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隠密漫研心得の状(外記)
知らなかった方がよかった「やおい」の歴史

by総元締きゃみさん
☆序章
 「やおい」なんと怪しい言葉だろう。我々男性にとって一番縁が遠く、そして未知の世界が「やおい」である。同人誌と言うだけでも腰がひける一般市民にとって「やおい」とはまさに暗黒のカオスと言ってもよかろう。そんな「やおい」文学に対して我々は何の知識もないのに迫害を続けてきたわけである。何の根拠もないのに差別を続けるのはやはり歴史の徒である我々にとっては回避せねばならぬ事項である。そこで、今回このようなレポートを書くにいたったわけである。
☆やおい
 そもそも「やおい」とは一体何を意味する言葉なのであろうか? まあ、簡単に言えば「女性の手によって作られる、男性同性愛(ホモ)漫画や小説」の事である。漫画やアニメ、小説、ゲームなどのキャラや、歴史上の人物、芸能人、歌手、スポーツ選手などの実在の人物、そしてたまにオリジナルキャラなどから、お好みのカップルをチョイスして同性愛関係に見立てるパロディーの一種なのである。ほら、もう普通の神経の男性は引いちゃったでしょ。
☆やおいの曙
 では、「やおい」と言うものの起源はいつ頃であったのだろうか。一般的な見解によると同人誌活動が開始されたという1970年代半ばにはすでに「やおい」的なものがあったとされる。1975年12月21日、東京虎ノ門消防会館会議室で開催された第1回コミック・マーケット(この頃のコミケはサークル数32、一般参加者が約700人という小規模のものでしかなかった)においては少女漫画系漫画研究会「QUEEN]の機関誌などを見ても、はっきりとした男性同性愛の描写は見られない。しかしそれでも非常に耽美的な文脈で描かれた男性の裸体が多く見られた。
 この頃は主に洋楽ミュージシャン(レッド・ツェッペリン、デビット・ボウイ等)やキャプテン・ハーロックなどの漫画を元にパロディ漫画が製作されていた。この頃の作品の多くは「風と木の詩」に代表さる男性同性愛を描いた24年組少女漫画の影響を受けており、耽美的なキラキラした男性キャラクターに酔い、それまで禁忌とされてきた性的なものを描くことが多く、最近にみられる漫画の裏読みなどは見受けられないのである。
☆矢追ではない!
 さて、男性同性愛同人誌はいつから「やおい本」と呼ばれるようになったのだろうか。実はこれについてはある程度特定できるのである。「やおい」の初出とされるのは、同人誌「らっぽり」1979年12月20日号誌上でなされた座談会である。この時の参加者で今でも漫画家で活躍している波津彬子の話によると
<まず、言葉の出所から、約15年前「ラブリ」という漫画研究会で、自分の作品や他人の作品を評 する時に(この会では批評ノートや、自由伝言ノートが回覧されていました)「山なし」「落ちなし」「意味なし」という言葉が流行りました。この三拍子そろった漫画はあまりほめられたものではない、という自嘲的な意味を込めて、「やおい」と呼んだのが始まりです。> 
と、言うことらしいのだ。こおころの「やおい」と呼ばれた漫画は、男性同性愛に限ったものではなく、また「やおい」という言葉自体が仲間内で自然発生した言葉遊びだったということなのである。(ちなみに、この頃の同性愛パロディは、ホモねた等の名で呼ばれていた)
 さらに、波津彬子の話を引用すると。
<でも、何かがある、この男同士の間に流れるものは何?という感動が私にはあったのです。そこで、私と磨留さんは「山も落ちも意味もなくても、色気はある」というコンセプトで本を作りました。これが「らっぽり、やおい特集号」です。>
そう!これが現在の「やおい」はもとより同人誌の繁栄の源流だったのである。この「やおい」の概念により同人世界は一変する。つまり、世の多くの素人どもが「そっか、別に山が無くても、落ちが無くても、意味が無くてもいいんだ、自分が描きたいものを描けばいいんだ。」と開き直れたのである。
☆アニパロ爆発
 1980年代の初頭は同人誌世界の大転換点であった。79から80年にかけてコミケの代表が現在の米沢嘉博氏に代わり、コミケ会場も移動、入場者も七千人を越え、コスプレもこの頃始まった。
 その牽引車になったのが「アニパロ」つまりアニメパロディだったのである。「やおい」と「アニパロ」は切っても切れない関係なので、ここは時代を少しさかのぼってしまうが「アニパロ」と「やおい」、そして「アニメ」の関係を見ていきたいと思う。
 既存の漫画やアニメの「パロディ」同人誌を作り流通させると言う行為が成立したのは前述した通り1976〜77年頃である。それ以前の既存の作品、作家のファンクラブなどのサークルでは、その作品を「パロディ」化してしまうことは、倫理的に責められる行為であった。当時の逸話としたは、同人誌に「トリトンって色っぽいからね」と書いただけでも袋叩きにあったらしい。
 しかし1978年頃になると、そうした状況が変化し「アニパロ」が主流になっていった。そんなこの年、「やおい」界を一変させる偉大なアニメが放映されたのである。何だと思う?それはスパーロボット大戦でもお馴染み「闘将ダイモス」なのである。
☆お前の空手をみせてやれ!
