エリは幸せだった。
基地で知り合った前夫と別れて、アメリカでシングルマザーで苦労して娘を育てていたけれど、働き者の今の夫と再婚して男の子が生まれた。その後、夫が欲しがっていた女の子も漸く授かった。得意の裁縫を生かして小物を作る、ささやかなビジネスも軌道に乗ってきた。
ただ一つの不満は、末娘の誕生後、夫がエリの躰に触れなくなったことだった。だが、それも産後の躰を労ってのこと、と解釈してきた。
「子育てに疲れたら、僕が子供たちを見ているから、夜遊びして発散してきたらいいよ」という優しい夫と、友達もたくさんできた今の暮らしに満足していた。
ある日、外出から帰ったエリは、昼間から薄暗くした部屋の明かりをつけて、仰天した。
夫が男とベッドにいる!!
相手は、夫が「親友」と呼び、しょっちゅう家にも遊びに来ていた男性だった。
怒って問いつめるエリに、夫は、こう告白した。
「自分はゲイで、男が好きだ」
「君と結婚したのは、娘が欲しかったからだ」
「家族は愛しているが、女性とはもうセックスする気にはなれない」
今まで、無意識の中で感じていた漠然とした不安の原因を理解した。
.......夫を愛している
.......でも、30代の女盛りをこのまま埋もれさせることなんてできない
.......離婚して、乳飲み子もいる子供3人を女手一つで育てる自信はない
エリは悩んだ。
そして、諍いは相手の男性まで巻き込んで大きくなっていった。
そうこうするうちに、突然、夫の転勤が決まり、エリは涙ながらに夫について街を出ていった。
1年後、エリは子供たちを連れて舞い戻ってきた。
夫の相手が転勤先まで追っかけてきて、堪忍袋の緒が切れてしまったと言う。
「それに、私はこの街が好きなんだもの」
事情を知っている街の人たちは、エリを暖かく迎えた。
今、エリはレストランで働いて子供を育てながら、楽しく暮らしている。
「今度は、ゲイじゃないのを見極めて、結婚するわ」
エリは明るく言い放つ。