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ヨーロッパの没落
byきゃみさん
20世紀とは一体どんな世紀だったのか、と問われると私は「ヨーロッパの没落」の世紀だったと答えたい。
19世紀、ヨーロッパ諸国は優れた産業技術文明を背景に世界中に勢力を伸ばし、他の文明を植民地としていった。まさに19世紀はヨーロッパの世紀であっただろう。そのことは、20世紀初頭においても変わらず、ヨーロッパ人は自分達こそ世界に冠する民族であり、自分達を中心に世界は回り、ヨーロッパの力によって世界の安定と繁栄はあるものと確信していた。そして、その勢力もアジア・アフリカの隅々までいきわたりその膨張は最高度に達していた。
しかし、ヨーロッパはまもなくその膨張も限界に達し、その反動として急激に縮小するはめに会う、それが第一次世界大戦ある。詳細は他のレポートにまかせてるとして、かくして1918年を境にしてヨーロッパの世界的拡大は終焉を迎えるのである。そして、ヨーロッパ諸国は急激に弱体化し、その代わり、大戦への参戦によって主導権を握ったアメリカが急に大きな力を持つに至った。また同時に大戦を革命により途中で脱落したロシアも、世界最初の共産主義国となり、ソビエト連邦を形成して、これが第二次世界大戦には無視できない力をもつ国家に至った。いずれにしても、第一次世界大戦を境にして“ヨーロッパの後退と非ヨーロッパの台頭”という20世紀を特徴づける現象が明確に現れてくるのである。
では、順を追って世界史の重心がヨーロッパから移るさまを見てみよう。最初に第一次世界大戦でヨーロッパがそれまでの世界的優位を失い、その代わりにアメリカが主導権を握る。次に、第二次世界大戦でさらにヨーロッパは後退し、アメリカとソビエトが世界の覇権を獲得する。そして同じ頃、アジア・アフリカ諸国がヨーロッパから自立する。その後、東西冷戦で今度はソビエトが崩壊し、アメリカも後退して、その代わりに日本と東アジア諸国が台頭してきた。世界の中心はこの世紀において地球を一周したが、20世紀はいずれにしても非ヨーロッパ諸国を中心に動いた世紀であるのだ。
ヨーロッパの覇権をついで20世紀をリードしたのは主にアメリカ、そしてソビエトであった。19世紀末から少しずつその国力においてヨーロッパを脅かしていた両国は、第一次世界大戦で後退したヨーロッパに取って代わってしまった。第二次世界大戦後、アメリカ中心とするNATOとソビエトを中心とするワルシャワ条約機構によってヨーロッパが分断されたことが証明するように、世界史の主導権は完全にヨーロッパの手元から非ヨーロッパの超大国に移ったのである。
さらに、冷戦時代というのは、アメリカの自由主義とソビエトの共産主義の対立抗争の時代ととらえられているが、それもイデオロギーの仮面を取り外すなら、むしろ非ヨーロッパ同士の覇権争いにすぎなかったのかもしれない。アメリカとソビエトは共に広大な領土を持った連邦国家であり、一方は海洋国家として、他方は大陸国家として地球上の覇権を争った。そんな中、国民国家の枠にとどまったヨーロッパは歴史の片隅に追いやられ、逆にこれら非ヨーロッパの大国に従属し、その狭間で生きていかなくてはならなくなっていたのである。
しかし、だからと言ってヨーロッパがすべて衰退してしまったというわけでもなかった。実際に戦後世界を二分した自由主義も共産主義も、どれもヨーロッパ近代が生み出した思想に端を発している。日本やアジア・アフリカの諸国が目標としてきた国民国家の組織も、ヨーロッパ近代の国家形態を模範とするものであった。その点では、ヨーロッパ近代文明は今もなお世界を支配しているのである。
さて、アメリカやソビエトそして日本は、むしろヨーロッパ近代文明をヨーロッパを凌ぐほどに成熟させた国家であり、これらの非ヨーロッパ諸国はヨーロッパ近代文明を独自の方法で受容し、逆にこの20世紀において、こぞってヨーロッパに反撃したのである。これらの非ヨーロッパ諸国はいわばヨーロッパ近代文明を略奪することによって、ヨーロッパに逆襲したのである。ヨーロッパ側にしてみれば、自分の作り出した近代文明が異質化されたり純粋化されたりして、非ヨーロッパ諸国から逆流し、それに苦しめられる結果になったのである。このようなことが20世紀になって生じたのは、19世紀にヨーロッパ近代文明があまりにも拡大しすぎたことの反動であった。20世紀は、ヨーロッパ近代文明がなお世界中に普及するとともに、そのため、かえってヨーロッパ自身が後退していった時代なのだと思う。
今日、ヨーロッパはその力を復活させようとして必死である。1963年から試みられてきたヨーロッパ共同体、今でいう“EU”も通貨統合、政治統合に向けて困難の連続だが一歩一歩前に進んでいる。このEUの動きは、ヨーロッパのアイデンティティを再確認する上で重要な動きで、ヨーロッパが再びアメリカや日本に対抗して再び影響力を回復するには、ヨーロッパ諸国の力が結集され、ヨーロッパ諸国が国民国家の枠を超えて統合される以外にないのかもしれない。だが、この統一ヨーロッパの形成は必ずしも明るい将来が約束されているわけではない。ヨーロッパ各国の文化の違いや経済格差など、国民国家としての枠組みの障害を考えればEUの将来には多くの困難が待ち構えているであろう。現実にはヨーロッパは未だに復活の兆しをみせていないのである。
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