それからしばらくして金井ちゃんと金子は釈放された。
結局、岩井から国分寺までの料金を払って説教されただけですんだ。
「もう最悪だよー。今日すごい疲れたー」
金井ちゃんは疲労していた。ストレスがたまってまた髪の毛に悪影響を与えそうだ。
「君ねー金井ちゃん。何で俺のことまで道連れにするんだよ。」
金子が言った。
実際、金井ちゃんが金子のキセルをチクらなければ金子はばれずにすんでいたのだ。
「そんなこと言ったって一人だけ行こうとするんだもん。ずるいよー。」
「そんなの捕まる方が悪いんだろ。キミねー、友を売ったんだよ。」
「別に友だと思ってないもん。」
金子が怒ってというかあきれて何か言おうとしたとき金子がポケットに手を突っ込んだ。
どうやら電話がかかってきたらしい。
「(高い声で丁寧に)はい、もしもし金子です。・・・(低い声で嫌々と)なんだおさとうか。」
佐藤から電話らしい。
(パンクして帰ってこれなくなったのかなー)
金井ちゃんは心の奥で笑っていた。
「え、今ー?今ねー国分寺の駅前。うんバカナイと一緒。なにー?演奏会終わって今国分寺着いたー?ほんじゃ待ってるわー。ほんじゃーねー」
金子と佐藤の電話によれば演奏会が終わって国分寺に着いたらしい。
(パンクしなかったのかー。つまんないのー。)
金井ちゃんは思った。
しばらくすると佐藤と梅が改札から出てきた。白畑とキヨさんは帰ったのだろうが千葉がいない。
「あれー、千葉ちゃんは?」
「えー、演奏会が終わってみんな集まった時はいたんだけど、いつの間にかいなくなっちゃった。」
いつものことだ。また失踪したわけではなさそうだ。
「金子達さー、電車でいつ頃国分寺に着いたの?」
佐藤が聞いてきた。
「んー、着いたのはずいぶん前なんだけどねー、金井ちゃんのせいで
キセルが見つかってずっと怒られてたんだよ。」
金子がまだちょっと怒っていった。
「ボクのせいじゃないよ。」
「しかも、俺のキセルも駅員にばらしてるし。」
「だって仕方ないじゃん。」
また金子と金井ちゃんで言い争いになっていたところ、佐藤が口を挟んだ。
「ところでサー、飯くったー?」
「んー、まだだよ」
「じゃ飯行こうよ。」
「どこ行くか」
「んー、いいよパーロンで」
金子がいったが梅は嫌がっているようだ。
「金井ちゃん、どこ行きたい?」
梅が聞いてきた。
「どこでもいいよ」
「スタ丼ー」
佐藤が言った。
「えースタ丼はやめようよー」
金井ちゃんが言った。度重なる疲労で胃も弱っていた。
「どこでもいいって言ったじゃん」
「別にどこでもいいけどー、でもスタ丼はやめようよー」
しかし、金子も梅も同意したようだ。
「はい、じゃあスタ丼ねー、金井ちゃんスタ丼ー」
梅がスタ丼に向かおうとした。
「エーちょっとやめようよー」
「はい、行くよー」
みんなスタ丼の方に歩き始めている。
(こいつら何でボクの意見を聞かないんだ。)
金井ちゃんは口には出さなかったがキレていた。
「ボク他のところ行く」
「金井ちゃんどこ行くのー?」
金井ちゃんは梅の言葉を無視して、他のところへと歩いていった。
歩きながら金井ちゃんは思っていた。
(クッソーもうジョイント委員の仕事やんないぞ。レセ会場と合宿先全部キャンセルしてやる。)
歩きながらどこへ行こうか考えていた。家に帰っても弟がいるので落ち着かない。
金井ちゃんは岩井からの切符代を払ったのであまりお金がなかった。
ふと見回すとランプ亭が目に映った。そうだ卵券持ってたっけ、ランプ亭に行こう。
「いらっしゃいませー。ご注文お決まりでしたらどうぞー」
「並みとコーラ」
コーラをコップにつぎながら金井ちゃんは気を静めようとしていた。
急にとなりに座ってきた男が金井ちゃんを小突いた。
金井ちゃんはムカッとして隣の男を見た。
隣の男は高田であった。
「金井ちゃん、なに一人でランプ亭に来てんだよ。」
高田が笑いながら言った。ランプ亭の外を通っている時に偶然金井ちゃんが見えたらしい。
金井ちゃんは黙ってコップのコーラを飲み干した。そしてまたコーラをコップにつぐ。
「しかもコーラなんかたのんでるし。だからセカンドなんだよー」
高田が金井ちゃんを小突きながら言った。
「うるさい、やめろ。」
金井ちゃんが怒っているので高田が少し驚いた。
「金井ちゃん?怒ってない?なんかあったの。」
「うん、ちょっと嫌なことがあって飲まなきゃやってられない感じ。」
「ふーん、愚痴なら聞くよ。」
続く