 「闘将ダイモス」はサンライズ製作のロボットアニメで、ロボットなのに空手で闘ういかした野郎である。主人公が敵宇宙人の司令官の妹と恋いに落ちるという、ロボットアニメ版ロミオとジュリエットと呼ばれた作品であり、その悲恋が人気を集めた。さて、こんな作品の何処に「やおい」の入り込む隙間があったのだろうか?それは、主人公の恋人の兄、敵司令官の「リヒテル」の存在である。
この頃の「やおい」界ではアニメを題材にしたホモパロディは認知されておらず。専ら洋楽ミュージシャンを題材にしたホモ漫画が主流だった。そんな中以前から洋楽ロック系耽美同人誌を製作していた、竹田やよいのサークル「DMC」が「リヒテル」を題材にした「やおい本」を製作したのである。「リヒテル」は金髪で切れ長の目の美形キャラであり、それが洋楽系の「ホモパロ」を描いていた人にも訴えるものがあったのである。
この「闘将ダイモス」のやおい本によって、そうした同人漫画を求める層が発掘され、商業ベースにのったことにより「アニパロやおい本」は成熟しはじめることになるのである。この時点で「リヒテル」で遊ぶことはすでに当たり前になっていたのである。
☆美形ライバルの系譜
 「リヒテル」というキャラが生まれるまでには、これまた色々なアニメの「No.2キャラ」の歴史や「ライバルキャラ」の歴史を語らなければならないが、これは次回の隠密漫研のテーマとしよう。
 さて、アニメ界のカテゴリーの中では「リヒテル」は「美形ライバル」に分類される。アニメ界では巨人の星の「花形満」を始祖とし、ロボットアニメ界では勇者ライディーンの「プリンス・シャーキン」を開祖とする由緒正しい「美形ライバル」は「リヒテル」のやおいデビューをきっかけに軒並み同人少女の餌食になっていった。
 まず最初に餌食にされたのが翌年79年に放映された「機動戦士ガンダム」のシャア・アズナブルであった。そしてその後も、「イデオン」のギジェ・ザラル、「六神合体ゴッドマーズ」のマーグ、「ダンバイン」のバーン・バニングス、「ボトムズ」のイプシロン、などが次々と食れた。
 しかし、この時点では「ガンダム」のように多くの登場人物がいたとしても「やおい」の対象となりえるのは「シャア」とその親友であり仇である「ガルマ・ザビ」の二人だけであり、近年にみられるひとつの作品から自在にカップルを選ぶことはできなかった。「ランバラル」や「スレッガー」ではやおい少女は萌えることはできなかったのだ。まして「黒い3連星」の3Pなんてのは・・・つまり、同じカップルで他の作品がでるまで盛り上がらなくてはならなかったのだ。
☆マーグ!マーグ!マ〜〜グ〜〜〜!
 これらの美形ライバルとやおい少女の蜜月の状態はアニメ制作者側にも伝わり、現在にいたるまで女性視聴者獲得のためにアニメには必ずこの手のキャラが存在し、そして物語に深くからんでいる。
 この方式を露骨に表した作品として前述した「六神合体ゴッドマーズ」(81年)があげられる。ゴッドマーズの物語では主人公「明神タケル」(マーズ)と敵の司令官であるマーグは生き別れの双子の兄弟であった。マーグはマーズにいつか出会えることを願って、超A級の超能力を持っていながら心神喪失のふりをして敵であるギシン星皇帝ズールを騙しマーズを陰ながら手助けしていた。しかしそのことが発覚し、ズールによって洗脳されてしまう。そして地球攻撃の司令官にされてしまったマーグはそうとは知らない弟マーズによって殺されてしまうのである。
 こんな設定にやおい少女は狂喜乱舞してマーズ&マーグの兄弟愛をこぞって同人誌に書き立てた。その様子を見ていたアニメ製作会社は、82年に劇場版ゴッドマーズを公開した。なんとこの時には、マーグに魅了されたやおい少女たちがマーグの悲劇の死を悼み、マーグ葬式を執り行ったという伝説が残るほどの熱狂ぶりっだたらしい。こうした女性たちのセクシャルな視線を考慮してか劇場版ではマーグの全裸描写まで登場させた。しかしこれに対してはやおい少女は、落胆と反発をもって迎えたらしい。こうした露骨に「狙った」描写を作り手が行ったことへの反応だったのである。
☆やおいの楽しみ
 「やおい」の楽しみというのは、表面ではセクシャルなものを見せていない男性キャラクターを、自分の手で積極的に男性キャラクターを「脱がす」というところにあるらしい。近年流行ったアイドルコラージュ(アイコラ)と同じようなものだと男である私は愚考するわけだが、脱ぐわけないアイドルを脱がせるところに男のパトスはたぎるわけで、一時期アイコラの数が一番であった広末涼子が恋人発覚や色々なスキャンダルでその処女性を喪失した途端下火になったのと同じ現象であると考えるわけである。やおい少女にしても自分たちの創造力で男性キャラクターを脱がすことに萌えているのである。 
