような勢いだった。しかも、「スコール」のように一瞬で止むことはなかった。・・・それはまるで、彼らをここ「暗黒館」に閉じ込めようかという風だった。

 主によって、夕御飯だということで起こされた彼らは、1階の食堂へと降りて行った。住み込みの富士野が、テーブルに座った彼らの前に、丁寧に料理を運んでいた。

 夕御飯を食べ終わった彼らだったが、この日はさすがに疲れたか、加藤の作品に触れるのは翌日からということにして、各々好き好きなことをしていた。

 井上は気分が悪いからと、一人2階へ行き、自室に閉じこもった。
 加藤は、七瀬を誘って遊戯室にビリヤードをやりに行った。七瀬はニヤニヤしながら加藤の後に付いていった。加藤もまた、七瀬の気持ちなど知らない。
 新田は、食堂に来る時に自室より持ってきた小説、otokonoko著書「悪意」を読んでいた。何の賞もとっていなかった小説だったが、新田には何故かヒットした作品であった。
 長野と顎は、図書室に入った。
 尾崎は早速、カラオケルームに一人行った。
 畠山は食堂のテーブルに座ったまま、新田のように本を読んだりするわけでもなく、ただ座っていた。
 彼らの食べた食器の後片付けをする主と富士野。そして、二人の手伝いをする鬼沢がいた。


 気分が悪いと言って自室に閉じこもっていた井上が、もう平気だと言い、1階に降りてきたのが夕御飯が終わった20時からちょうど2時間後のことだった。井上は、尾崎のいるカラオケルームへ行った。
 図書室にいた長野と顎は、二人して何かを探していたらしく、それを今発見したらしい。本の表紙には「普通とは何か?」と書かれている。
 遊戯室にいる加藤と七瀬。七瀬の7連勝中であった。汗まみれになって「もう一回!」と頼みこむ加藤の姿があった。実は、七瀬はビリヤードがすごく上手かった。
 畠山は、暇に耐え切れなくなり、一人図書室に向かった。丁度、用事を終えて図書室から出てきた長野と顎の二人とすれ違った。
 ようやく食器の後片付けと、食器を洗うのが終わった主と富士の、そして鬼沢。
「どうもありがとう。」
「ありごうございます。」
感謝の言葉を言われ、いえいえと返す鬼沢。
 新田は、「悪意」を読み終え本を閉じた。満足気な顔をしている。衝撃的なラストに、彼も満足したのであろう。
 尾崎は、井上が来たことなどお構いなしに歌を歌いまくっていた。また、マイクは絶対に放すことはなかった。井上は歌を歌えないでいた。しかし、上手すぎる尾崎の歌をずっと聞いているのも、人気だけで売れているような歌の下手な歌手やアイドルの歌を聞いているよりは、はるかに気持ちの良いものだった。そう思って、井上は自分が歌を歌うことは諦めた。丁度その時、尾崎は井上陽水の「少年時代」を歌っていた。

 俺は考えていた。まず血祭りにあげるのはどいつがいいだろうか。

 時刻は23時を回った。
 「俺、そろそろ寝るわ。」
そう言って加藤は自室に戻った。加藤を追うように他の者たちもぱらぱらと部屋に戻って行った。



 翌日の朝、朝食だと起こされた彼らは1階の食堂へと、足を運ばせた。少しづつ少しづつ集まる彼ら。
「加藤くんは?」
そう言う長野の言葉に皆が反応する。
「そういえば・・・」
声にしたのは七瀬だ。
「俺、部屋まで呼びに行ってきます。」
そう言ったのは鬼沢だった。鬼沢は1人2階へと向かい、一番右にある加藤の部屋を目指した。加藤の部屋の前に到着した鬼沢は、
「加藤くん、加藤くん!」
そう、叫んだ。・・・中から返事はない。おかしいな。そう思った鬼沢はドアに鍵がかかっていて開かないだろうな、と思いながらも無意識にドアのノブを掴み回していた。彼の考えとは意を反して、鍵がかかっていなかったため、容易く開いたドア。中には加藤の姿はない。慌てて、1階に下りる鬼沢。食堂に着くと、
   「みんな、大変だ。加藤くんがいないんだ。」
すごく大きな声になっていたんだろう。すぐそばにいた新田が一瞬耳を ふさいだのが見えた。興奮していたんだ、しょうがない。
「え?」
ほぼ同時に、皆がそう言った。
「とりあえず、みんなで手分けして探してみようよ。」
そう言ったのは井上だった。

