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 日本学研究室

 

 




 2003年上半期 新刊書ベスト3大賞


  日本学周辺にいた人をとっつかまえて、新刊書上半期ベスト3を無理矢理自白させるという突貫工事な企画がスタート。「新刊書を3冊!」と云われても、これがなかなか難しい。面白い新刊書がないのか!?いやいや、文句をたれる前にみんなの本棚をちらっとのぞいてみましょう。





日下部慶

(1)堀淳一『消えた街道・鉄道を歩く地図の旅』
講談社プラスアルファ新書 (2003年4月)


  近年ブームの感もある「鉄道廃線跡巡り」の創始者というべき人の新刊。齢80の著者が山道を跋渉する。「廃墟マニア」の心をくすぐる一冊。




(2)『マップルマガジン 台湾 2003−04年版』
(片倉佳史 著)昭文社(2003年4月)※実質的に著者だが、表紙には名前は出ていない。

  ガイドブック。しかし普通のガイドブックと違う点は、「台湾に残る日本統治時代の建物」などに関する記事がやたら充実していること。副題は「いつか見たあの風景へ」・・この著者は去年『台灣日治時代遺跡』なる本も台湾で出版している。



(3)『内田百ケン集成7 百鬼園先生言行録』
ちくま文庫 (2003年4月)


 内田百ケン、今この時代にまた再刊。読んでみれば、昭和初期の時代を毒にも薬にもならない無駄話で描いている。『ボクトウキダン』などとは違った角度から、昭和初期のケダルイ空気を感じることができるような気がする。








BJ yu ito a.k.a イトウユウ

(1)成田龍一『近代都市空間の文化経験』岩波書店 (2)原田隆司・寺岡伸悟『ものと人の社会学』世界思想社 (3)野外活動研究会『目からウロコの日常物観察??無用物から転用物まで』農文協

(1)は考現学誕生のコンテクストが描かれ、(2)はアカデミックな方法(社会学)としての考現学を模索。(3)は30年間考現学的フィールドワークを実践している団体の目が眩むようなモノ・ヒトの記録で、これを読む/観ると、歴史学者でも社会学者でもなく「考現学者」になりたいと思わずにいられない。“原・科学”的快楽の誘惑。








土井智義

崎山多美『ゆりてぃく ゆらてぃく』
講談社(2003年


 ホタラ島というシマを舞台に繰り広げられる物語群。いくつものパナス(おしゃべり)が折り重なり、イキガ/イナグ(男/女)の境界、シマという切片化された領域をも、その言葉の漂いにより喚起された浮遊力によって揺るがしていくのである。ちなみに、最近出た高橋敏夫・岡本恵徳編『沖縄文学選』には、この作家の転換点とされる「風水譚」が収録されていが、僕自身はそちらのほうにより魅力を感じている。僕の身体よ、悉く溶け出してしまえ。







川村邦光

(1)田辺繁治『生き方の人類学』
講談社現代新書(2003年3月)


  この潔い書名にまず惹かれよう。人類学ばかりでなく、他の研究領域にも、考え、行うことの根底的な方向性、そして生きることの困難さと豊かさの可能性を教え示している。同様のメッセージはジェイムズ・クリフォード『文化の窮状』(人文書院、2003年)からも受け取れよう。


(2)岩田重則『戦死者霊魂のゆくえ』
吉川弘文館(2003年5月)


  柳田国男の『先祖の話』を中心にすえて、その「祖霊神学説」を様々な角度から力強く批判している。民俗学は柳田批判のなかからあらためて出立しなければならないと思った。

(3)渋谷知美『日本の童貞』
文春新書(2003年4月)

  私は高校生の頃に出会ったカナダ出身のうら若い修道女を思い起こした。本書に記されているように、"童貞さま"と呼んでいたのである。懐かしくも苦くもある、悔恨に満ちた我が"道程"を振り返らせてくれた。








廣岡浄進

(1)解放出版社編『Interview「部落出身」 ?12人の今、そしてここから? 』
解放出版社(2003年3月)


  部落は、そして部落差別は変わったのか、変わっていないのか?「部落出身」20〜30代を中心に12人の語りが紡がれる。


(2)角岡伸彦『ホルモン奉行』
解放出版社(2003年6月)


