俺が返信切手 <アイオワ番外編>


その1.<学問は永遠に不滅です>
夏学期は別の寮に移って滞在することとなっていた。 
その寮は、夏期学校用に滞在できる幾つかあるうちの一つで、他の寮の学生達も集まって来ていた。 
寮には滞在客用の部屋も幾つかあって、学生に会いに来た親とか、関係者が滞在出来るようになっている。
ある日、夕食を食べて寮に戻るとお年寄りのグループがそのVIP ROOMを独占していて、
俺は “お孫さんに会いに来たか、お偉いさんかな?”
と思っていた。 
丁度その時、クラスの宿題でアメリカ人にアンケートをして持ってくるというのがあったから、
早速そのお年寄りグループに興味があった俺は聞きに行った。 
アンケート何かどうでもよかったんだけどね?
正直、アンケートの内容は全く覚えていないが、何故、彼・彼女等がここにいるかが俺には印象的だった。 
それは彼等が授業を受けたくて、勉強したくて滞在していた事だ。 
彼等曰く
“若い頃に勉強出来なかったから子育ても終わって、本当に自分がやりたい事をしたくて2週間だけど勉強しようと思ったの。” 
もう70や80歳近いお年寄りが2週間だけの集中クラスに通ってる。 
それでいて彼等はものすごく楽しそうだった。 
多分、友達同士で遊びに来てる感覚があったんだとも思うけど。 
日本にも夜学にお年寄りが通うケースがあるけど学び続けるというその姿勢には本当に尊敬するね。 
俺等は学んで使う側、彼等は学んでから改めて知る側かな? 


その2.<いい奴、それとも悪い奴?>
あれは俺がテコンドーの試合でシカゴに行った時だった。 
大体、テコンドーの試合シーズンは秋で、各地域の道場が自分達がホスト(黒服じゃないよ)
となって他道場を招くんだけど、その地域の年間成績が一番いい道場が地域のチャンピョンシップを開くことができる。 
そこで、シカゴの地域チャンピョンシップにアイオワの俺等が”馴染み”として参加する事となった。 
どうも師範どうしが知り合いらしい。 
一泊泊まりで、参加するチームメイトとシカゴへ乗り込んだ俺は、これから起こる不幸も知らずに張り切っていた。
まずは型の試合。 
自分の階級は俺を入れて3人!! 
というのは、日本で違うタイプのテコンドーをやっていた俺は、正式な型のトーナメントには出場できないので、
エキシビションの部で出場せざる得なかったのだ。 
結果は間違えたにも関わらず、一応一位。 
でも、何にもうれしくないのよ、これが!! 
あまり上手な選手がいなかったから、勝って当たり前と正直思った。 
型が終わって、間が開いた頃、俺を取り巻く事態が急変した。 
というのは、チームメイトというか、チームがこれからやる組み手をやらず、帰ると言い出したのだ。 
理由はただ、“やン気ねぇ”だけ。 
しかし、俺は参加費も払ってるし、何よりも組み手がしたかった。 
師範は“やるなら一人でやれ。”
状態だし、仕方がないので俺は一人残って組み手をやることにした。 
ここからだったね、問題は。 
一人試合会場に残ったというか、残された俺は、組み手の時間を一人で待つことになった。 
やっと組み手の時間が来て、いざ、準備と言う時だった、俺は自分がヘッドギアを含む、道具を一切用意していないことに気づいたのだ。 
直前に“それらがないと、出場できないよ。”と言われ、どうにか周りから借りることが出来たが、問題はマウスピースだった。 
これだけはさすがに“又貸し”はきつい、というか絶対ヤダ!! 
仕方なくマウスピースだけ買うことに。 
だが、普通はお湯につけて、自分の歯型を噛んで付けるのだが、
そんなことしてる余裕も無く、素で噛んでの出場。 
日本ではマウスは使わない事が多かったので、正直、違和感ありありでしたな。
すったもんだした挙句、やっと俺の出番だ。 
相手はヒスパニック系のアメリカンで、俺より全然年上。 
でも、体が細い分、技が切れる。 
2Rの1Rが始まって、日本でのスタイルが抜けない俺は、少々その違いに戸惑いつつ、自分からスコアを取りに行くが中々奪えない。 
試合が中盤になった時、痛恨のミスを犯す。 
道具を借りた俺だったが、脛当てを借りられなかったのが災いした。 
相手のボディを蹴りにいったが、膝で避けられ、骨の真芯が的確に膝を当てたのが解るくらいの感触を相手を蹴ったときに感じた。 
暫く動けないくらいの痛みだけど、どうにか立って試合を続行。 
するとどうにか1R耐えた。 
普通はここでセコンドが色々アドバイスするが、俺は一人だし、足は殆ど痛くて動けない。
一人どうにか呼吸を整え、2Rに臨んだ。 
事件はこの後起こった。 
2R中盤、相手に右の回し蹴りを入れた瞬間、右顔側面に後ろ回し蹴りをこれ以上無いタイミングで食らう。 
頬骨にゴツッという感覚が走り、気が付くと転がってた。
多分、右側から落ちたから、空中で半回転してたのだろう。 
痛いながらも、何故か直ぐに立った。 
そんでもってファイティングポーズを取るが試合中止。
その後は頭の中で衝撃だけがグワン、グワン回ってた。 
ある程度して氷で冷やしたけど、やっぱ痛い。 
はじめてのシカゴはこの思い出しかない。
試合が終わってから、そのヒスパニック系の奴が“大丈夫?”とか来て、一緒に飯を食いに行こうと誘ってくれた。 
こっちは頭をやられて食欲はないけどね。
その後、そいつは安いモーテルまで送ってくれて、そこで再戦を約束し別れた。
次の日、片足を引きずり、腫れた顔で路線バスに乗った俺はアイオワを目指した。
車内で色々と振り返りながら見る車窓は綺麗だったけどね。 
でも、不幸は続くもんで、バスが故障。 
3時間か4時間待ちを途中のマックで強いられた。 
お金を使い果たしていた俺は、ハンバーガー一つしか買えず、腹減りまくり。 
仕方ないから水をたらふく飲みましたとさ。 
めでたし、めでたし。

次回は、ワイオミング編へ突入。 学部に入れたうれしさと、
新しい新天地でのワイルドな生活を書くぜ!!
たらちゃん、土下座シリーズ協力ありがとう!!
どういたしまして^^