431. 非線型振動 ( Nonlinear Vibration ) の数値シミュレーション
Written by Naoyuki Kajino
1.1 線形非減衰単振り子の自由振動
まず、図1に示された線形非減衰自由振動系を考えよう。この系の剛性 ( stiffness ) を4π2に選べば、振動周期は1となる。この時、運動方程式は次のようになる。
X”+4π2X=0 ( 1 )
この運動方程式の解は正弦波で、振幅と位相は X と X’ の初期値で決まる。一定の正弦振動が永久に持続し、過渡現象も減衰も無い。周期はこの例では1であり、初期条件や振動振幅や時刻によらず一定である。
この線形振動系は、たとえば単振り子のような基本的な物理系の自由振動の近似モデルである。このモデルは2つの重要な点で現実とは異なる。
@ 振り子の場合の空気抵抗のような散逸力による減衰を無視している事。
A 現実のすべての系はある程度の非線型を含んでおり、これが系の振る舞いに大きく影響する事。
よって、振り子の運動を線形近似できるのは、振動の振れ角が小さいときだけである。
1.2 非線形非減衰単振り子の自由振動
ここでは、次式で表現される非線型非減衰単振り子を考える。
X”+4π2sinX=0 ( 2 )
この非線型非減衰自由振動系の運動方程式は、大振幅で動作する単振り子の表す厳密な方程式である。振り子の糸の垂直方向の運動にニュートンの運動方程式を適用し、ラグランジュ法によって導かれる。重力を考慮して係数が4π2に等しくなるように振り子の長さを選んである。したがって、小振幅の振動についてはsinXをXで近似して線形化する事ができ、そうすると前節で述べた周期1の線形振動系に帰着する。
この非線型微分方程式の数値解析では、初期条件 ( X,X’) を決めれば、線形非減衰振動に対応する定常非減衰振動が得られる。任意の初期条件からの運動は過渡状態や減衰を示さず、一定の振幅・周期を持った定常波形となる。しかし、波形は正弦波ではなくフーリエ変換すると、基本波と奇数次高周波の和からなる事が分かる。
ここまでに述べた二つの非減衰振動は、現実の自由振動系とは異なるものである。ほんのわずかでも散逸 ( 損失 ) があれば減衰波形を生じ、位相空間の式は内向きのらせん ( inward spiral ) となる。位相軌道の位相的性質が極めてわずかの減衰によって変えられてしまうという事は、その非減衰系が構造的に不安定 ( structurally unstable ) であるという事である。
1.3 非減衰二重振り子
二つの質点によって構成される二重振り子 ( Double Pendulum ) がある。これらは重力と逆向きの方向をy軸とするx−y平面上で回転運動するものとする。質点1は質量m1で、原点Oに固定された回転軸O1から長さL1の位置でつるされている。もう1つの質点2は質量m2で、質点1に固定された回転軸O1から長さL2の糸でつるされている。
この系でのラグランジュの運動方程式は次式になる。
(m1+m2)L12X1"+(m1+m2)gL1sinX1+m2L1L2{ X2"cos(X1-X2)-X2'2sin(X1-X2) } = 0 ( 3 )
m2L12X2"+m2gL2sinX2+m2L1L2{ X1"cos(X1-X2)-X1'2sin(X1-X2) } = 0 ( 4 )
ここで、求められた ( 3 ) , ( 4 ) 式を1階連立微分方程式に直すため、
C = cos(X1-X2) , S = sin(X1-X2) , m1,2 = m1 + m2
とおくと、( 3 ) , ( 4 ) 式は次式で表される。
m1,2L12X1" + m1,2gL1sinX1 + m2L1L2{ X2"C - X2'2S ) } = 0 ( 5 )
m2L12X2"+m2gL2sinX2+m2L1L2{ X1"C - X1'2S ) } = 0 ( 6 )
( 5 ),( 6 ) 式から、Φ1 = X1' and Φ2 = X2' と置くと以下のような1階連立微分方程式を得る。
Φ1' = - { m2L1L2Sm2L22Φ22 - (- m22L12L22CS)
Φ12 - m1,2gL1sinX1L2 + m2L1L2Cm2gL2sinX2 } / { m1,2L12m2L22
- m22L12C2 }
( 7 )
Φ2' = { (-m22L12L22CS)Φ12 - m1,2L12m2L1L2SΦ12 - m1,2gL1sinX1m2L1L2C + m1,2L12m2gL2sinX2 } / { m22L12L22C2 - m1,2L12m2L22 }
( 8 )
1.4 減衰二重振り子
それぞれの角速度に比例する抵抗などの減衰がある場合は、X1'、 X2' それぞれに対して減衰係数をλ1、λ2 とすると、X1、X2 に関するラグランジュの運動方程式は以下のようになる。
(m1+m2)L12X1"+(m1+m2)gL1sinX1+m2L1L2{ X2"cos(X1-X2)-X2'2sin(X1-X2) } = - λ1X1' ( 9 )
m2L12X2"+m2gL2sinX2+m2L1L2{ X1"cos(X1-X2)-X1'2sin(X1-X2) } = - λ2X2' ( 10 )
Φ1' = - { m2L1L2Sm2L22Φ22 - (- m22L12L22CS)
Φ12 - m1,2gL1sinX1L2 + m2L1L2Cm2gL2sinX2 - m2L12λ1Φ1 + m2L1L2Cλ2Φ2 } / { m1,2L12m2L22
- m22L12C2 }
( 11 )
Φ2' = { (-m22L12L22CS)Φ12 - m1,2L12m2L1L2SΦ12 - m1,2gL1sinX1m2L1L2C + m1,2L12m2gL2sinX2 - m2L1L2Cλ2Φ1 + m2L12λ1Φ2 } / { m22L12L22C2 - m1,2L12m2L22 }
( 12 )
< Back