  『被差別部落の青春』を書いたルポライターが、部落のソウルフード「ホルモン」の世界へ。読めばきっと食べたくなる。


(3)『金英達著作集』1〜3巻(伊地知紀子、飛田雄一、金慶海編)
明石書店(2002年12月〜2003年2月)


   2000年、不慮にしてこの世を去った「在野」の在日朝鮮人史研究者の著作集。彼を喪失したことの大きさを感じる。


(4)金仲燮著(高正子訳・姜東湖監修)『衡平運動 ??朝鮮の被差別民・白丁その歴史とたたかい?? 』 部落解放・人権研究所(発売:解放出版社)2003年4月

  朝鮮の被差別民・白丁に対する差別撤廃を求め衡平社が創立されて80周年白丁の歴史とその解放運動である衡平社の歩みを平易に概観。







花森重行

(1)渡辺公三『司法的同一性の誕生?市民社会における個体識別と登録』
言叢社(2003年2月)

近代世界における管理の技術を暴く、はず。未読。


(2)G.スピヴァク『ポストコロニアル理性批判?消え去りゆく現在の歴史のために』
月曜社(2003年4月)

ポスコロ研究には必読?これまた未読。


(3)『野坂昭如リターンズ』2、3
国書刊行会(2003年1月〜3月)


  語り、記憶という問題を考えるとき、使いやすい理論ではなく、模索の中で描かれたテクストそのものに向き合うという道が、迂遠に見えながらも実は近道なのではないか。






芝原三裕

(1)舞城王太郎『阿修羅ガール』
新潮社(2003年1月)


  この小説は単行本で買うべき。フォントでかいよ!なんだかんだで上半期いちばんのヒット(個人的には)。


(2)佐藤和歌子『間取りの手帖』
リトルモア(2003年4月)
 

「ドアが10個ある1DK」「部屋のど真ん中にバストイレ」「ルーフバルコニー100帖」を間取り図で笑い飛ばす。机の横においとくと、ふとした瞬間に手にとってしまう魔力。


(3)石母田正『歴史と民族の発見』
平凡社ライブラリー(2003年2月)

 時代的限界が露呈しながらも、狂気じみた想像力には可能性を感じる。「背負っちゃったもんが大きいと身を滅ぼす」ということを示した偉大なる好例。







野田恵

ピート・ジョーンズ原案/小島由記子編訳『夏休みのレモネード』
ソニー・マガジンズ(2003年5月


  甘ずっぱいレモネード。「探求」に基づく「信仰」と、生きること。“イエスさまはただのシンボルなんだ。・・・誰の名前で祈っても同じなんだ。”それは、僕の人生の始まりの夏だった。







真鍋昌賢

(1)中村秀之『映像/言説の文化社会学』
岩波書店(2003年3月)


  映画における映像/言説の複雑な絡み合いをどのようにわれわれは語りうるのか、「フィルム・ノワール」という記号を歴史化するなかで、著者はそれに答えようとする。ポピュラーカルチャーの文化社会学を志す院生・学生にはぜひとも読んでもらいたいです。


(2)篠原徹編『現代民俗誌の地平(1)越境』
朝倉書店(2003年6月)


  朝倉書店の前シリーズ(『現在民俗学の視点』)では、民俗学の思想と方法論の模索に焦点がおかれた。その一方で今回のシリーズは、フィールド・ワークを全面に押し出した記述が焦点となっている。対象と自己の関わり合いがリアリティとともに記述されうるかどうかが、今回のシリーズでは求められている。


(3)桜井厚編『ライフストーリーとジェンダー』
せりか書房(2003年7月)


  民俗学と社会学をまたぐテーマとしてのジェンダーを、ライフストーリーという方法から緻密に読み解こうとする論集。フィールドワークや聞き取り調査の入門書を探している人におすすめ。





表智之

森達也『世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい』
晶文社(2003年4月)

  オウム事件以後の日本の市民社会は異質な存在への恐怖から思考を停止させ、他者を徹底的にあぶり出し排除する社会と成り果てた。それは9・11以後の北米の姿とぴったり重なる。オウムを包囲する市民社会の姿を撮り続けてきた著者が、憎悪に満ちた社会の中の一縷の希望として、「他者への想像力の回復」を説く。




   
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