金井ちゃん放浪記
第三章:岩井にてその2
「白畑ー帰り車乗っけてってよ。」
梅が言った。
「あー、いいけど車五人までしか乗れないよ」
「一人乗れないじゃん」
佐藤が言った。
「どうやって決めるか。」
金井ちゃんはまた考えていた。
(このままだとここに来た原因を作ったボクが電車で帰れっていわれそうだ。どうにかしなくちゃ)
「千葉ちゃんがこんなところに来たから僕たちが追いかけてきたんだからサー千葉ちゃんが電車で帰ってもらった方がいいんじゃないのー。それが当然だよー」
金井ちゃんが先手を打った。
「でも千葉一人で帰らせたらまたどっか行っちゃうかもしれないからなー。」
梅が言った。
白畑が良い案を思いついていった。
「そうだ今日演奏会廻りあるから車で直接行こうと思ってたんだ。佐藤今日演奏会廻りあるのだれ?」
「ちょっと待って、えっとこの六人だと俺、梅、白畑、千葉。」
「じゃあこの四人だとしてあと金子と金井のどっちか。」
「じゃあ金井ちゃんと金子でじゃんけんで決めれば。」
金子は嬉しそうにじゃんけんしようとしてきた。
案の定じゃんけんに弱そうな金井ちゃんはじゃんけんの強そうな金子に負けてしまった。
金井ちゃんは考えていた。
(ちっ金子めー、何でボクが電車で帰んなきゃいけないんだよ。どうすれば・・・そうだ!)
「ねー金子ボクのメガネ壊したんだから電車で帰ってよー。」
「何でキミはじゃんけんで負けてからそんなこと言うんだよ。」
金子が言った。
「ていうか、金井ちゃん千葉ちゃんのピカチュウ壊したんだからキミも人のこと言えないじゃん」
佐藤が突っ込んだ。
「どっちでもいいから午後までに決めといて。」
白畑が本当にどっちでも良さそうにいった。どちらかというと金子の方が重いのでいやだったが、どっちが乗っても良かった。
「えっ午後って午後まで帰んないの?」
梅が聞いた。
「うん、俺、浜で焼いて午後帰る。」
「えーもう帰ろうよー。」
梅はもう帰りたそうだ。
ママさんが言った。
「あーらウメちゃん、せっかく来たんだから真っ黒に焼いて帰りなさい。」
「あっ、はい真っ黒に焼いて帰ります。」
浜は日差しが強く絶好の焼き日和であった。
金井ちゃんはまだ考えていた。
(ボクは絶対車で帰るんだ。せっかくこんなところまで来てやったのに・・・そうだ!体調崩せば車に乗っけてもらえる。)
金井ちゃんは色白で紫外線に敏感なため、すぐに体が真っ赤になってしまう。それを利用してやけどで体調が悪くなったと言うつもりであった。金井ちゃんはよくこの方法でずる休みをしていた。
だから金井ちゃんはひたすら焼こうとしていた。
「あれ?」
サングラスをした白畑が言った。
「あそこにいるのキヨさんじゃん」
「えっまさかこんなところにいるはずないよー。」
金井ちゃんはそういいながらそっちを見た。
海辺に織田裕二風の男が歩いている。やはりキヨさんであった。
キヨさんがこっちに気づいたらしくやってきた。
「キヨさんじゃないですかー」
「よーなんでお前等こんなところにいるの?」
「いやちょっといろいろありまして・・・キヨさんこそどうしたんですか?」
「いや、おととし新歓合宿でメガネ海に落としただろ、暇なときよく探しに来てるんだよ。シシシ」
キヨさんはおととしの新歓合宿で海に入っているときにメガネを無くしてしまったのだ。
金井ちゃんは思わず吹き出してしまった。
(そんなの見つかるわけないよー、だってボクはあのとき海でメガネ見つけたけど誰のだか分かんないからそのまま捨てちゃったんだよねー。)
「あー、かーなーいー。なに笑ってんだ。」
「あっ、すいませんキヨさんのメガネ探してる姿想像してたら笑っちゃって。」
「それが失礼だっちゅーの」
梅がキヨさんのマネをして言った。
「キヨさんいつ帰るんですかー」
「いや今日演奏会廻りだからもうそろそろ帰ろーかなーとおもってたんだ。」
「あっキヨさん演奏会ですか。じゃあ一緒に車で行きませんか。」
「えっ、いいのー悪いねーシシシ」
「エーそんなのひどいよー、ボクのこと乗せてくれるって言ったじゃんかー。」
「仕方ないじゃん、キヨさんも演奏会廻りなんだし。」
「イヤー、悪いねー金井ーシシシ。じゃあみんな仲良く車の中でモンコレでもやりながら帰ろうか、ぬわんちゃって。(なんちゃって)シシシ」
金井ちゃんは焦った。このままだと金子と二人っきりで電車に乗ることになってしまう。
「だいたい演奏会ある人だけ車に乗るってのおかしいよー。」
金井ちゃんが悪あがきをしたがみんな取り合おうとしなかった。
金子はもともと電車の旅(一人旅)が好きな人間だったので別に電車でもかまわない感じだった。
「もういいよー。」
そういって金井ちゃんはあきらめたように言った。
「あれ金井ちゃんどこ行くの?」
「ちょっとトイレ」
(こうなったら最後の手段だ。みんな道連れにしてやる。)
金子と二人で帰るのがあまりにもいやだったので、みんなで電車で帰ろうと考えたのだ。要するに白畑の車を故障させみんな電車で帰らざるをえなくさせようと思ったのだ。
駐車場に行くと白畑のものと思われるスターレットが置いてあった。誰もいないのを確認して金井ちゃんはスターレットに近づいた。
(どうすれば車壊せるのかなー。とりあえずパンクさせてあとサイドミラーのガラスを割っておこうかな。)とりあえず、タイヤをパンクさせようと思ったのだが車のタイヤはそう簡単にはパンクしないようにできている。
「ちっ、長野にいた頃ははむかう奴の自転車をいつもパンクさせてたのに。車は自転車と違ってそう簡単にパンクしないね。」
とりあえずタイヤに何本かくぎを打ち込んでおいたがすぐにパンクはしないだろう。しかし走ってるうちにパンクするかもしれない。
じゃ、サイドミラーでも割っておくか。そう思ったとき人が来る気配を感じた。
「あれっ、金井ちゃんどうしたの?」
白畑だ。車に何か荷物を取りに来たようだ。
「えっ、この車六人くらい乗れそうだよー」
とっさに金井ちゃんがごまかした。
「無理だって。トランクなら乗せてやってもいいよ。」
白畑は金井ちゃんの策略には気づかなかったようだ。が、白畑が来てしまったのでもう車に細工はできない。
(まあいいや、帰っているうちにタイヤがパンクしちゃうだろうし。)
ペンションに帰るとみんなすでに帰り支度を済ませていた。
「かーなーいー、どこ行ってたんだっちゅーの。はやく支度しろ。」
「えー、そんなこと言ったって・・・」
「いいから早く支度しろっちゅーの!」
キヨさんが金井ちゃんを叱った。
(くそー、途中でパンクして事故っちゃえばいいんだ。)
帰り際ママさんが見送りしてくれた。
「梅ちゃんーまた夏ねー」
「あっはい、お世話になりました。」