1.2 二重振り子のカオス
1.2a 非減衰二重振り子
ここで、求められた ( 3 ) , ( 4 ) 式を1階連立微分方程式に直すため、
とおくと、( 3 ) , ( 4 ) 式は次式で表される。
( 5 ),( 6 ) 式から、Φ1 = X1' and Φ2 = X2' と置くと以下のような1階連立微分方程式を得る。
1.2b 減衰二重振り子
1.3 Duffing系のカオス
ここでは、次のような正弦波励振によって駆動される減衰のある非線形強制振動系を考える。
X" + kX' + X^3 = Acost
この方程式は、正弦波励振によって駆動される構造体が大きな弾性変形を生じる場合に相当する。ここでは系が Uedaの示した カオス応答に相当するように減衰と駆動力の大きさと初期条件を決め、数値解析を行うとギザギザな時系列が得られる。この時系 列は不規則な間隔で特定のパターンのいくつかが繰り返し現れているので回帰的である事は明らかであるが、決して厳密な繰り返 しではなく運動は非周期的である。
その理由は、二つの全く同じ系がほぼ同一の初期条件で運動を開始した時、二つの状態の差が指数関数的に増大するからである。 方程式が結論的であるので、初期条件が全く同一であれば、すべての時間にわたって二つの運動は一致する事が保証されている。 しかし、実際の物理系では、初期条件に幾分かの不確定がある事は避けられないので、カオス状態では、名目上は同一の運動が実際 には異なるふるまいをするという事は避けられない。
この初期条件は、立ち上がりの過渡状態がもっとも短くなるように選んである。すなわち、あらかじめ解を計算し、スタート後長 時間経過後に通過する領域内にこの初期条件をおいてある。二つの運動は、始めのうちはほぼ一致しているが、しばらくすると急速 に無相関になる。二つの運動の初期条件を近づければ、その分だけ分離を生じない時間が長くなるだけである。
X(t),X'(t)をプロットしてみると、近接した初期条件から出発した二つの運動が位相射影での軌跡に沿って次第に分離していく様 子がはっきりと見られる。もちろん、同一の初期条件から出発しても二つの成分の近似がわずかでも異なれば軌道は分離する。これら は同一の基礎パターンであるカオスアトラクタの大概に無相関な軌道なのである。この基礎パターンを見つけるためにはPoincare断面 ( ポアンカレマップ ) を用いるのが便利である。
周期 2π の整数倍の時刻ごとにストロボ照明して観察される軌道の点 ( 以下はストロボ点と呼ぶ ) をプロットすると、( X,X')平 面のポアンカレ断面で表示した Uedaのカオスアトラクタが作られる。原理的には数周期先の点の正確な位置を予測する事は可能である が、近接している軌道が互いに指数関数的に分離するので予測する事は実際的ではない。
カオスのポアンカレ断面の層状の構造は、その状況やグラフの分解能によって見かけが単純であったりする。Uedaのカオスアトラクタ を高分解能で表示したものから、形状が複雑である事が伺えるし、フラクタル特性もはっきりと認められる。この複雑な構造は、定常カ オス軌道の集合の単純な引き伸ばしや折り畳みによって生じたものである。きちんと決まった定常状態に落ち着くのはエネルギー散逸が 存在する事と、それに伴う位相空間でのアンサンブル体積の収縮によるものであり、アトラクタと呼ぶにふさわしい。
1.4 リアプノフ指数の計算
非線形振動系のカオス応答では、初期値の微少差が時間が経つにつれて指数的に増加し、結局異なる応答になってしまう。このことを カオスの初期値に対する鋭敏な依存性という。この初期値依存性の尺度になるのがリアプノフ指数 ( Lyapunov Exponents )である。 サンプリングタイムが dt で、初期値の差がεで、それぞれの変位時系列が、Xi,Xjである場合、それぞれの時刻に対する変位の差分は 次のようになる。
d0 = | Xi0 - Xj0 | = ε これよりリアプノフ指数はd1 = | Xi1 - Xj1 |
d2 = | Xi2 - Xj2 |
・
・
・
dn = | Xin - Xjn |
dn = εeλn のように定義されるので、結局リアプノフ指数λは次式となる。
λ = ln(dn/ε)/n
* 数値積分を行う際の注意事項
(1) データの数は2048個にするがポアンカレマップの場合にはそれ以上のデータが必要なので、入力の300周期分以上まで計算する事。(2) サンプリングタイムは ( 数値積分の時間刻み ) は応答の時系列が約20secの時系列になるように決める事。
(3) ポアンカレマップは入力の位相が0°から360°を8等分して求める事。そのためには、サンプリングタイムに工夫が必要なので、注意して決める事。