☆ロリコンとやおい
 79〜83年にかけてコミケの状況は規模にしても内容にしても大きく変容をとげた。やおい少女たちも高校生ぐらいだった初代「やおい」のメンバーも社会人になり、経済的に余裕ができたため同人誌活動はさらに活発化してきた。さらに彼女たちの作品に影響された新しい世代が参入し、そして世代別集団が形成されるという構造が生まれはじめていた。
 しかしこの時期、アニメ雑誌「アニメージュ」(徳間書店)が「ホモパロ」同人誌の情報を掲載しなくなるという事態が起こる。この時代にはすでにペ○スや漢同士のアナルセックスを明確なかたちで描写する「やおい本」はでまわっており、小学生や中・高校生を主な読者にしていた「アニメージュ」としてはやむを得ないだろう。さらに、この結果を生じた主原因として「ロリコン」同人誌の躍進があげられるだろう。
 「やおい」の拡大に呼応したがごとく、この頃「ロリコン」同人誌市場もさらなる拡大を続けていた。いわゆる「男性向け創作」(コミケ界におけるポルノグラフティの婉曲的な呼称)は当初、たとえば宮崎駿の「未来少年コナン」のヒロイン「ラナ」のヌードを描き、セックスを演じさせるといった、「タブーの侵犯」を基調とするものとしてはじめられたと考えられている。これについてもいつか言及しなくてはならないと思うが、今回はこれがその後の「美少女エッチ漫画」の起こりとぐらいととらえてもらいたい。「やおい」と「ロリコン」という同人誌漫画という文化がどういった過程を経て、今日のように性的なフェティシュを開放していったのかについては研究がすみしだい報告したいと思うが、とにかくこのような性的な同人誌の氾濫は逆にマスメディアからの追放を余儀なくさせたのである。
☆やおいの分化
 このようなやおい同人誌のマスメディアからの追放により、いままで通信販売を手段として同人誌に触れていた主に地方の読者には、同人誌そのものとそれについての情報を得る方法が失われてしまった。そのため彼女らの欲求は、コミック・マーケット に実際に行くことに集約されりようになり、コミケでの同人誌即売会という流通システムの重要性はますます増していった。
 しかしその過程で、コミック・マーケット(もしくは大阪や名古屋などの地域で行われていた同人誌即売会)に参加できた者と、そうでない者の間に格差が発生するようになり、やおい少女の中での「コミケ」の神聖化現象が着々とおこりつつあったのである。
 そして、止まる事なく拡大していく「やおい」同人誌のコミケでの総数は83年には一人の人間では1日では全てを把握できないほどに膨れ上がっていたのである。
 そのような、大増産期にあたり「やおい少女」たちは、自分の好きな作品、キャラクターについての「やおい」同人誌だけをチェックするという行動が一般化し、元になる作品(現在、「やおい」を含む同人誌界では「ジャンル」と呼ばれる)毎の区分化がはじまり、同時に彼女たちひとりひとりの愛好するものへの感情の先鋭化もはじまったのである。
☆やおい雌伏の時・・・
 80年から「キャプテン翼」による大爆発(84年頃からとされている)までの間、やおいは確実にその総数は増やしていったが、「C・翼」(”キャプつば”と略すらしい)ほどの大爆発は起こらなかった。どちらか言えば「ロリコン」同人誌の陰に隠れていたとでも言えるだろうか。「やおい」にとっては「C・翼」までの充電期間だと考えてもらってもいい。さらにこの期間の間、現在の「やおい」や他の同人誌に深く影響与えた作品があった。俗に「J9シリーズ」と言われる「銀河旋風ブライガー」「銀河烈風バクシンガー」「銀河疾風サスライガー」である。この作品群は重要人物の声優を固定し、キャラは美形、さらにシナリオ的にはブライガーは「必殺仕事人」、バクシンガーは「新撰組」、サスライガーは「80日間世界一周」がベースになっており、突っ込み所が満載の3部作であった。世のオタクや「やおい少女」は多くのオリジナルシナリオやパロディをテレビエピソードの何百倍と描いた例は「J9シリーズ」が初めてであった。
 このような状況の中、「やおい」界はキャプテン翼というビック・バンを迎えるわけだが、今回のレポートはこれくらいにしておきたい。次回は(あるのか〜)キャプテン翼から始まる、「友情・努力・勝利」のジャンプ三大原則に「愛」を加えた「友情・努力・勝利=同性愛」という「やおいの法則」についてや、聖闘士星矢を祖とする「クロスもの」そして「少年ジャンプ」とやおいの関係など現在のやおい事情を詳しく伝えたいと思う。これで「ドラゴン・アスカ」の真相もわかるかもしれない。ではまた今度!

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