2003年平和のための戦争展プレ企画
◆◆◆今また「愛国心教育」? 教育基本法「改正」と「心のノート」◆◆◆
2003.7.14
日時:2003年7月13日(日)
お話:小森陽一さん
東京大学教授(所属:大学院総合文化研究科・教養学部 言語情報科学専攻 )
子どもと教科書全国ネット21代表委員
<著作>
・出来事としての読むこと 東大出版会 1996年
・漱石を読みなおす 筑摩書房 1995年
・緑の物語 新典社 1992年
・構造としての語り 新曜社 1988年
・文体としての物語 筑摩書房 1988年
■「愛国心教育」のたかまり
広島県立併設型中高一貫教育校(2004年度開校予定)の教科書採択を巡り、「新しい歴史教科書をつくる会」が扶桑社の歴史・公民教科書を採択するように全国的な運動を繰り広げている。
2003年3月20日、「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について(答申)」(現在の教育基本法の「改正」が必要だと言う文書)が中央教育審議会(中教審)から文武科学大臣に提出。
答申では、「道徳心」「日本の伝統・文化の尊重」「郷土や国を愛する心」を育てる必要性が強調。結局、国のために死ぬ人間を作る教育を目指す。
在日外国人については記述なし。排除している。
2001年度末より全国の小中学生に「心のノート」1200万部配布。「心のノート」は子どもたちへの「心の爆撃」である。
2003年、道徳の教科書の授業で使用しているかモデル校をチェックしている。
*心のノート:01年度末、全国の小中学生に「心のノート」1200万部配布。2001年度・2002年度予算で約11億。「心のノート」に01年度に約7億3千万円、02年度分3億8千200万円、02年度には、約6千万円を計上。更に03年度には約3億円の「道徳教育の充実」予算を要求。
「文科省初等中等教育局によると「心のノート」は「教科書や道徳の副読本に代わるものではなく、日常生活や全教育活動を通じた道徳教育の充実を図るために用いる教材として作成したもので、児童生徒が自己の生活や体験を振り返る「生活ノート」的な性格や、家庭との「架け橋」としての性格を有し、児童生徒の道徳学習の日常化を目指したもの」であるとしている。
「心のノート」の様々な問題点は、森・前首相の「教育改革国民会議」のナショナリズム高揚思想の流れを具現化した「国定修身教科書」とも言えるもので、「教育のことは各自治体・各学校にお任せ」という文科省の建て前と、修身復活で子どもたちへの思想のすり込みを国という権力が行うという明らかに矛盾した状況となっている。
また、福岡市の小学校の通知表の社会の観点(項目)で、「我が国の歴史や伝統を大切にし国を愛する心情をもつとともに、平和を願う世界の中から日本人としての自覚をもとうとする」とある。どうやって「国を愛する心情」を評価するのか。
■戦後−教育基本法、子どもの権利条約
1947年、教育基本法成立。前年に日本国憲法が発布され、日本国憲法の精神に基づいて教育の目的を定めた。憲法で、国民が教育を受ける権利が明記されている。日本の植民地主義は軍国教育のせい、という意見が影響している。
*教育基本法:1947年3月21日に成立。
前文 われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。
われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。
ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する。
第一条(教育の目的) 教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
(以下略)
「子どもの権利条約」のとおり、教育は子どもの人権に基づいておこなわれるべきである。すべてが個人として、命、自由などが尊重され、幸福を追求する権利がある。文化と国家は切り離すべきである。国と切り離して、個人の個性を伸ばすべきである。
*子どもの権利条約:世界中の子どもが健やかに成長できるようにと、1989年11月に、国際連合の総会で採択。日本も、1994年4月に批准し、同年5月から発行。
■国家が個人を奪う時代に
国旗国歌法成立より、「自分で考えてはいけない、上の言うとおりにする」という人格破壊、すなわち個人から自己決定権を奪っている。
今年3月に提出された中教審の答申に、「涵養(かんよう)」という言葉が多く使われている。
例)「共通の社会的ルールを作り、それを遵守する義務を重んずる意識や態度を涵養する」。
この「涵養」とは洗脳のことである。
公立高校で進学重点校をつくるなど、エリード教育だけに予算配分している。国策人材育成で、国家のいいなりになる「能力」主義教育である。
戦後も天皇性は形を変えて残っていた。たとえば、企業で、社長は天皇で社員は社長、企業に服従しなければならない。
1980年代、英国サッチャー政権、米国レーガン政権、日本中曽根政権成立。いずれも新自由主義(国家が国民の生活ベースを保障しない、貧富の差が出る)、新保守主義(警察国家、監視国家へ)。背景に大企業の多国籍化がある。
国際社会がグローバル化している。その例として、ヨーロッパの国々は外国人移民を低賃金で雇った。彼らを民族主義者が排斥した。
倒産した中小企業の社長の自殺は一年に二十四万人。「心の爆撃」が、学校だけでなく、企業までも成功しているのか。
現米国大統領ジョージ・W・ブッシュはネオコンサバティブ。
そして、日本は北朝鮮を「敵」に作り上げる。
武力攻撃三法(有事三法)を発動させてはならない。次回の総選挙で「No!」をつきつけるべき。
日本政府は米国型忠誠国家を目指している。米国は移民の国であり、星条旗に忠誠を誓わせた。マス・メディアも協力した。
米国を支える三団体は以下のとおりである。
・ネオコン政治家−ラムズフェルド防衛長官、チェイニー副大統領など。レーガン時代米国を軍事大国化させた。
・ユダヤ系財閥とのつながり−ユダヤ人はナチの犠牲者から、中東戦争へ。イスラエルという国は米国が支えている。
・右派キリスト教原理主義−聖書の記述より、イスラエルの正当性を主張。
注)「*」以下の文は、わたしが補足として付け足しました。
◆感想
対イラク戦をなぞらえて、「心のノート」を「心の爆撃」とするなど、驚きつつ納得する。「心のノート」が会場で回覧されたので、実際ざっと読んでみたが、巧妙に「愛国心を持ちましょう」と誘導している。国民に愛国心を持たせたければ「愛国心教育」などせずとも、国民が愛するような国家にすればいいこと。結局「愛国心を持たせる」→「国家のために死ぬ人間を作る」という戦前の体制に、うまくごまかしながら戻ろうとしているのではないか。
<参考Webサイト>
平和のための戦争展
(http://www.jca.ax.apc.org/~sensoten/)
★2003年平和のための戦争展
日時:8月15日(金)〜17日(日)
会場:新宿スペース・ゼロ ギャラリー 展示室
子どもと教科書全国ネット21
(http://www.ne.jp/asahi/kyokasho/net21/)
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