 こうして、主と住み込みで働いている富士野を巻き込んでの、加藤探しが始まった。

 数十分が経った。依然として加藤は見つからないでいた。
 手分けして探していた全員が、また食堂に集まっていた。
「もしかしたら、この館から出たんじゃないの?」
そう言ったのは顎だ。
「いや、それはないでしょう。」
即座に返したのは主だった。
「といいますと?」
顎も引かず、聞き返した。
「いや、夜中も何かあってはまずいと、富士野くんと二人で交代で扉の所で見張りをしているんだよ。ね、富士野くん。」
主はそう言って、富士野を見た。
「たしかにそうです。こんな19歳の女の子に、そんなことさせるんですよ、酷いと思いませんか?」
確かに酷い。・・・でも、主はともかく、富士野が嘘を言っているようには見えなかった。でも、するとどうだろう。加藤がこの館から出て行ったということは絶対にないということではないか。ということは、加藤は今もやはりこの「暗黒館」の中にいるということになる。
「他に調べていない部屋はないんですか?」
そう言ったのは尾崎だった。主は、
「ないことはないんだが・・・でもあの部屋は鍵がかかっているし。」
「どこですか?その部屋というのは?」
興奮して問うたのは鬼沢だ。
「2階の、10部屋のうちの君たち9人の入っていない部屋が1部屋あるだろう。」
「あっ!!」
9人中6人ぐらいが、そう反応した。確かに2階には1部屋空き部屋があった。それは新田と長野の部屋の間にあった。主と富士野以外の全員が、2階のその部屋へと向かった。鍵は何者かによって壊されていた。先頭にいた鬼沢がその部屋のドアを開けた。無残な光景が広がっていた。不自然な方向に曲がっている、両手両足。うつ伏せになっている、その加藤の首は、胴体より切り離され、部屋の隅に転がっていた。その 凶器と見られる斧のようなものが加藤の首の近くに落ちていた。
「あ、あれは?」
驚きで動けないでいた他の者を尻目に、七瀬は一人その部屋に入り、デスクの上に乗っている電源の入ったノートパソコンを見やった。そこには・・・



『諸君、わたくしはそこに転がっているであろう加藤の両手両足を不自然な方向に曲げ、首を斧で切断した者である。まぁ、わたくしの名はXとしておこうか。さて、そんなわたくしXだが、諸君らの中にわたくしは混ざっている。何故かって?それは、もう主から聞いただろうが、誰もこの館からは出ていないのだから、今ここに集まっている諸君たちの中に犯人であるわたくしXが混ざっているに決まってるであろう。でも、それは主が嘘を言ってなければとお思いであろうから先に言っておこう。主と富士野は嘘はついてはいない。嘘は・・・。ところで、諸君らと共に今一緒にこのノートパソコンを見ているであろう、わたくしXからわたくしXの正体のヒントを差し上げよう。


tomorrow,rain,blue,walk,love

まぁ、この暗号を解いてもらえればわたくしXの正体は解ると思う。では、わたくしXも諸君らと共に、この暗号を一生懸命考えるふりをしよう。では、健闘を祈る』


 そう、しめくくられていた。
 やがて、七瀬以外のみんなも、七瀬に言われ、ノートパソコンを見た。  皆が皆の顔を観察し始めた。

 俺は顔には出さずに、心の中で笑っていた。大爆笑していた。皆が皆を疑っている。楽しくて楽しくてしょうがない。もしかしたら、新田あたりがあの暗号を解くかもしれない。だが、どちらにしろすぐには解けないであろう。





さぁ、諸君。
今回のこの4問目、いかがだったかな?

最初、すごく短くするつもりだったんだが
すごく長くなってしまったわけだが。

まぁ、暗号はすごく簡単に思う。


もちろん、ここで考えてほしいのは
ずばり、犯人の名前だ。



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