さて、これを論じる必要性をまず書きましょう。
「浅野さんは切腹なのに、なんで吉良は無罪なんだ。」
と、「ケンカ両成敗説」があるわけです。
この説が引き合いに出す殿中抜刀があるんです。
寛永4年(1627)
「楢村さん」って人が「鈴木さんと木造さん」に殿中抜刀、切り付け。
この際、加害者楢村さんは当然切腹だけど、
被害者の、しかも抜刀してない「木造さんは追放の刑」になっているんです。
で、ケンカ両成敗の例があるぞ、と。
吉良さんも同じだろ、と。
しかし、ことはそう簡単ではないようです。
以下、その他の事例を見ながら検討しましょう。
| 時 | 加害者 | 加害者の処遇 | 被害者 | 被害者の処遇 |
| 1627 | 楢村さん | →切腹 | 鈴木さん 木造さん |
→その時の傷で死亡 →追放の刑 |
| 1628 | 豊島さん | →切腹 | 井上さん | →その場で死亡 |
| 1670 | 水野さん | →切腹 | 大橋さん | →無罪 |
| 1684 | 稲葉さん | →その場で死亡 | 堀田さん | →その場で死亡 |
| 1701 | 浅野さん | →切腹 | 吉良さん | →無罪 |
以上から、まず言えることは加害者は、その場で死んだ人以外は
みんな切腹です。まぁ、浅野さんが切腹なのは当然の様です。
浅野さんの切腹につき、屋内でなくて庭なのは、
ただの切腹より重い、とする人もいるようですが、これは
大目付の手違いと見ていいようです。
後日、大目付さんは免職ですから。(「@史実と思われる記述の寄せ集め」参照)
では被害者は?
三通りですね。その傷で死ぬか、無罪か、追放。
吉良さんの場合は大橋さん同様、無罪なわけです。
じゃ、木造さんが何で追放か、大橋さんはなんで無罪か検討しましょう。
@木造さんの場合
どうも、武士である以上は「逃げるな」というのがあるようです。
じゃ、どうすんの?
まぁ、「抜かずに捕まえろ」でしょうねぇ。
木造さんは「逃げたか?」ははっきり記録にないそうです。
ただ、鈴木さんが斬られているのに何もしなかった(できなかった)
ということで、追放、と見るのはどうでしょう?
A大橋さんの場合
大橋さんは何をする間も無く、抜刀した水野さんが他の人に取り押さえられたそうです。
大橋さんは、何も罪がないから無罪、ということだそうです。
ここでのポイントは、大橋さんが捕らえたワケではないのに「無罪」ってことですね。
B吉良さんの場合
吉良さんは、後ろから斬られ、振り向きざまに二度斬られ、倒れて失神してます。
で、吉良さんと話してた梶川さんが浅野さんを取り押さえてます。
さて、@とAのどちらにあてはめましょう?
まぁ・・・Aかな?さいとー的には。
吉良さんは60過ぎのお爺さんで、浅野さんは30代の武士。
大刀は殿中に持って入れないんで、短い脇差で斬られてるんだけどさ。
脇差は重みが足りないから「斬れ」にくいそうです。「殴る」に近かったと思われるわけです。
背中切られて、頭二回も殴られりゃ・・・気絶するわな。
まぁ、脇差で刃傷なら、「刺す」のが基本。
そんなことも知らねーの?で、浅野さんがバカにされたとかしないとか。
まぁ、この点については、尾藤教授は、吉良は逃げたか?と検討されてます。
でも、事実は分りません。ってゆーか唯一の証人梶原さんは
「斬られた、倒れた、俺が押さえた」と書いてるんで。逃げたとは思えないんです。
その間5秒ぐらい?
吉良さんに「抜かずに捕まえろ」ってのは、チト・・・酷じゃないかな?
と、私は認定しました。
みなさんはいかがですか?
(注:吉良さん失神というのは、尾藤教授の記述からは伺えません。
ただ、児玉教授は、参考文献が不明ですが、
「吉良さんは気を失っていたので2人が抱えて医者の間へ行った。
途中で気がついて、「医者を頼む」と大声でわめいた。」
という記述をされているので、吉良さんは気を失っていたとしている様です。
ちなみに児玉教授は「吉良さんの無罪は当然」とだけされています。)
さて、やれば切腹確実の「殿中抜刀」。
なーんでみんなそんなにやるの?
答えは簡単、「ほかにチャンスがないから」です。
大名はガードが固い訳ですね。
稲葉さんや豊島さんは用意周到だったそうです。
浅野さんも「この間中の恨み・・・」と言っているので、
付け狙っていたと考えるのが妥当のようです。
・・・はい、完璧にストーカーですね・・・まったく・・・
劇なんか見てると、バカにされた浅野さんが憤激して・・・
なんてありますね。
あれは後に儒学者(浅野びいき)の室さんが書いたウソらしいです。
なんでウソかって?
その場にいたのは梶川さんと両当事者。
その3人はそんなコト言ってないから・・・
で、やっぱり出てくるのが「浅野さん、それで殺せなかったのかよ」です。
また、殺せもしなかったんだから、「乱心」にして罪を軽くしよう。
という同情論もあったそうです。
いずれにしろ、ソコでキッチリ殺っときゃぁ・・・100人近くも死なずにすんだのに・・・